清算…しましょうか?
*
映画の内容を、一応説明しておこう。
魔界のプリンセス、ダークルル(16歳)は、ある日
人間界に、お婿探しの旅に出る。
が、しかし――
容姿が小学生にしか見えない、という絶望的な盲点に気付かず、
ことごとく、あしらわれてしまう。
でも、その時、手を差し伸べてくれた人がいた。
そして、ダークルルは彼を振り向かせるため、あの手この手を尽くす――
という、アニメだった。
ちなみに、これが観たいと言ったのは、あかりだ。
俺は、別にみたかったわけではない。
まぁ、生憎…ロリコンでも、オタクでもないのでね。
*
「お兄ちゃん、面白かったね!」
「え、ああ、うん」
あかりが、俺を見上げ、にっこりと笑う。
「それにしても、まさかあのタイミングでダークルルの許婚が来るなんてね――」
「――そう、だな」
こうして、あかりと出かけるのは久しぶりだなぁ。
「? お兄ちゃん?どうかした?」
「あ、いや何でもない」
「そか…。私たち、こうして歩いてたら、恋人に見えるのかなぁ…?おにい――」
「あれ?早戸じゃない!」
あかりの言葉を聞き終える前に、杏が現れた。
「げっ、杏…」
「ふっふっふ、ここで会ったのも何かの縁ね!文化祭の借り、返してもらうわよ!!!」
意地悪に、杏がほほ笑む。
「……おにい、ちゃ…ん?」
「あ、ごめんごめん。こいつは同じクラスの杏っていうんだ」
「…そか…。杏さん、これからも、お兄ちゃんのこと、お願いしますね!」
少しの間の後、あかりは杏の方を向いた。
「ええ、もっちろん!」
「おいおい…」
――俺が、そんなに頼りないのかよっ!
「あ、お兄ちゃん、私…ちょっと、用事思い出したから、さき帰るね…」
「あ、おい、あかり…」
「杏さん、あとは、宜しくお願いしますっ…」
パタパタと、走って行ってしまった。
さて、どうしたものか…。
「よぉしっ! まずは、腹ごしらえと、行くわよぉっ!」
「…はぁ」
*
その後も、ゲームセンターやら、何やらに引っ張られ、結局もう、6時だ。
「今日は、楽しかったわ!じゃねーっ!また、今度つれてってねー!」
「っ…!もう、二度といかねぇよ!」
財布が…。すっからかんだ。
「……あーあ。疲れた」
こんなとこ、白崎にみられてたら、大変――
――空気が…変っ…
もしかして…白崎…?
はっ!となって、振り返る。
「あれ、奇遇ですねぇ!早戸ちゃんっ」
先生だった!
「もぉー、脅かさないでください…ふぅ」
「? 脅かす?自分に非があるから、そういうことを思うのですよっ?」
とにかく、今日はもう帰ろう…。
ホント、こんなとこ見られてたら、それこそお終いだ。
「――早戸…クン」
――白…崎…
どうして、こんな時に…
「どうして、そんな顔をしているの…?」
「じゃぁ、今日の、清算――しましょうか…?」
全てを知っているかのような、白崎の顔を見たとたん…
――俺は、思い出した…
……そうだ。こいつは――ずっと、俺をつけていたんだ――。