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プロローグ

 最も長き迷宮。


 そう呼ばれるダンジョンにオレは足を踏み入れていた。


 このダンジョンは人気がない。


 相当深く潜ったにもかかわらず、宝箱の一つもみつからないからだ。


 モンスターはすべて非生物で素材をはぎ取れるようなのもいない。


 戦闘はすべて骨折り損のくたびれ儲けに終わる。


 純粋に腕試しに訪れる者しかいない、というのがこのダンジョンの現状だ。


 もう何度も何度も、いや、数え切れないほどこのダンジョンには挑んでいるが、人と出くわしたのは二、三回程度だ。


 ダンジョンのそこかしこには志半ばで散った冒険者たちの屍がある。


 盗賊にでも装備を奪われたのか、服すら着ていないものもある。


 それ目当てで来ていた盗賊なんかもいたみたいだが、確実性に欠け割が悪すぎたようで、彼らの姿を見ることはもうない。


 それ以前に前述したように、人を見かけることさえ稀なのだが。


 そんな危険なダンジョンにオレが単身で挑んでいる。


 オレがパーティーを組まない理由は簡単だ。


 ブサイクすぎて誰もパーティーを組んでくれないからだ。


 女の子はまだ理解できる。


 しかし。


 男にすら敬遠される。


 男にすらパーティーを組んでもらえない。


 それは何故か。


 それもひとえにオレがブサイクすぎるからだ。


 連れて歩くのもはばかられる。


 お前がいるとパーティーに女の子が入ってくれない。


 それほどのレベルのブサイクがオレ、サイクス=ブラッドフォードだった。


 いかにもイケメンな名前をつけた両親と、いかにもイケメンな家名をつけたご先祖様がうらめかしい。


 どうせなら、オレに見合ったイケてない名前をつけてほしかった。


 例えば、ミョモトとか、トンヌラとか、そんな感じの間抜けな名前を。


 それなら、ブサイクなオレにお似合いの名前としてからかわれることもなかったのに。


 なまじ名前がイケメンすぎるゆえに「サイクス? その面でサイクスって名前かよ!?」というツッコミを何度受けたことか。


 ちなみに千から先は数えてない。


 パーティーを組んでもらえない。


 誰にも頼ることのできないオレは否が応にも強くならざるを得なかった。


 いつの間にかオレはギルドでもトップの実力者になっていた。


 何故ならオレはリア充どもが乳繰り合ってウェーイしている間にも朝から晩まで戦いに明け暮れていたのだから。


 やがてオレの力を利用しようと声をかけてくる連中が現れ始めた。


 これでぼっちを卒業できる。


 普通のヤツならそう考えることだろう。


 しかし。


 誰がお前らみたいなリア充に楽をさせてやるものか。


 オレは孤高であり続けた。


 そして、現在に至る。


 と、まあこういうわけだ。


 そして、ダンジョンの最深部。


 オレはついに一振りの剣をみつけた。


「よくぞここまで辿り着いた勇者よ」


「剣がしゃべった!?」


 そのことに驚いたオレだったが、こんなダンジョンの最深部にあるような剣だ。


 普通の剣ではなかったとしてもなんら不思議なことはない。


 オレは気を取り直して尋ねた。


「今オレに話しかけたのはお前か?」


「いかにも」


 耳からではなく、頭に直接声が響いてくる。


「我が名はブサイクブレイド。すべてを破壊する力を与える代償として主の容貌を醜悪に変える。それでも良いのなら主のものとなろう」


 オレはブサイクだ。


 それも絶世の。


 これ以上ブサイクになることはない。


 オレに迷いはなかった。


「上等だ」


 オレは言った。


「これ以上ブサイクにできるものならやってもらおうじゃないか」


「契約は成った。今よりぬしが我の所有者だ」


 それだけ言うと、剣がそれ以上語りかけてくることはなかった。


 おあつらえ向きに鏡が置いてある。


 容姿が醜悪になったことを即座に思い知らしめるためだけに。


 悪趣味極まりない。


 いくつか転がっている骸は自らの醜くさへの嘆きのあまり、この剣によって自ら命を絶った勇者たちのものなのだろう。


 しかし。


 元からブサイクすぎた鏡の中のオレは超絶イケメンになっていた。

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