表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/120

第78話 ついにこの日が

「クヌースの矢印希望」のメンバーと久しぶりの再会を果たしてから、ちょうど1週間後の朝。


千里眼を用い、王都の冒険者ギルドの掲示板を眺めると……こんな依頼が貼り出されてあった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アザトースの討伐

ランク:A

依頼内容:アザトースを一体討伐すること。報酬は100ゾル。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……ついにこの日が来たか」


それを見て……俺は今日、王都に向かう事にした。






遡る事約2か月。


実は俺は、商人ラウスの護衛依頼達成を王都のギルドに報告する際、ギルドでこんな依頼を出していた。



「俺宛てに国王から何か書状とかが届いた際は、掲示板にアザトースの討伐依頼を100ゾルで貼り出してください」



メルケルスのギルドマスター曰く、俺は国王に謁見することになるそうだが……よく考えたら、国王が俺の居場所を把握するのは、ほぼ不可能な話だ。

なんせ俺は基本筋斗雲の上に住んでいて、実質決まった住所なんて持っていないようなもんだからな。


何も対策を講じなければ、国王の書状が不達となるリスクがあまりにも大きすぎるのだ。


そこで俺が目を付けたのが、王都の冒険者ギルドだ。


国王から冒険者へのお達しがある際は、その書状などは必ず王都の冒険者ギルドを経由して冒険者の手元に届くとのこと。

であれば逆に、王都の冒険者ギルドを通知として利用すればいいのではないかと考えたのだ。


「この依頼が出次第王都の冒険者ギルドに赴き、書状を受け取る」という事にしておけば、俺には千里眼がある以上、王都から離れても毎日のように連絡の有無を確認できる。


これで、国王側が俺にコンタクトを取れない問題が完璧に解決されるというわけだ。


こんなふざけた依頼にしたのにもちゃんと理由があって、それは「他の人が同一の依頼を出すことが有り得ない」という理由だ。


今世ではアザトースは討伐できる魔物とは認識されていない上に、Aランク冒険者に100ゾルなどという格安の依頼が出されることは無い。

だからこそ、この依頼は合言葉として機能するのだ。


まあ、その気になればこんな手を使わずとも、千里眼で王宮やギルドの執務室を覗いて書状の行方を追えはするが……流石に機密を侵害するような真似は、しない方がいいだろうからな。

このように、一工夫挟むことにしたというわけだ。


指定賞金首A-147Xを引き渡したこともあってか、俺に国王から連絡が来るかもという点に関しては一切疑われることなく、ギルドはこの依頼にアッサリと応じてくれた。


この日以来、俺はギルドにこまめに顔を出しに行く必要性が全くなくなったというわけだ。






この1週間、俺は精鋭学院付属迷宮でマイペースにハイルナメタルを精製したりと、朱雀討伐以前と比べるとのんびりとした日々を過ごしてきたが……それも一旦中断だな。


『コーカサス、ベルゼブブ、筋斗雲に乗ってくれ』


俺は2匹に筋斗雲に乗ってもらい、王都に向けての移動を開始した。






昼過ぎになって……俺たちはようやく、王都の近くまでやって来れた。


「あ、そういえば」


よく考えたら俺たち、ワンタイムリスポーンフィールドでの爆破作戦にかかりっきりになってて、王都付近のダンジョンの迷宮主を討伐してくるのを忘れていたな。


せっかくだし、ギルドに立ち寄るのは迷宮主だけサクッと回収してからにしようか。


そう思い、俺は筋斗雲の進路を僅かに変え、ダンジョンを目指した。


ダンジョンの真上に着くと、空間転移で一気に最新層まで転移し、コーカサスとベルゼブブに特大攻撃をぶち込んでもらって死体を収納。


再び空間転移で筋斗雲の上に戻った俺たちは、今度こそ冒険者ギルドに行った。


受付に並ぶ列の最後尾に空間転移し、待つこと十分弱。


「ヴァリウスです。()()()()はもう外して頂いて結構です」


俺はそう言いつつ、ギルドカードを受付嬢に渡した。


「は……早かったですね……」


「あの依頼を見てから、すぐ来たんですよ」


「それじゃあ……『あの依頼掲示板は、いつどこからでも確認できる』というのは、本当だったんですね。私、正直半信半疑だったんですが……」


……まあ、そりゃそうだよな。

千里眼なんて技があるなんて、誰も知らないんだし。

それでも俺を信頼してあの依頼を出してくれたってんだから、ありがたい話である。


「じゃあ、ちょっと待っててくださいね」


受付嬢はそう言って奥の部屋に行き、書状を手に戻って来た。


「こちらです」


「分かりました。ありがとうございます」


俺はその書状を受け取ると、ギルドの建物を出て筋斗雲の上に転移した後、書状を開いた。


「謁見は明後日か……」


俺がこの受け取り方をすることが国王の耳にも入っているのか、随分と急な日程である。

まあ、実際余裕で間に合うから問題は無いのだが。


「えーと、後期は第6章からだよな……」


今からまた精鋭学院付属迷宮に戻って、1日だけ精錬作業をしてまた戻って来るのも非効率なので……俺は後期の履修範囲の予習をしつつ、王都で謁見の日を待つことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 別に暗号にする必要はないのでは? 普通に呼び出しの張り紙しておけば・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ