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休日。

今日は、しとしと雨が降っている。


「せっかくの日曜日だったのにね…」

あかりが残念そうに呟いた。


今日は、2人で映画を観にいく約束だったのだ。


「あーあ…おにいちゃんと…デート…」


「? あかり…?まぁ、また来週連れてってやるよ」



ピンポーン



ん?誰だ…?

「はぁーい」

あかりが玄関へ向かった。


がちゃ


「ただいま帰りましたぁーっ!」


『は?』

俺とあかりの声が重なった。


「え、母さん!?」


「あ、さくら君ー!ただいま〜」


「だから、息子に君をつけるな!君を…っ」


「あかりちゃんも、ただいま〜」


「お母さん…てか、どこ行ってたの?」


「あ、うん、あのね、自分探しの旅に…ちょっと?」


「いやいや、3年ってちょっとの域じゃないから!」


まぁ、けど元気そうでなによりだ。


「あ! お母さん、ちょっと、今大変なことを思い出したわ…」


え?!一体、母さんの大変なことって――


「オランダに忘れ物しちゃったわ…。ハンカチ」

どーでもいいよっ!!!

なんだよ!?

ハンカチぐらい、新しいの買えよっ!


「ま、じゃあ、そういうことだから…」


「そういうことじゃねぇよ…はぁ」


「もぅ、さくら君は甘えん坊ねぇ…」


「はは、お母さんったら…変わってない…」

あかりが、若干呆れている。



「まぁ、けど貴方達も元気そうでよかったわー!」


「…母さん…」


「ふふっ…」

皆は顔を見合せて、ほほ笑む。


がちゃ


「じゃ、そゆことで!」


「結局、行くのかよっ!」



母さんは、風のように現れ、また風のように去って行った。


――滞在時間、5分。



「お母さんったら、しょうがないなぁ…。もうっ」


「まぁ、昔からああいう人だったもんな…」


「けど、心配は…いらないみたいね…」


「ああ。あいつのことだもんな」

実の子供らしからぬ会話だが、母親が、あれなんだ。

――うん、仕方ないよな!


「お兄ちゃん、これからも私がしっかり面倒見てあげるから、心配いらないよ」


「あかり…」


――あれ、これ、おかしくね??普通は俺が言うセリフ…


「あ、雨も上がったみたい!」


「ああ、ほんとだな」


「じゃあ、映画! 連れてってくれるんだよねっ!」



空には虹がかかっていて、俺の心も澄み渡っていて。

隣であかりが笑ってくれていて。



――そんな、なんでもないちっぽけな幸せが、心地よかった。


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