Would you introduce yourself?
Lesson1「お前は一体なにものだ」
「お前ら、なんでそんなに英語を勉強したいの?日本語喋れてるし、エルフ語も喋れるんだろ?」
俺の問いに、巨乳の方のエルフが答えた。
「そ、それは……できれば聞かないで欲しいんですの。ただ、英語を教えてくれたら、それなりのお礼はしますわ」
「そうだよ!人間なんかじゃ絶対できないことをしてあげるよ!」
貧相な体の方もキャンキャンわめいている。てかお前さっきまで敬語だっただろ。
ともかく、英語を勉強したい理由も報酬もハッキリしない。少し納得はいかないが……。
「……まあ、いいか。別にバイトとやることは変わらないだろうし。とりあえず、この家に住み込みで授業すれば良いんだよな?」
二人の顔がパッと明るくなる。
「あ、ありがとうございます!本当に助かりますわ〜」
「べ、別に人間なんかに教わることなんか無いけどねっ」
ああ……これがツンデレか。
巨乳の方はともかく、貧相な方がどんどん砕けた態度になっていくな。
「それじゃさっそくだけど授業、始めようか?」
「そうだね!よしっ、場所を作るよ!」
そう言って貧相な方は両手を前に出して、そのまま横にスライドさせた。
ボムッ!と間抜けな音がして、少し煙が出た。そして煙が晴れた時には、机と椅子が3つずつと、ノートと筆記具、おまけに黒板までが現れた。
う〜ん、ファンタスティック。
便利だなー。
「それじゃ、わたくしも!」
巨乳の方も同じような動作をする。今度は煙の中から湯気を立てた紅茶が現れた。いい香りだ。
「勉強の環境いいな。うん、それじゃ早速始めようか」
「オッケー!」「はいですわ!」
しまらない返事だなあ。
さて、授業を始める前に確認しておかなくちゃいけないことがあるね。
まず、こいつらの名前がわからない。
「よし、じゃあまずは英語で自己紹介してくれ。それくらいならできるだろ?」
「できないよっ!」「できませんわ!」
……とっても元気な返事だ。
うーん、どうもホントにゼロベースでやらなきゃいけないらしい。一体こいつら日本語はどうやって勉強したんだ……?
「仕方ないな。じゃあそこから教えよう」
俺はノートの2倍くらいのサイズの黒板にチョークで文を書いていく。
「I am Takashi Yajima. 『私は矢島タカシです』。意味わかる?」
My name is〜って言い方もあるが、あれは少し堅苦しいし古臭い。
「す、すごい。英国人みたいですわ……」
「最初からかなりのハイレベルだね……」
俺はお前らのローレベルさに驚いてるよ。
「いいか?まず、『私』が“I”だ。でもって、『です』が“am”だ。オッケー?」
「でも、それだと“I am Takashi Yajima”は『私です矢島タカシ』になっちゃうじゃん? ぷぷっ、なんかカタコトみたいでカッコ悪〜」
なんだとコノヤロウ。
まあ日本語と語順が違うからな。違ったアプローチが必要かもしれん。
「……じゃあ、“am”を『です』って訳すのはやめよう。“am”は『=』だ」
「イコール、ですの?」
あ、こいつら和製英語はわかるんだ。それだとかなりやりやすい。
「その通り。オレ、イコール、矢島タカシ。意味伝わりやすいだろ?」
「イコールか…確かにねー。そういう言い方する時あるわ。あたし、イコール、美人!」
「そんな感じだな。まあお前が美人かどうかは置いといて。じゃあその感じで、自分の名前を言ってみてくれ」
「オッケー!」「はいですわ!」
「I am Kumisteena Jordan! だよ!」
「I am Emerald York! ですわ〜」
ようやく名前を知ることができた。貧相な方がクミスティーナ、巨乳がエメラルドね。ちょっと長いから、できればニックネームで呼びたいところだ。
「二人とも、よくできました。じゃあクミスティーナ、これからはクミって呼ぶから」
「!? う、うん、オッケー……」
「で、エメラルド。お前はエミリーって呼ぶな」
「エミリー、ですか……。わかりました」
こうして俺とクミとエミリーの第一回英語授業が終わった。先は思いやられるが、まずはスタートアップってところだな。
次はBe動詞の使い方を教えてやろう……。