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第75話 討伐報告

「確か、この辺にドラゴンが出現したって……あれ?」


駆けつけてきた男は俺の5メートルくらい手前で立ち止まると、そう言って呆然と立ち尽くした。


「あの……これってもう、討伐済みなんじゃないんっすかね……」


今度は別の男が、立ち尽くした男の方を見ながらそう言った。



援軍のつもりで来たのだろうか。

そんなことを思っていると、2人と目が合った。


「もしかして……キミが、このドラゴンを倒したのか?」


「はい」


最初に立ち尽くした男の質問に、俺はそう答えた。


「たった……1人でっすか?」


「ええ」


まあ厳密には、コーカサスとベルゼブブの協力の元討伐しているので、「1人」というと語弊があるかもしれないが。

「クヌースの矢印希望」復活の正式発表も間近に控えているのだし、こんなところでまで賢者なのかテイマーなのかでコイツらを混乱させることもないだろう。


「ど、ドラゴンを単独討伐って……そんなの尋常じゃねえぞ……」


「……そうなんですか?」


確かに、今回の敵はかなりの強敵だったが……このドラゴンの中身が朱雀であったことは、俺、アルテミス、そして麒麟以外は知り得ないことのはずだ。

ドラゴンと一口に言っても強さはピンキリだし、ドラゴンを単独討伐できるというだけで凄いと言われるのは少し違和感があるような……


「そりゃそうっすよ! あの大爆発を見た時は、もうこの世の終わりかと思いましたもん……。それを1人で倒すって、あんた何者なんすか」


そうだった、最初の一撃で街中の人が起こされてたのを忘れてた。

確かに、街を更地にして余りある単発ブレスを放てるドラゴンとなると、ある程度強い種類の奴に限定されてくるか。



……とか考えているうちにも、コーカサスが全て鱗を剥がし終えたようだな。

フルオロレンゲドウ酸がドラゴンの筋肉や表皮を突き破ってしまう前に処理しきれたようで何よりだ。


ドラゴンに近づき、収納魔法を発動していると……後ろから、こんな会話が聴こえてきた。



「そういえばさ……半年ぶりにメルケルスに返ってきてみたらさ、訳分からん功績上げてるヴァリウスとかいう冒険者の話ちらほら聞いてたじゃん?」


「ああ、そういえば」


「変な伝説が流行るようになったもんだなーって思ってたけど……もしかして、あの方が本人なのでは?」


「そうっぽいっすね……」




……おいこら、人を勝手に伝説にするな。

ていうか、「変な」ってつけるな。


話に変な尾ひれがつく前に早く、「クヌースの矢印希望」の復活を正式に発表してくれと思いつつ、俺はギルドに向かうこととなった。







「やっぱりヴァリウスさんだったんですね!」


ギルドに入るや否や……俺は、受付嬢に満面の笑みで迎えられた。


「どうしてそう思ったんですか?」


「ドラゴンに襲われてるのに、街に全く被害がなかったんですもん。そんなこと、まずあり得ない現象ですよ」


……なるほど。

その辺は、相手の中身が朱雀だったからってのが大きいかもしれないな。

もしあのレベルのドラゴンが俺ではなく街を集中的に狙っていたら、こうはいかなかったかもしれない。


「ほら、今『ヴァリウスさん』って!」


「やっぱり、この方だったんっすね!」


後ろからはヒソヒソと、そんな声が聞こえる。

いやだからさ、自分たちが街を離れてる間の出来事を、自分が信じようとしてなかっただけのことだろ……


とまあつっこみたい気持ちもあるが、今その話をするのもなんなので、一旦こいつらは放置しておくことにする。


「それで……死体は回収してきてあるんですか?」


「一応は。ただ……討伐を証明するものが必要だとしても、鱗や角くらいしかお売りすることはできないんですが、大丈夫でしょうか?」


受付嬢の問いに、俺はそう答えた。


「討伐の証拠は、ドラゴンの一部と分かるものであれば何でも大丈夫ですよ! 一度人や街を襲い出したドラゴンは対象を破壊するまで攻撃の手を休めないので、『ドラゴンの被害がなくなった状況』と『ドラゴンの存在を証明するもの』の2つが出揃えば、討伐した証拠となりますから」


「それは良かったです」


「でも……本当に、ギルドに解体に出さなくて大丈夫なのですか? 素材は自分で使うにしても、解体はこちらでプロの手でやった方がいいかとも思うのですが」


「いえ。今回の討伐では、非常に危険な薬剤を用いているので……もうドラゴンの体内はぐちゃぐちゃでしょうし、解体師さんの安全を考えるとやめておくべきだと思いまして」


そう話していると、受付嬢の表情が固まった。


「き、危険な薬剤、ですか……」


「はい。今回の討伐で決定打になったのも、その薬剤です」


嘘は言っていない。

トドメこそ神通力を流したルナメタル製の剣で刺したが……ダメージの大部分は、フルオロレンゲドウ酸由来だからな。


「なあ。ドラゴンに効く薬剤って……どんな代物なんだよ」


「分かんないっす。というか……分かりたくもないっす」




……まあ、後ろの男たちは置いておくとして……必要な処理の方を、ササっと済ませてもらうとするか。


俺は討伐証明も兼ね、ドラゴンの素材は取れた鱗の半分と角1本を買い取ってもらうことにした。


「では……こちらが素材代、8600万ゾルになります。あと……今回の件は王都の本部にも連絡が行くので、クヌースの矢印希望の件での謁見お際には、合わせてこのことも表彰されることになります」


そう言われて、俺は代金を受け取ると、ギルドを後にした。



さて……現在収納魔法にお蔵入りさせてあるドラゴンの本体部分だが、俺は1つ、これを有効活用できるかもしれない案を思いついた。


これから、それができる場所に移動するとしようかな。


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