帰り道
*
勢いよく、挙手したのは 長篠 杏 だった。
「はいっはーっい!」
凄い笑顔で、先生を圧倒していた。
「う、うぐ…。きょうたん、後で覚えてなしゃいっ!…せっかく早戸ちゃんに…」
また噛んだっ!
威嚇してるつもりのようだが、全く怖くない。
みるく先生は、ぶつぶつ文句を言いつつも、杏をあてた。
「ふっふっふ…、ここはズバリ! ……喫茶店でしょ!!!」
普通だーっ!
自信たっぷりの割には、めっさ在り来たりだなぁ、おい!
「でも、ただ喫茶店をやるわけじゃないわ!」
! やはり、秘策がっ?!
皆の目が杏に集まる。
「コスプレ喫茶よ!もっちろん、男の子は女装!」
何ですと―?!
いやいや、きっと先生がダメって言うに決まって――
「コス…ぷれ…早戸ちゃんに私の可愛い姿を見せられる…!?」
駄目だーっ!!!
先生なんかもう、違う世界にトリップしちゃってるよ、おいおい!
「よぉーっし、それじゃ決定ー!!!…皆の女装…じゅるり」
何っ?!じゅるりって何?!
! 腐女子か!?最近の流行りの最先端ですかっ?!
「みんなで一緒に、腐女子の楽園―じゃなくて、皆の思い出を作りましょー!」
今、何か本性現したぞコイツ!!
絶対、腐女子っていったよね?!
楽園って何!?
ガンダーラ?ガンダーラなの!?それとも、ユートピアなの!?
それって、俺にとっても、楽園なのかなぁ…?!
「みんなぁ、明日から頑張るわよっ!」
俺の平凡―――…
*
帰り道。
「杏も無茶言うよなぁ…」
前田がため息をつく。
「だよなぁ…」
無言の沈黙。
「じゃあまた、明日な」
「おう」
前田と別れた後、俺はいつものように、まっすぐ家に帰ろうとした。
その時―。
ユラリ。目の前に人が現れた。
「…白崎…?」
「私ね、嫉妬深いんだーっ。ねぇ、早戸クン今、女の子の話してたよね!」
何だろう。手に何かを隠している。
「早戸クンはでも、迷惑なんだよね?ホントは、私以外の女の子の顔も見たくないんだよね?」
コイツ…何言ってんだ…?