Is this a table or Kumi?
Lesson2 「これはクミですか?いいえ、テーブルです」
「続きを教えよう。さっき教えた“I am〜”の“am”だけど、これをBe動詞というんだ」
「Be動詞……ですの?」
エミリーが不思議そうに首を傾げる。そこへクミが口を挟んできた。
「動詞っていうのは日本語で言うと『食べる』とか『行く』とかのことだろー?Beってなんだよ!」
こいつら日本語なら文法もわかってるらしい。
ますます俺に英語を教えてもらう意味がわからんな……自分で勉強できそうなのに。
「Be動詞ってのは、前言った通りだよ。『イコール』ってことだ」
「もしかして……“am”だけじゃなくて他にもあるんですの?」
「その通り。エミリーは理解早いな。じゃあ他のを教えようか」
その後、俺は一通りBe動詞の基本を教えた。is, areとか、あとは“Is this a pen?”みたいな疑問文だ。
クミもエミリーも和製英語を知ってるだけあって、ハングリーとかを使って簡単な例文は作れるようになっていった。『アイムハングリー!』と叫んだクミにはクッキーをあげた。
「よし、じゃあ二人ともだいたいわかったみたいだし、ちょっと会話してみてくれ。英語は使わないとうまくならないからな」
「オッケー!」「はいですわ!」
二人とも少し戸惑っていたが、まずはクミから話し始めた。
「ハ、ハーイ、エミリー。イ、イズ……ディス、ア、ペン?」
うーん、まだたどたどしいな。
「オッケー、クミ。ちゃんと言えてるから、もう少し早口で言ってみよう」
発音が苦手な初心者ほど、早く喋るべきだ。聞き取る側も上達するし、なによりネイティブにも『あ、こいつは英語が喋れる奴なんだ』という印象を持ってもらえるから、伝わりやすくなる。
まあ、受け売りなんだけどね。
「わ、わかったよ。Hi, Emily. How are you?」
「Good, thank you. How about you? ですわ〜。すごい、私たち英語で喋ってます!」
やっぱり速めに喋った方が自然に聞こえるな。
「よし、いいぞ。続けて」
「I`m good, too. Thank you! おー、あたしもやればできるじゃん!」
「By the way, is this a pen?」
「No, it isn't. It's a tea cup. 見ればわかるだろー!」
そうなんだよな。この辺の会話の不自然さは半端じゃないんだ。
「そ、そうですわね!じゃ、じゃあ……Is this Kumi?」
今度はテーブルを指差して、そんな質問をするエミリー。うーん、それはどう見てもクミじゃ無いよなあ。
「No,,, いや、Yes! Yes! It's Kumi!」
めちゃくちゃ言うねこの子。お前はテーブルだったのかよ。NOばっかりだとつまらないと思ったのかな?
そんな俺を尻目に、クミは人差し指をクルクルっと振った。
バンッと間抜けな音がして、煙が立つ。こいつらの使う不思議な魔法だ。
気がつけばテーブルが一つ増えていた。代わりにクミが一人減っていた。
ん?どういうことだ?
「Yes! I am a table!」
クミの声で、嬉しそうにテーブルが喋った。
あ、変身もできるんだ。便利〜。