第105話 レトルガ領主家で食事会をしていると……
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鍛冶屋を出て、レトルガ領に着いた俺は……まず畑予定地のケサランパサランの増殖具合を確認し、全体に行き渡る日数を推定した。
そして俺は、その日に合わせて栽培に協力してくれそうな領民を集めてもらうために、領主館に相談に向かった。
いつもの応接間で領主様とライリさんに会うと……どういうわけか、二人ともすこぶる上機嫌そうだった。
「なんだか凄く嬉しそうですね。何かいい事でもあったんですか?」
「いい事があったも何も、全てはヴァリウス殿のおかげだ。昨日私は、ギファイ子爵領に赴いて……エリクサーを換金して得たお金で、借金を全額返済してきてな。これでライリも、不本意な結婚を迫られることもなくなったというわけさ」
聞いてみると、領主様は経緯を話してくれた。
……そういえば、前金としてのエリクサーを受け取ってもらえた理由、確かにそんなんだったな。
「憂い事が消えたなら何よりです」
俺はそう言ってから、本題に入ることにした。
「ところで……本日はまた一つ、頼み事がありまして。いよいよ5日後には、芋の栽培予定地の土壌調整が完了しそうなのですが……そこに合わせて、栽培に協力してもらえる領民の招集をかけていただくことってできますでしょうか?」
ケサランパサランが全体に広がった後、十分な量の聖窒素が生成される日数を計算しつつ……俺はそう頼んでみる。
「……なるほど、その事か。もちろん問題無い。明日にでも、領土全域に通達を出すとしよう」
すると領主様は、二つ返事で快諾してくれた。
「ありがとうございます」
スムーズに話がまとまったな。
満足した気持ちで、俺は席を立って領主館を後にしようとした。
だが……軽く礼をして、応接間を出ようとした時……領主様はこう言って、俺を引きとめた。
「ヴァリウス殿……もしかして、今日も忙しいのか? 私は今日、借金返済を祝って、家族でプチ食事会を開こうと思っているのだが……せっかく今日来てくれたのなら、是非ヴァリウス殿にも参加して欲しいと考えたのだが」
なんと領主様は、借金完済で肩の荷が降りたことを相当喜んでいるようで……お祝いの食事会なんてものまで開くことにしていたようだった。
そしてそこに、俺も参加してほしいということらしい。
デーモンコアの処理も終わって、他に急いですることもなくなったし(ぶっちゃけアレも後回しにしていい程度の用事だったが)……それくらいなら、参加させてもらおうか。
「では、喜んで」
どちらかといえば、豪華な食事を楽しみたいとかいうよりは、今後ずっとお世話になる領主様と親睦を深めておいて損は無いという判断だが。
などと考えつつ、俺はその誘いを了承した。
◇
食事会は、結構楽しむことができた。
料理が美味しかったのはもちろんのこと……領主様がテイマーのことに色々関心を持ってくれて、覚醒進化の事とか色々話すことができたのだ。
まあコーカサスとベルゼブブは、相変わらずビーストチップスばかり口にしていたが。
そしてそんな談笑の結果、領主様にも、テイマーの可能性をより現実的に感じてもらうことができた。
俺はそれだけでも、今回食事会に参加した価値があったと思う。
最終的に、クヌースの矢印希望の話で一番盛り上がった後は……ふと夜中に差し掛かっていることに気づいた俺たちは、食事会をお開きにすることになった。
「いやあ、ヴァリウス殿の話はどこまで聞いていても飽きないものだな。また機会があったら続きを話してくれ」
「ではまたいつか」
そんな挨拶を交わしつつ、筋斗雲を取り出して乗る。
俺は領主一家に手を振りつつ……高度を上げて、天候シールドを発動した。
いやあ、楽しい一晩だったな。
今日は気持ちよく寝れそうだ。
などと思いつつ、しばらく地上をボーっと見る。
だが、その時……俺は、怪しい人影が三人分ほど動いているのを、目にしてしまった。
「何だあいつら……」
不思議に思いつつ、千里眼で装備などを観察してみる。
すると……とんでもない事実が発覚した。
あいつら……どう考えても誘拐用としか思えない道具の組み合わせ持ってるぞ。
これ、間違いなくこの屋敷に人間じゃないよな?
「ベルゼブブ、ちょっとあの集団、眠らせてきてくれないか?」
俺はそう指示を出し、ベルゼブブにその集団をスタンガスで眠らせてもらった。
そして、そいつらを抱えて領主様のもとへ戻る。
「あの……上空から屋敷全体を見てたら、こんな怪しい人たちがうろついていたのですが。これ、何者か分かります?」
すると……領主様は途端に青ざめた表情に変わりつつ、こう呟いた。
「このシンボルは、ギファイ子爵の私兵の……。借金については円満に片が付いたはずなのに、何故……!?」
その発言が聞こえ、全員に緊張が走る。
そんな中……ベルゼブブが俺にこう提案してきた。
「あの観葉植物の葉っぱ、一枚借りていいか聞いてくんね? 俺あれとエリクサーで、自白剤作れるからさ……」




