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ドラゴン&リボルバー  作者: 井戸カエル
3/4

3発目

○真っ白な霧の中

イチカは奇妙な感覚の中で目を覚ました。あたりは真っ白な霧に包まれた不思議な空間だった。

イチカ:「うん…ここはどこだ?」

老人:「起きよったか。お主、あれを起動できたということは〔渡り人〕じゃな。」

イチカ:「…えっ!?」

イチカの前には禿頭で白く長い顎鬚を生やした細身の老人がいた。老人の姿はイチカから見れば漫画に出てくる仙人そのものだった。イチカは驚いて、周囲を見渡してみるが、霧以外は何もない。イチカを見ながら老人はうれしそうに話をする。

老人:「驚いておるようじゃな。いや、驚いておるのはわしも同じじゃがな。」

イチカ:(…完全に亀の甲羅を背負ってそうだな… それよりもさっき、〔渡り人〕って言ってたよな。)

    「爺さんあんた誰だ?」

老人:「 誰とは失礼じゃな。わしはかの有名な賢者の一人じゃぞ! 若いの自慢話ができたな。」

イチカ:「 いや、自称有名人の爺さんに会っても何もうれしくない… さっき、渡り人と言っていたけれど、伝説で異世界より現れる者たちのことか? なぜそう思うんだ?」

老人:「あれを起動するには魔力を込めなければいかん。そして、その魔力の波長は普通のものではなく、わしと同じ渡り人のものでなければならん。」

イチカは〔渡り人〕についてうわさ程度だが聞いたことがあった。〔渡り人〕とは異世界から現れた者たちで、世界に多大な影響を及ぼしたとされている。しかし、世間一般では悪魔やユニコーンといった伝説上の話か酒場での与太話とされていた。だが、イチカは自身が前世の記憶持っていることや経験からそれが真実だと知っている。そして、目の前の老人も同じく〔渡り人〕だという。

イチカ:「あんたはあれが銃であると知ってた。どこで死んだ人なんだ?」

老人「ふん…わしはあれじゃ…〔戦争を終わらせる戦争〕じゃったかな。それで死んだの。お主はなんで死んだんじゃ・」

イチカ:「戦争を…確か第一次大戦のときのキャッチフレーズか。俺は…どういえばいいか…大陸での戦争の後に事故で死んだ。」

老人:「お主…運がないのう。」

イチカ:「そんな、哀れんだ目で見るな! 今が幸せだからいいんだよ。」

老人:「さて、あれを起動できたなら、魔力保持量や魔力操作は問題ないようじゃな。前世で兵士だったなら扱いもわかるじゃろ。なんか聞きたいことはあるか?」

イチカ:「まぁわかるけれど…そもそも、これの弾はどうしたらいいんだ?」

老人:「弾か、弾はの…土とかなんでもよいから手に持って、ストックの術式を起動すると形成されるぞ。ただし魔力を込めすぎると…」

イチカ:「込めすぎると?」

老人は口ごもりながらイチカの問いに答える。

老人:「手がの…こうパーンっとなるような。ならんような…」

イチカ:「そこ大切!すごい大切だよ!えっ暴発すんのこれ?」

老人:「大丈夫じゃ。賢者を信じんしゃい。それにあれは向こうの世界から流れたものをいじっただけじゃ。…自分たちで作ってみたら危なくてな。」

イチカ:「信じれる要素ゼロだよ。見ず知らずのジジイが作ったものに片腕を預けられねーよ!」

慌てるイチカを無視し、老人は苦笑いしながら続けた。

老人:「あと…土以外でも作れるが、土のほうが含まれる魔素で形を維持しやすくなっておる。」

イチカ:「流したなー。不安でしょうがない。」

老人:「後は習うより慣れろじゃ。あと魔力同調が強くて外せんが…おっと時間がきてしもうたな。がんばれ若者よ!」

イチカ「ボソッと言うなぁ!欠陥品じゃねぇーか!これ! 待てまだ話は…」

イチカは老人を問い詰めようとすると、周りの霧が濃くなり目の前が見えなくなった。



○イチカの部屋

イチカ:「終わってねぇぇ!」

イチカは大声を上げながらガバッと突然起き上がった。その大声で部屋にいたティアは驚いて振り向いた。イチカはあたりを見渡すと自分の部屋にいることに気がつき、驚いているティアと目が合う。イチカは急に気まずく、恥ずかしくなった。

ティア:「だ、大丈夫イチカ?」

イチカ:「母さん…その驚かしてごめん。俺はどうして…」

ティア:「慌てて帰ってきたと思ったら、急に応接室で倒れたのよ。心配したわ。」

イチカ:「そうか…あの時、倒れたのか… あっ!親父とコールさんに伝えなくちゃいけないことがあって!」

ティア:「大丈夫、アーサーが事情を話してくれたわ。コールさんはすぐに山や村の周辺を警戒しに行った。お父さんが治癒師を連れて来てくれるから、安心して。」

イチカ:「…良かった。」

イチカがティアの話を聞いて横になった後、治癒師が来て診察を行った。治癒師はイチカにしばらく安静にしたら良くなると伝えて部屋を後にした。



○一階のリビング

一階のリビングで高齢の治癒師はゲイルと話をしていた。外は少し先も見えないくらい暗く、時間はもう深夜になろうとしていた。

治癒師:「さて…イチカは診たところ問題はなさそうじゃ。強力な魔法道具を使えた者は同調効果で倒れることがあるらしいからの。たぶんそれじゃろうな。」

ゲイル:「ふーっつ…ひとまずは良かった。すまないな、急に連れてきて。」

治癒師:「いや、構わんよ。あんなに慌てたお前さんを見たのは久しぶりじゃったしな。」

ゲイルの言葉を聞いて治癒師は笑いながら話をした。その後、真剣な顔つきになりゲイルに質問を投げかけた。

治癒師:「しかし、バカでも無謀でもないあの子がなんでいきなり魔法道具なんかを…」

ゲイル:「実は俺とコールでよく分からない魔具について話をしていて、その時にイチカが慌てて部屋に来たんだ。部屋に入ったときは慌てていたが、魔具を見ると急に顔色が変わった。それで試しに触らせたんだ。軽率だったよ… もう、子どもじゃないからと油断していた。」

治癒師:「ふん…なるほど。まぁあの子はお前さんと違って色々と考えて行動するからの。何か思うところがあったのか…それとも…それが何か知っていたのか…」

ゲイル:「どうだろうな… 元気になったら聞いてみるしかないか。」

治癒師:「そういえば、思い出すの。昔、あの子がリーナを庇って狼にかまれたことがあったじゃろ。あの時、皆が口々になぜあんな危ないことをと言っておったが、あの子はリーナを助けるにはそれしかなかったと言い切りおった。」

ゲイル:「懐かしいな。あの時、俺は我を忘れるぐらい怒ったな。だが、あの時のイチカの判断はいま思うと間違っていなかった。」

治癒師:「そうじゃな。まぁ今回はたいしたことがなくて良かった。」

ゲイル:「どうする?もう夜中だ。泊まっていくか?」

治癒師:「あぁお言葉に甘えさせてもらうかの。」

次の日、治癒師は朝早くに自分の家に帰り、ゲイルはまだ寝ていた家族を守らねばと決意を新たにした。



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