平和な朝
*
次の日――
小鳥のさえずりが聞こえる。
まるで、昨日のことは嘘のようだ。
「あれ、お兄ちゃん…。今日は早いね!」
あかりは、ちょうど朝ごはんを作っているようだ。
トントンと、軽快な音楽を奏でるかのような包丁さばき――
――……。
「? どうかしたのぉー?」
「あ、いや…。何でもない!」
俺はあかりに心配をかけないように、ヘーゼンを装う。
包丁…。昨日のことが、フラッシュバックする。
*
「お兄ちゃん!ごはん出来たよ!」
「お、旨そうだな」
俺は、丁寧にジャムまで塗られた食パンを食べる。
――時計は、7時10分を示す。
「じゃあ、行ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい!…早く帰ってきてね…?」
玄関まで、送りにきたあかりの顔は真っ赤だ。
「…っ! なんか、新婚さんみた――」
あかりが何かを言いかけたところで、奴が来た。
「早戸クン、おはよう。こんな早い時間に迷惑だった…?」
…白、崎だ…。
「…いや…別に」
俺たちの雰囲気を察してか、あかりは家の奥に戻っていった。
*
「(おにいちゃんの馬鹿…っ)」
――やっぱり、浮気してるよ…。
――彼女いたんだ。
*
「…早戸クン?」
上目づかいで見上げてくる。
「あ、いや…何でもないんだ。行こうか…」
どう接していいのか分からない。
でも…、
何だろう。なんか、普通だ…。
昨日みたいな恐怖がない…。
「うん。…えへへ」
睫毛長いな…。
*
「よぉー!おっはよう、さく――?!」
「ん?、前田…どうかしたのか?」
前田が、俺と白崎を交互に見ている。
「おま、白崎さんと何で一緒に!?」
「(? 何で、お前知ってんだ?)」
「(なんでって、おいおい…。学年一の美少女だぞ?!)」
「? あ、あの…」
「は、はい!」
前田…声が裏返ってるぞ…。
「実は、私…早戸クンとお付き合いさせて貰ってるんです…!」
「な、何だって!!!!!?」
このへんは、白崎さんのデれですな。