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第31話 因縁の依頼

地上に戻ると、俺はコーカサスに湖を解凍してもらい……丸2日かけて、筋斗雲でメルケルス冒険者ギルドまで帰ってきた。


アルテミスが言っていた「ご褒美」とやらは楽しみだし、また精鋭学院付属迷宮に戻ってルナゴーレム狩りを続行するのも考えたが……別にあれは、特に期限があったりするわけではない。


ここ最近、ずっとアルテミス関連のことばっかりやってたことだしな。

そろそろギルドの依頼とかも受けて、実績作りもバランスよくやっていきたいと思ったのだ。


その上、メルケルスの街は赤い湖と精鋭学院を結ぶ直線上に位置する。

立ち寄らない理由は無いというわけだ。


『まーたここで待機かよ』


『そう言うなよベルゼブブ。ササっと終わらせてくるからさ』


いつものごとくコーカサス、ベルゼブブには筋斗雲に乗ってギルドの建物上空で待機してもらい、俺は冒険者ギルドに入った。


依頼を探すため、掲示板を見る。

すると……こんな依頼が目に入った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ヘルクレスマナカブトの討伐

ランク:B

依頼内容:ヘルクレスマナカブトの脅威を除去すること。1匹の討伐で報酬は80000ゾル(素材買取は別途報酬有り)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


……まさに、「これを受けなくてどうするんだ」ってくらい、俺たちにピッタリな依頼だ。

なんたって、この依頼を受ければ、コーカサスの未練を晴らすことができるのだからな。


そう思い、俺はこの依頼書を持ってカウンターに並んだ。


「この依頼を受けたいのですが」


そう言って、依頼書を受付嬢に渡すと……受付嬢は困ったような顔をして、こう返してきた。


「ヴァリウスさんって、まだCランクでしたよね? 『この依頼を受けたい』と仰られましても、まだランクが足りていないのですが……」


そう言われたので、依頼書に改めて目を通すと……あっ。

ヘルクレスの討伐ってところに完全に意識を取られてて、必要ランクを全く確認してなかった。


「Cランクだと、この依頼は受けられないんですか……」


「そう、ですね……」


困ったな。

せっかく、コーカサスに対決させてあげられる機会を作れると思ったのに。


今から最速でBランクを目指すという手はあるが……その間に、この依頼が他のBランクの手に渡りでもしたら、目も当てられないしな。

何か、いい方法は無いだろうか。


そう考え……俺は、交渉に乗り出すことにした。


「何か、今すぐBランクに昇格できる方法ってありませんかね? ……例えば、『強力な魔物の討伐実績で即昇格』みたいな……」


「強力な魔物の討伐実績は、確かに昇格に大きく近づく要件ではありますが……今すぐ昇格といくかどうかは、ちょっと分かりませんね。ちなみに、どんな魔物の討伐実績をお持ちですか?」


そう聞かれたので、俺はブルーフェニックスの死体を取り出すことにした。


ダンジョンの戦利品の大半は麒麟に渡してしまったからな。

今は、これくらいしか持ってない。


「ブルーフェニックスとか、いかがでしょうか?」


縋るような思いでそう聞くと……受付嬢は素っ頓狂な声をあげ、尻餅をついた。


「ブ……は……!?」


そして、受付嬢はわなわなと震える指で、ブルーフェニックスの死体を指差した。


「い、いやいやいや……強力な魔物とは言いましたけど! ブルーフェニックスは聞いてませんよブルーフェニックスは! なんでそんな、よりにもよって伝説の魔物なんですかぁ!」


受付嬢はそう叫ぶなり、奥の部屋に行ってしまった。


「おい……あの賢者、今度はブルーフェニックス倒したんだってよ……」

「やっぱ、賢者って俺たちとは格が違うんだな」

「……いやそういう問題か? ブルーフェニックスだぞ?」

「賢者だからってより、精鋭学院生だからなんじゃねえのか?」

「いや、そういう問題でも無いような……ってかあいつ、精鋭生なのになんでここにいるんだ? ブルーフェニックス倒したら授業免除、だったりするのか?」


……受付嬢があまりにもでかい声を出したせいで、また注目の的になってしまった。

ってか、いつの間に俺が精鋭学院生ってこと広まってんだよ。

それがバレてるせいで、なんかいらん事言う奴出てきてるし。


そうして、しばらく好奇の目に耐えていると……受付嬢が、1人の男を連れて戻ってきた。

確かあの人は……ルナメタル買取の時も、出てきてくれた人だったな。


「大量のルナメタルの次は、ブルーフェニックスか……。一体何がどうなってるのやら……」


男はため息をついた後、こう続けた。


「それで……ヴァリウス君は、この実績を元にBランクに昇格してほしい、という事なんだね?」


「はい。……これで十分でしょうか?」


そう聞くと……男は、残念そうな顔をして俯いた。


「単純な戦力なら、BどころかAランクをも軽く超えてるんだがね。君をBランクにするには……流石に、依頼達成数が足りてなさすぎるんだよ。ギルドの規則は、こんな出鱈目な強さを持つ人間に対応できるようにはできていなくてね……すまない」


どうやら、今すぐに昇格というのは、どうあがいても無理らしかった。


……やはり、ありったけのCランク依頼を受けて片っ端から達成していくしかないのか。

その間、ヘルクレスマナカブトの討伐依頼が、誰の手にも渡らないよう祈るしかないのか。


そう思っていると……受付嬢が、こんな提案をしてくれた。


「……ちなみにですけど、ヴァリウス君の本来の願いは『Bランクに今すぐ昇格すること』ではなく、『Bランクの依頼を受けること』ですよね?」


「はい」


「でしたら……一応、『3人以上の臨時パーティーを、パーティーの戦力評価がBランク相当となるように組む』という方法があります」


受付嬢は、笑顔でそう言ってくれた。


「臨時パーティー……ですか?」


「はい。ヴァリウス君を今すぐBランクにあげることはできなくても、ヴァリウス君を含む3人パーティーの戦力をBランク相当と評価することは可能ですし。精鋭学院の賢者なら、メンバー集めも苦労しないと思います」

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