What is your job?
Lesson9「お前らの仕事って結局なに?」
図書館を出た後、俺とクミは夕暮れの道を並んで歩いていた。
帰り道は、行きと同じく森と野原の中を抜ける感じなのだが、さっきまでと違って、俺の頭の中は妙に騒がしかった。
大日本人。建国史。日本語。
それに、英語。
うーん、かえってわからないことが増えてしまった気がする。
「どうしたのタカシ。さっきからずっと黙ってるけど」
クミが俺の顔を覗き込んでくる。近い近い。
森の木漏れ日の下だと、こいつの金髪はやけにきらきらして見えた。
「……なあ、クミ」
「ん?」
「お前らの仕事って結局なんなの?」
クミの足がぴたりと止まった。
「し、仕事?」
「街で会ったベティってエルフ、言ってただろ。“あんたらの『お仕事』か”って」
「あー……あれね。うん。あれは、その」
わかりやすく目を逸らした。
なんだこいつ。ツンデレのくせに、こういう時だけ素直に動揺するな。
「それにさ」
俺は続ける。
「この世界、日本語通じるんだろ? 街の看板も日本語だったし、本も読めた。だったら、なんでわざわざ俺を呼んでまで英語なんか勉強したいんだよ」
「そ、それはあんたその……き、教養だよ教養!大事でしょ?」
教養なんて言葉知っていたのかこいつは。
「うるさいな! あたしだってたまには知的になるんだよ!」
どうも俺は口に出してしまっていたらしい。あと、知的な奴は“知的になる”とは言わない気がする。クミはぷくっと頬を膨らませる。
「あとさ。前に会ったベティも言ってたよな。“あんたらの仕事”って」
「うっ」
「何の仕事だ?」
クミは露骨に目をそらした。
あ、これ完全に何か隠してる顔だ。
わかりやすいなこいつ。
「……帰ったらエミリーもいるとこで話す」
「今は教えてもらえないのか」
「うるさい!」
クミはそう言って俺の腕を軽く叩いた。
軽く、のはずなんだが、地味に痛い。エルフ、見た目のわりにフィジカルが強い。
家に帰ると、エミリーがいつものように紅茶を用意していた。
「あら、お帰りなさいませ〜。お二人とも、どうかしましたの?」
「あのさエミリー、ちょっと聞きたいんだけど」
俺がそう言うと、エミリーの笑顔が少しだけ曇った。
そして、三人でテーブルにつく。
「単刀直入に言うぞ」
俺は二人を見た。
「お前らの仕事ってなんなの?」
エミリーはカップを置いて、静かに言った。
「……英語が必要なのは、会話のためだけではありませんの」
うーん、やっぱりそういうことになるよなあ。




