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李愛  作者: 采火
15/32

望んだ結果2

四つの小人が一人の妖精の元へ一斉に駆け寄ってくる。

そよそよとそよぐ風が彼らの言葉を絶え間なく運んだ。


「ようせいさん、レンヤとナカナオリしたからとっておきをおしえて!」


イツキが斎希に、とっておきをせがんだ。

レンヤと無事仲直りが出来たからか満面の笑みである。


「いいけど……」


しかし斎希はふと言葉を濁す。


「どうしたの?」


オウキがしかめっ面の斎希に尋ねると彼女は困ったような顔で笑った。


「近づき過ぎよ。もうちょっとだけ離れて座ってくれない? 特にイツキちゃんとサナちゃん」


斎希は狼狽して、目線を自分の両腕に落とす。

斎希の両腕は、右にイツキ、左にサナがひっついて座っていた。

自分も座っている姿勢なのだが、非情に座りにくい。

いや、もう、本当に離れて、マジで。

斎希が半眼になって心の中で叫ぶ。


「えー?」

「ようせいさんのケチー」


イツキとサナが心残りでもあるように口々に言いながら斎希から離れて行く。

子供の大股で二歩分。

それが斎希と子供たちの間にできた距離。

近づき過ぎず、遠過ぎず。

しかし、どちらかというと近い方だろうか?

四人が話すのに丁度いい場所まで移動してくれたので斎希はうんうん、と頷いた。

四人が斎希を囲むように輪になって座るのを確認すると口を開いた。


「皆、李唄は知ってるわよね?」

「うん!」

「……」

「すーももの、はーなびーらー♪」

「おーいしい、すーももをー、こーろがせーよー♪」


サナが勢いよく返事をし、レンヤが静かに頷く。オウキが李唄の冒頭を歌い、イツキが李唄の最後を歌った。


「スモモが採れる時期になると皆で歌うよね?」


確認するとサナがもちろんっ! と胸を張る。

……いや、胸を張る必要ないでしょう。

密かなツッコミは胸の内に秘めておこう。

斎希はにこやかにもう一つ問いかける。

こちらの返答はあまり期待してないが……。


「じゃあ、愛唄は?」

「なあにー、それ?」

「ようせいさん、、昨日も言ってたよね?」


やっぱり。

予想通りの返答である。

イツキとレンヤとサナが頭に疑問符を浮かべて、オウキは昨日のことを覚えていたようで訊いてくる。

斎希は何から言おうか迷いながら、


「李唄は誰に教えてもらった?」

「子供会のおっちゃん」


サナが即答。


───子供会のおっちゃん……いや、分かるけど分かるけども。顔が出てくるのに本名が出てこない。


ちなみに何処に住んでいるかも知らない。

子供会のイベントの時、特にスモモの採れる時期にのみ現れるのだが……。

謎の男・子供会のおっちゃん、である。

おっちゃん、といっても差し支えのない体育会系のマッスル派でもう御年八十歳くらいなのだが未だに元気すぎる感じのある御老人である。

そこで斎希は首を捻る。私、子供会のおっちゃんと仲良かったっけ?

全然全くこれっぽっちも記憶がないのだが。

と、なると。

自分は誰から愛唄教えてもらったんだろうという謎が一層深まる。

ぼんやりと誰かの顔が浮かんでくる。

誰の顔だろう?

古い記憶だからか霞がかかって思い出せない。

もうちょっとで出てきそうなのに。


……うがー!


「お?」

「なになに?」


オウキとイツキがいきなり発狂した斎希を不審そうな目で見る。


「………」


一拍の間。

斎希が正気に戻るには十分な間。

斎希はハッと我に返る。


「……あは。何でもないわ。何でもないからね? だからそんな痛々しい人を見るような目でミナイデ……」


くすん。斎希はトホホと脱力する。

子供四人が目で会話をする。

一瞬で会話を終わらせたイツキが斎希に笑いかけてきて、


「ようせいさんはようせいさんだもんねっ!」

「何その微妙なフォロー!」

「……ようせいさん、ヘン」

「超ドストレートできたし!? しかも子供に! 何歳も年下の子供にヘンって言われたぁっ!?」


しかもレンヤに言われたぁっ!

斎希はちょっぴり精神的ダメージを受けた。残りHP80/100。

でも大丈夫。人生経験でダメージ軽減だ。

とまあ、兎にも角にも話を戻さなければ。


「と、いうことは。愛唄っていうのは何か、ってところから話さなくちゃいけないのね?」

「お?」

「いえーす!」


無理矢理話を戻すと、不意をつかれたサナが素っ頓狂な声を上げ、イツキが分かってますねー、そうですよー、みたいな声で返事する。


「ではでは。まず、愛唄というものですがコレは李唄と対になる唄です」

「つい?」

「なかよしこよしー、だよね!」

「ええ、まあ、そうね」


微妙に違うけども。

オウキが対という言葉が分からずに聞き返すとイツキが知ったかぶりもどきをする。

もう少し分かりやすい言葉にすれば良かったかもと斎希は考えた。

もう一度説明し直そうと仕切り直す。


「李唄と愛唄は、二つで一つのお話を創っているの」

「おはなし?」

「どんなやつ?」

「それを今からお話するから待ってなさい」


次々と尋ねてくるイツキとサナを手で制して話を続ける。


「李唄と愛唄はこうやって書くんだけど……」


芝生だらけの中から砂地になっている小さなスペースを見つけて、適当に丈夫そうな枝も見つけて、李唄、愛唄、と書く。


「せんせー、よめませーん」

「ハイハイ、分かってるわ。コッチが李唄、コッチが愛唄。李唄のこの文字はスモモの木のことで、愛唄のこの文字は愛って読めるの」


指を差しながら説明する。


「スモモ?」

「アイ?」

「そう。スモモはこの木のことで……」


斎希は雄大に佇んでいる樹木に目線をやる。

葉の方まで見ようとすると樹木を見上げるような格好になり、それにつられて四人の子供もスモモの木を見上げる。


「愛っていうのは大好きっていう気持ちのことでもあるし、人の名前でもあるのよ」


斎希の声が空に舞う。

「アイはなまえ?」

「アイちゃん?」

「アイはダイスキ?」

「……?」


四人がしかめっ面で愛という言葉を咀嚼しようと悩んでいる。

それを見た斎希は苦笑して四人の思考回路に助け舟を出した。


「そうねえ……オウキ君」

「なあに?」

「オウキ君は自分の漢字を書ける?」

「あさめしまえだぜー」


ちょっと訊ねてみれば意気揚々と李唄と書いた左上に李唄とは逆さまの向きで『桜樹』とまだ少し下手な字で書いてくれた。

斎希はそれに斎希の時代にいた桜樹を想い寂しくなったが、表情には出さない。


「コレ、オウキのオウの字は桜の花で、キの字はスモモの木とかみたいに花の咲く木って意味なの。漢字って同じ漢字で読み方が違うって学校で習わなかった?」

「おおー」


サナが目を丸くする。

目を丸くするがこれは小学一年生の知識である。

十歳ごろのこの子たちなら分かるはずだが……。


「ならったならった~」

「……」


イツキが横に座るレンヤの腕を取り、意味もなくぶんぶん振り回した。

ごんっ。

お決まりのようにレンヤに殴られたが。

それでもレンヤは昨日とは違って手加減していたようでイツキは痛そうな素振りを見せない。

にへらっ、と笑ってさえいる。

そう考えれば良い傾向なのだろう。

……いや、殴っている時点で駄目か。

いや、でも、手加減するということ覚えたということは大人になっている証拠で。



───……ループするから考えるの止めましょ。


自分が悩んだってしょうがないしどうしようもない。


「……昔々のお話です。とある村にアイという、村で一番の働き者の女の子がおりました」


不意に囁く。

風に乗せて揺れる言葉は子供たちが興味を向けるのに十分足りるものだった。

静かに話が出来る雰囲気が出来たので、斎希はそのまま話を続ける。


「アイは大好きな人がおりました。その人の名前は李という名字の異国の兵隊さんです」

「リ?」

「この字を書くのよ」


地面に書いた李唄の『李』の字をトントンとつつく。


「李がこの村に来たのは大陸の王の命令でした」


───『見せしめに殺せ、殺すのだ。』


「李は兵隊さんなので村人を殺す……やっつけなければなりませんでした」


───『なぜ、己は兵士なのだ。』


「村人は良い人ばかりなので、李は何故彼らをやっつけなければいけないのか、よく分かりませんでした」


───『李サマは優しいですわ!』


まるで今にも目の前に李唄と愛唄の登場人物が現れて話しているように話す。

いや、もしかしたら実際に聞こえているのかもしれない。

それは斎希がこの物語に明るいからだろうか。

これらの唄で物語を創る為に村の資料館やら何やらで色々調べていたからだろうか。

言葉はイツキたちにも分かりやすいように易しい言葉を使っている。

殺す、という言葉はさすがに聴かせられない。……聴かせたくなかった。


「困っている李を救ったのはアイでした」


───『分からないなら聴けばいいのですわ!』


「アイは国に戻って何故村人をやっつけるのか聴けば良いと言ったのです」


───『己の此処に来た理由は全てお見通しか。』


「その時代、大陸の兵士がやってきて村人を理由もなくやっつけるのは、悲しいですがよくあることでした」


───『あら、理由を理解しているのなら私を今すぐ殺して下さいませ?』


「李はアイに試されていることがわかりました。自分の優しさを大切にするのか、国の為になら残酷になれるくだらない考えを大切にするのか」


───『己ではお前を殺せない。』


「アイは李の気持ちに気付いていました。李は優しくしてくれるアイのことが好きになってしまっていたのです」

「ラブだあ!」

「ラブラブ~」


女子二人がきゃっきゃっと騒ぐ。

まあ、この物語は普通に恋の話であるから、これは女の子として当然の反応ではある。

斎希はその様子に微笑み、また語り出す。


「李はアイ殺したく……ごほん。やっつけたくありませんでした」


うっかり残酷な単語が出てしまったので善処しなければ。


「李は結局アイたち村人をやっつけれませんでした。でも、やっつけられないと他の兵隊さんに怒られます」


───『それなら良い考えがありますの。』


「困っている李を助けたのはやはりアイでした。彼女は彼にこう言ったのです」


───『結婚しましょう?』


「結婚すればこの村の人になるから、李は兵隊さんではないんだよ、と」


───『そうだな。』


斎希は、目の前に仲睦まじい男女の姿が一瞬だけ見えた気がして目をこすった。

さてこの物語はここから佳境に入る。

子供たちに上手く伝えられると良いのだけれど。

ちょっとした不安を押し殺す。


「李が意を決して結婚を決めた日、悲しいことが起きました。他の兵隊さんが李を連れ戻しに来たのです」


───『裏切り者をひっ捕らえろ!』

───『抵抗する奴等は皆殺せ!』


「兵隊さんは李を連れて行ってしまいました。村人は取り敢えず全員無事でした」


───『絶対戻る。待っていろ。』


「アイは李と約束をしました」


───『ええ、永久に私は待つでしょう。』


「アイは李との約束を破らないために李の名前にちなんで、スモモの樹を村に植えました」


───『スモモの実が落ちたとき、あの人もきっと地に堕ちているのでしょうか。』


「しかしアイはふと思いました。スモモは李、ならスモモが死ぬ時は李が死んだと考えられると」


───『そんなの嫌。』


「アイは一生懸命スモモのお世話をしました。何年も何年も」


───『まだ、帰ってこないのですか……?』


「スモモはすくすくと育ち実をつけました。その頃には既に戦乱の世……えと、兵隊さんが村人をやっつけるために村に来ることがなくなっていました」


───『駄目っ! 実を落とさないでっ!』


「アイにはスモモの実が李の命の欠片に見えました。つまり、スモモの実が落ちるとスモモの樹が成長している証拠。では、人が成長するとどうなるかな? ハイ、オウキ君」

「え、ええ?」


急に指名されたオウキが戸惑った顔をしたが、すぐに腕を組んで考え出す。


「えーと……おじいちゃんおばあちゃんになる!」

「ピンポーン、正解よ」

「え!?」


オウキが驚く。


「なんで正解したのに驚くのよ?」

「なんとなく言っただけだから!」


ピースサインをこちらに向けて来るが、使いどころが違う気がするのでノーコメント。


「つまり、スモモの木がおじいちゃんおばあちゃんになればアイも李もおじいちゃんおばあちゃんだよね? おじいちゃんおばあちゃんになったら、人は後死んでしまうだけ。アイはそれが嫌だったの」


───『せっかくの実だ、皆食べよーぜ!』


「アイは村人に食べられそうになるスモモの実を必死に守るの。この事について歌ったのが愛唄よ」


───『スモモが枯れなければあの人と会える。』


「アイがおばあちゃんになって死んじゃった後、村人はスモモの実を欲張り始めるの。それを歌ったのが李唄」


───『さあ、今度は我らが世話をしてやるから美味しいスモモを分けてくれよ?』


「これらが李唄と愛唄の物語。どう? この歌の、本当のこと知ってみて」


訊ねると子供たちはそれぞれ渋い顔をしていた。

あるえ?

もしかしてうまく伝わってなかったのだろうか。

じーっと四人の反応を伺うと、おもむろにイツキが挙手をした。


「はい、イツキちゃん」

「けっきょく、ようせいさんはなにがいいたいの?」


ぐさあ。

子供特有の無邪気な矢が突き刺さってきた。


「やっぱり伝わってないわね……?」


自分の語る物語は分かりづらいものだったようだ。

どよーんと「の」の字を書き始める。

そんな斎希をオウキとサナがわたわたとフォローし始めた。


「あれだよね! ようせいさんは『りうた』と『まなうた』のオハナシしてくれたんだよね!」

「『りうた』と『まなうた』のナゾですな!」

「……おもしろくなかった」

「「レンヤとどめをさしちゃだめぇー!」」


レンヤによって打ちのめされた斎希はますますどよーんとなる。


「ううぅ……」


李唄と愛唄の真意は伝わらなかったらしいので、気を取り直して今度は担当直入に言うことにする。

立ち直りだけは早い。

それが取り柄ですから。


「……つまりは、姿が見えなくても、約束をしたら相手とはいつまでも繋がっている証になる、ということを言いたかったの」

「ツナガル?」


イツキが聞き返してきたので答える。


「ずっと一緒でいられるということよ」

「つまり?」


オウキがもっと詳しく教えてというような目で訊ねる。


「えと……約束すれば皆仲良しってこと」

「どんなヤクソクすればいいの?」


サナがキョトンとする。


「んー……皆の夢に繋がるものかな?」

「おれ、ユメないよ」


ぴしり、と音を立てて斎希が固まった。

マジですか。

まず、その問題があるんですか。


「……なんか、ない? サッカー選手になりたいー、とか、お花屋さんになりたいー、とか」

「あるあるー! あたし、じょゆうさんになりたいー!」


サナが勢いよく手を上げて自分を主張する。

それにつられてイツキも立ち上がって、


「イツキはサッカになるの! サナのやるドラマとかのオハナシつくるの!」


ねー、と女子二人両手を合わせて笑顔で顔を見合わせる。

それとは反対にオウキとレンヤは難しい顔でお互いの様子をさぐり合う。


「……オウキはなにになる?」

「んー、ぼく、おみせやさんがやりたいかなあ」

「……なんの?」

「まだきまってないよー。そういうレンヤこそなにになりたい?」


レンヤは一瞬考える素振りを見せてからポツリと言った。


「……トーキョーにいきたい」


たどたどしく、放つ言葉はきちんと彼の意見。

斎希もよく知ってるもの。

斎希の心臓がどきんと跳ねる。ここが、私たちの原点だ。

すぐに頬を緩めて笑顔になる。

これは、大切な一歩。

未来の斎希たちを形作る大切なもの。

なんだかんだ言ってコレが今の斎希たちの関係を形作ってきたもの。

やっぱり言い出すのはレンヤのようで。


「ええー、レンヤトーキョーにいきたいのー? なんでなんでー?」


感傷に浸っているとイツキが座り直して、レンヤに詳細を訊ねている。

レンヤはほんのり頬を赤くした。


「……なんだっていいだろ」


照れているようでプイっと明後日の方向を向く。


「いいじゃーん、けちー、おしえてよーう」


どうしてもイツキは気になるようで手をパタパタと上下させて教えてとアピールする。

言わずもがな子供っぽい。

まあ子供なのだし、可愛いのだけれど。

そこでふと首をかしげる。昔の自分を可愛いと思う自分ってナルシストなのか?

これまた嫌な称号を手に入れてしまうことになる。

けれどそんなことより、昔の自分だということを意識するともうちょっと落ち着きが欲しいかなー、とつい欲がでてしまうので、ノーカン。

もうちょっと大人になろうよ昔の自分。

で、それは置いといて。


「ふふふ、いいわねえレンヤ君。でも、東京に行ってもつまらないかもしれないわよ?」


ちょっとカマを掛けてみる。

さあ、どんな反応が帰ってくるか。

斎希はこう考えていた。

もし、レンヤの首都への思いが弱かったら悪いけれど阻止するつもりだ。つまり、諦めさせる。

そうじゃないと自分を含めろくなことにはならないから。

斎希が未来に戻れてもその後の生活が悲しいものになるのは見え見えだ。

逆にそれなりの覚悟思いがあるのなら四人に現代に繋がるような話をしてやるつもりだ。

別に過去なんて幸せになれるならちょっとくらい変えても問題ないだろう。

こう考えるのは斎希の身勝手だろうか?

斎希はレンヤの瞳を見つめる。

レンヤはその深い漆黒の瞳に吸い込まれそうな感覚がした。

───こくん。

レンヤが喉を鳴らして口を開いた。


「……トーキョーにいったら、みんなのやりたいことができる」


斎希は表情をますます緩めた。

猫のように目を細くして微笑んだ。

なんだ、皆のこと考えてるじゃない。

子供ながらに理解していることが伺える。

サナの女優になるという夢は、首都のような大きな都市に行かないとオーディションやら養成所やら通えないし、イツキの作家という職業だって首都にいた方が何かと便利だ。

オウキに関してはここらの街で店を開けたとしても繁盛するか疑わしい。

レンヤは……。

レンヤは未来の話だが結局はパティシエを目指す。

もし、今の段階でレンヤが密かにパティシエになることを夢見ているのなら有名なパティシエの多い大都市に行った方が結局は都合がよい。

そこまで考えているとは思えないけど、レンヤの言葉は後々重要になってくる。

ちょっとずつ、外堀を埋めていけば今の段階では上々だ。

ただ単に東京にあるテーマパークに毎日行きたいとかいう理由だったら即座に却下したんだけれど、そんな自分勝手な理由じゃなくて何より。


「お? てことはイツキたちもレンヤといっしょに、トーキョーにいくの?」


こくり。

イツキの確認の言葉にレンヤは頷く。


「……いきたくない?」

「にやにや、イツキはいくよー!」


イツキが自分のニヤニヤ笑いに効果音をつけて賛成する。


「あー……うん、あたしもいく。オウキは?」

「べつにいいよー? たのしそう」


サナもオウキも賛成する。

方針は固まった。

四人は楽しそうに「おおきくなったらトーキョーにいこうね」と約束している。

斎希は微笑みを隠せない。

これがイツキたち四人を現代の斎希たち四人に繋げる道標。

これは斎希たちを動かす大切な動力源の一つ。

斎希ははっきりとその始まりをこの瞳に映したのだった。


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