表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/120

第111話 覚醒進化──2

確かにベヒーモスの言いたいことは分からんでもない。

しかし、それでは不十分なのだ。


「月までだぞ? 生半可な深さの穴じゃ、棒が穴からすっこ抜けるかもしれないだろ」


『じゃあ深い穴を掘ればいいんじゃないかい?』


しかしベヒーモスは、本当に何かもっといい方法があると言わんばかりに食い下がった。


「どんな方法だ?」


せっかくなので、一応期待して聞いてみる。


『コイツを使うんだ。……出でよ、改造土竜リニアディガー』


そう言うと……ベヒーモスは何やら聞いたこともない詠唱をすると、一匹のモグラを召喚した。


『あの棒と同じ直径の穴を、地下何キロか掘ってくれ』


かと思うと、ベヒーモスはそのモグラに指示を出した。


「何なんだ、そのモグラ……?」


『これはね、かつて遺伝子改造してつくった実験生物の一種だよ。このモグラはね、まっすぐキレイな直線の穴を、どんな障害物があろうとも掘り進めてくれるんだ。だからリニアディガーと名付けたのさ』


聞いてみると、これも食用キメラと同じく、ベヒーモスの作品だったようだ。


『ほら、できたみたいだ』


モグラが地上に帰ってくると、ベヒーモスはそう言ってモグラをいずこへか帰した。

如意棒をその穴に突き刺してみると、確かに何キロもの深さに伸びていく。

……これは確かに、本当にわざわざ湖を探す意味がなくなったな。

リニアディガー、凄く使えるぞ。


「ありがとう。これなら確かに月に行けるよ」


『その……協力してから言うのも何だけどさ、月に行くって本気なのかい? 棒で月に行くって、ちょっと意味が分からないんだが……』


「やれば分かるよ。さあ、この棒に掴まって」


俺はそう言って、ベヒーモスに如意棒に掴まるよう促した。

そして全員が如意棒に掴まると、あとはいつもの要領で月を目指した。



「おお、ヴァリウス。あの不思議な光る物体の時以来だな」


月に着くと、アルテミスは笑顔で俺たちを出迎えた。


「ってか……あれ。従魔、また増えたんだな」


そして次の瞬間、アルテミスはベヒーモスに気づいた。


「もしかして、その子も覚醒進化させてほしいって話か?」


「……話が早くて助かる」


目的まで見抜かれていたので、早速覚醒進化に取り掛かってもらうことにした。


「さあ行こう、ベヒーモス」


しかし……そう言ってベヒーモスの方を見るも、ベヒーモスはと言えば、困惑して固まってしまっている。


「どうした?」


『ヴァリウス君……一体あの子は何者なんだ? 生物の理から外れているようにした思えんのだが……』


「まあ……神……だしね。そりゃ」


どうやらベヒーモスは、アルテミスという存在に面食らっただけのようだった。

いつも生物観察に徹しているがゆえに、そのパターンからあまりに外れた存在を見て、困惑してしまったといったところか。


『神……なるほどねえ。そんなコネがあれば、覚醒進化の二段階目なんてものがあってもおかしくはない、のかな』


「ま、そういうことだ」


ベヒーモスが納得したところで、ようやく覚醒進化が始まる。

アルテミスがベヒーモスに手をかざすと、ベヒーモスが七色に発光し……しばらくして、それが収まった。


「どうだ、ベヒーモス」


『……まただ。またさっきのように、力が湧いてきたぞ!』


聞いてみると、ベヒーモスはそう言ってガッツポーズをした。

重覚醒進化、成功だ。


「ありがとう、アルテミス」


「いやいや、当然のことをしたまでだ。ヴァリウスには恩になりっぱなしだからな」


お礼を言うと、アルテミスはニッコリと笑顔を見せる。

そんな中……ベヒーモスはというと、また触角から光線を飛ばした。

次の瞬間、ベヒーモスが光線を飛ばした方向で、一瞬だけ新しい星ができたかのような光の点滅が起こった。


「一体何をしたんだ?」


『試しに小惑星を破壊してみたんだ。もちろん、陽電子一個で』


そう言ってベヒーモスは、眼をキランと輝かせる。

……試しで小惑星を破壊するかよ普通。

まあでも覚醒進化の効果が最大の魔物の重覚醒進化ともなると、これくらいが順当なのか?

あまりのスケールのデカさに困惑が拭えない状況だが、頼もしいことに代わりはないな。


「またハイルナメタルを持ってくるよ」


「ああ、楽しみにしているぞ」


用事は済んだので、そう言って俺は月を後にしようとする。



しかし——その時のことだった。


「いや……ヴァリウス、ちょっと待ってくれ」


如意棒の先端に帰ろうと千里眼で照準を合わせたところで……アルテミスは、そう言って俺を引き留めた。


「どうした?」


「それが……今、麒麟から連絡が入ってな。どうも体調が悪そうなんだ。ヴァリウスにもちょっと、通話内容を聞いてほしい」


聞いてみると、事態は麒麟関連……それもどうやら、深刻な方向性のようだった。


「……分かった、聞かせてくれ」


そう頼むと、アルテミスは麒麟との神通力での通話の内容を、こちらにも聞こえるようにしてくれた。

真っ先に聞こえたのは、今にも吐きそうな麒麟の嗚咽だった。

これは……相当ヤバそうだな。

心配になりながら待っていると、麒麟は深呼吸をして息を整えた。

そして、こう語り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 二日酔いじゃないよね?w
[一言] ・・・ベヒーモスが壊した小惑星にでも居たんか?麒麟
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ