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文化祭 〈後編〉

「私ね…、ずぅーっと我慢してきたんだよ?」


「…は?」


「ホントなら…、あなたのことあの時殺すはずだったじゃない…?」

いつでも冷静な、白崎は今もあくまで冷静だ。


「ねぇ…、やっぱり心中しちゃおっか…?」

悲しそうに顔を歪めて、白崎はそっと俺の頬に触れる。


「このままじゃ…刺突しとつしちゃうよ…?」

そうか…。最近白崎が頻繁に言ってたのはこのことだったんだ。



「私ね…、知ってるんだ…。早戸クンって優しいから…優しすぎるから…」


「みんなが傷つくのは、嫌なんでしょう…?」


「けどね、それって……。残酷すぎるよ…?」


「君には…早戸クンには、私を一番想ってほしいし…他の人なんていなければ…」

語尾がだんだん小さくなっていく。


「――そうだよ。…君が悪いんだよ。全部…」


「私、あなたが苦しむ姿なんて見たくなかった…けど――」


白崎の頬に水が伝う。

――それが、白崎が見せた初めての涙だった。


「けど――、それって…やっぱり…。無理なの……」


「だから――」


「――…一緒に、死んで?」


冷淡に、拒否すべきなのか?

俺は…、どうすればいいんだろう。

実は、俺がこいつを苦しめていたのか…?

いままで、そんなこと考えたこともなかった。

俺は……本当に、馬鹿だ。


そう思うと、なんだか無性に白崎が愛しく思えた。


「白崎……、俺さ、お前が好きだ…多分」


「早戸クン…?」

俯いていた白崎が、顔をあげる。


「だから…だからこそ、生きたいんだ。お前と…」


「…一緒に、生きる…?」

白崎は、不安げに俺に聞き返す。


「けど、つらいよ…」


「それでも…、それでもお前と一緒なら、乗り越えられる気がする」


「それで、さ…」

俺は、照れながら…まだ不安げな白崎に言った。


「いつか…結婚しよう?」



「! えと、……はい…喜んで…」

驚きを隠せずにいる白崎と女装中の俺は、その後も…ずっと、そこに座りっぱなしていた。

なかなか会話は弾まなかったけど…それでも…よかった。


そして、その後…。


俺は、先生と杏の二人に…こっ酷く叱られた…。


「酷いです!早戸ちゃん…っ、せっかくの文化祭なのに先生と回わらないなんて!」


「早戸っ!あんたのせいでねぇ…!ずぅーっと私が先生の御守してたのよ!?」


そして――

これは借りよ!借りたら10倍返しが筋よね!?とか言って、今度奢らされることになった。



「…!さくらーっ――ぐえっ」

なんか、悲惨な音がしたような気が、しないでもないが、まぁ問題ないだろう。



俺の文化祭は…とても濃いものとなったのだった。


補足しておくと、前田はあの後…しばらく、絡んでこなかった。

(…あの蹴りが、効いたのかなー)



やばい!

このままじゃ、ハッピーエンドになってしまうっ!!!


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