若返り
「はぁ」
今、ため息をついたのは、帰宅途中の社会人になったばかりの男だ。
(はぁ、つらい。こんなこと言っちゃ駄目だけど、やめたい。縛られる生活よりも自由に生きたいよな。あーぁ、学生時代は良かった。若いって良いなぁ)
新卒の彼はとある企業に就職してまだ一ヶ月。人生まだまだこれからだというのに弱音を吐いていた。
「ふぇっふぇっふぇっ、そんなに戻りたいかえ?」
「えっ!?」
そんな時、突然声がしたのだから驚くのは当然だ。かすれているが聞き取りやすいという、おかしな高い声だった。
男は振り向くと、そこには全身紫色服を着ており、天辺が尖がっていて、大きなツバが周りについている魔女のような帽子が特徴的な、本当に魔女のような人が立っていたのだ。
帽子のせいで表情は見えない。
「どうかえ?」
魔女のような人がそう言葉を発した。
「な、何がですか?」
男はそう答えるのが精一杯だ。全身紫の人は不気味でならない。
(ただでさえ最近は不審者などが多くなっているというが、まさか俺にも被害が及ぶかもしれないとはな。どうやってやり過ごすか)
言葉を発したおかげか、男は少し冷静に考えることができるようになっていた。
「薬、いるかえ?」
表情は見えないが笑っているような雰囲気が伝わってくる。
(白い粉か? そんなもん興味ないぞ。他に仲間を呼ばれるのは嫌だしさっさと帰ろう)
「い、要りません。失礼します」
「およ? さっき若くなりたいと言ってなかったかえ」
「え?」
(確かにさっき若いって良いとは思ったが、何故それを!?)
「ふぇっふぇっふぇっ、わかるんじゃよ。で、薬は要るかえ?」
(心が読まれてる!? ……んなことないよな、ありえない! きっと口に出していたんだ。それを聞かれたからこんな商法を)
「いえ、要りません」
男はそう言って踵を返す。
「若返りの薬じゃよ? 要らんかえ?」
男は何故か立ち止まった。
「そ、そんなの、あ、ある、あるわけない、じゃないですか」
振り向かずにそう答えた。
無視して行くこともできた。しかし、この、魔女のような恰好をした人の声はそれをさせない力があるように男は感じたのだ。
無視したら殺られる。そう感じられた。
殺気など感じたことのない平凡な男だ。その男が感じてしまうほどのものを魔女のような人は持っているのだ。
「ふぇっふぇっふぇっ、良いから貰っておきよ」
男は手に、いや、体中から汗が噴き出ていた。
そんな事はお構いなしに魔女は男へと近づいてくる。
ザッ、コツ、ザッ、コツ、と何かが擦れる音と足音が交互に聞こえている。魔女の服の裾が歩くたびに地面に擦れているのだろう。だが、その音が男に更なる恐怖を与えていた。
(何だ! 俺が何かしたってのか!? クソッ、動け体! 何故だ!? 何故動かん!!?)
誰のせいでもない、強いて言えば魔女のような人のせいだが、極度の恐怖により男の体は硬直してしまっている。
音は徐々に近づいてきている。しかし、彼が動かせるのは眼球だけだった。
恐怖のあまり瞬きすら忘れている男の真後ろから足音が聞こえた。
次に横から。
眼球だけを動かし男は魔女の様子を見ていた。そして最後に魔女は男の目の前へと立っていた。
声は出ない。顔色も蒼白だ。だが、冷汗だけは流れるように出ている。
魔女は男の前に立つと懐を漁り始めた。
(駄目だ、殺される。……親父、お袋、今までありがとう。小夜、ごめん俺もう駄目みたいだ)
小夜とは男の彼女の名前だ。男が大学四年の時に入学してきた彼女。キャンパス内で迷っていた所に偶々通りかかり、道案内したのがきっかけで知り合った。それから紆余曲折あり夏休み明けに男から告白し、晴れて彼氏彼女の関係となっていた。
魔女が懐に入れていた手を取りだす動きを見せた。
男の目には涙が滲んでいる。
(変な最期だったな。まぁ、楽しかったし良いか。こんな俺だったがみんなありがとう)
「ふぇっふぇっふぇっ、そんな嬉しいかえ」
そう言って俺の手を魔女は握ってきた。
(何をされるんだ!?)
怖くて目をつぶってしまう。今まで瞬きすらしていなかったせいか、目をつぶると溜まっていた涙が頬を伝う。
「おぬし22歳じゃよな。ほれ、これが若返りの薬じゃ、一気には飲むんじゃないぞ」
男の誕生日は10月だ。だからまだ22歳なのだが何故こんな事を知っているのだろうか。
そう思考する事もままならず、男は首を縦に振っていた。手を触れられたことにより硬直は解けてきたみたいであった。それでも恐怖には変わりないが。
「じゃあ元気でやるのだぞ、ふぇっふぇっふぇっ」
そう言い魔女は姿を消した。
立ち去ったとかではない。目の前からスーッと居なくなったのだ。
男は佇んだまま動くことができない。
「な、何だったんだ……」
そう呟くが状況は変わらない。魔女と出会う前より汗ばんでいることと、男の手に置かれた透明な液体が半分くらい入ったペットボトル以外はいつもと同じ日常が続いていた。
男はその後、いつも通り家に帰り着いてしまった。
(で、結局これは何なんだ?)
一ヶ月経ち着慣れてきたスーツを脱ぎ、ワイシャツ姿でお風呂の準備をしてからリビングにあるいつも使っている小さめの長方形の形をしたテーブルに置いていたラベルのない500mlのペットボトルを眺める。
(やばい薬が溶かされているとか? それともただの水か? ……あの怪しいババアがただの水をくれるなんてありえないか。ぜってぇ何か入ってるな)
ペットボトルをずっと見ていても透明なただの水にしか見えない。
「うーむ」
1人唸っていても答えは見つからなかった。
(そういえば若返りの薬とか言ってたな。それが本当だとして、飲んだところでどうなるんだ? 今の状況が変わるのか?)
悩んでいると、お風呂が沸いた旨の電子音が聞こえてくる。
(……風呂入って汗流すか、そうすれば良い考えも浮かぶだろう)
現時点で男の頭には捨てるという選択肢はなかったのだ。
「おっじゃましまーす」
閉めていた家のドアの鍵が開き、一人の女が男の部屋に入ってきた。
男は1人暮らしだ。1R、風呂トイレ別のアパートを借りている。
「あれ? 東里君お風呂か」
風呂場の方から音がして彼女はそう理解した。
彼女こそ男の彼女、小夜なのだ。彼女は男の家の合鍵を持っているため自由に出入りができる。今日も男と一緒に晩御飯を食べようと来ていたのだ。もちろん晩御飯は彼女の手料理である。
「ふんふんふーん」
上機嫌に彼女はキッチンへと向かい、しまってあるエプロンを手に取り自分で買ってきた食材で料理を開始した。
慣れた手つきで手際よく料理をし、ものの10分で生姜焼きの完成だ。
(簡単にできて美味しい料理だし東里君も喜んでくれる。一石三鳥くらいだわ)
鼻歌を歌いながら盛り付けて、テーブルへと御飯を運び終わる。
彼女はテーブルの指定席となった場所に座り男を待つことにした。
「ん?」
(水かな? 喉渇いたし飲んじゃえ)
テーブルに置いてあった半分ほど入っていたペットボトルを彼女は掴み、キャップを外し、一口。
(ん!? 美味しい、何だろうこの味……甘くてまろやかな感じ……)
彼女は、二口目で一気に全部飲み干してしまった。
「ぷはー、何かの天然水だったのかな?」
そう考えると同時に男が風呂から上がった音が聞こえてきた。
(ビールの準備をしてあげましょ)
彼女は席を立ち、ペットボトルをごみ箱に捨ててから冷蔵庫へと向かって歩いて行った。
「おつかれさま」
男が風呂から上がり体を拭いている最中に後ろから声が聞こえた。
「来てたのか、一言あってもよきぅあっ!!!?」
脇腹にあてられた冷えたビール缶のせいで男は突拍子もない声を上げる。
「驚かせようと思ってさ」
舌をちろっとだしながらウィンクをする彼女を見て、男は頭に手をやりぐりぐりと強く撫でている。
「か、髪がボサボサになっちゃう!」
「大丈夫、どんな小夜も可愛いからさ」
そう言って、もっと激しく手を動かしていた。
男の手が湿っていたせいか彼女の髪型は酷くボサボサになり、あらぬ方向へピョンピョンと跳ねている。
「うぅ~」
涙目にして男を見る彼女だが、男はそんな表情には屈せず、「お風呂入るか?」と聞いていた。
「御飯作ったから食べてから入る! 早く来てよね」
そう言うと彼女は脱衣所から出て行ったのだった。
(……驚かすんなら居ることを悟られる前にやらないと駄目だろ)
だが、そんな彼女の事が大好きな男だった。
ご飯を食べ終え、彼女はお風呂へ、男は食器を洗っていた。
彼女は、今日は男の家に泊まっていくのだ。月の半分程彼女は男の部屋に泊まっている。彼女の親も男とは数回の面識があり、好青年と判断されているから許可が貰えているそうだ。
男は、彼女が泊りに来るようになって一人だと寂しいという気持ちが大きくなっていた。大学の頃から一人暮らしの男には家で誰かと話すというのは素晴らしい出来事だと認識できた。誰かと居るからか独り言も減っていた。
そんな男は洗い物を終えテレビを見ながらのんびりとしていると、風呂場のドアを閉めた音がした。彼女が風呂から上がったのだろう。
男はそんな事を考えながら視線をテレビに戻していた。
「東里くん! 髪やって~」
ドタドタとバスタオルを体に巻いた彼女が男の前にやってくる。
「……服くらい着なよ」
そう言いながらも男は嫌な顔一つせず、ここにおいでとばかりに胡坐をかいていた両太股をパンパンと叩く。
「えへへぇ」
彼女は持って来ていたドライヤーとタオルを男に渡すと、近くのコンセントに差してから男の胡坐の上に座った。
ドライヤーの電源を入れる前に、彼女から受け取っていたタオルでぶあっと髪全体を拭き、それからドライヤーの電源を男は入れる。
ブォーという音と共に風が吹きだす。
ドライヤーを片方に持ち、男は彼女の髪の毛を手櫛で優しく整えながら、髪を乾かしている。
彼女の方は信頼の証の様に男に全体重をかけてテレビを眺めていた。
髪を乾かしている間、ドライヤー音とテレビの音以外音は無い。
そんないつもの日常だった。
「ほい、終わったよ」
ドライヤーを止め、男はそう言った。
「うん、ありがと」
屈託のない笑みを男に向けて、彼女はドライヤーとタオルを男から受け取り、男の胡坐の上から立ち上がる。
そして、そのままタタタと脱衣所に消えていった。
「ふんふんふーん」
ご機嫌そうに鼻歌を歌いながら戻ってきた彼女はバスタオル一枚からパジャマ姿になっていた。
そんな彼女は自分の居場所、とばかりに先程までいた男の胡坐の上へと腰を下ろす。さっきは髪を乾かしてもらっていたため彼女の背中と男の胸の間には空間があったが、今はその場に空間は無い。
男はそんな彼女の首元に腕を巻き、前へ重心を傾かせている。
そのまま1時間程テレビを眺め二人は一緒のベッドに潜り込み眠りについたのだった。
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男の朝は早い。と言ってもこれは一般的には普通かも知れない。学生時代、一時限目をあまり受けていなかった男から見ての、早い、だ。社会人になり、ぐうたら寝ていられる時間は休みだけになってしまったのだ。
そんな訳で6時に目覚ましの音で、嫌々男は目覚めさせられる。
定置に置いてある目覚まし時計に手を伸ばし、男は耳障りな音を止めた。
目覚ましのせいで彼女も起きてしなったのだろう。布団の中に体を丸めてもぞもぞと動いている。
そんな二度寝モードの彼女の邪魔をしないようゆっくりとベッドから男は抜け出した。
「はぁ」
と、男はため息一つ。今日も仕事かと憂鬱な気持ちになりながらも出勤の準備を始めた。
食パンをトースターに入れ、焼いている間に服を着替え、髭を剃る。その途中で焼き終わったトーストをほっといて目玉焼きなどの簡単なおかずを作りのんびり食べる。それがこの男の朝だ。もちろん彼女の分のおかずも作っている。
ご飯を食べ終えても少し時間はあった。なので、男は食後にコーヒーを一杯。インスタントのを入れて、ベッドに寄り掛かり、テレビを見ながら飲んでいた。
「うぅ~ん」
そんな時、後ろから声が聞こえた。彼女が起きたのだろう。
「おはよう」
男はコーヒーをテーブルに置いてからベッドの上を見る。
「………………え?」
そこにいたのは見知らぬ少女だった。
あどけない顔をした少女がベッドの上に座っていたのだ。
(……えっ!? 誰? この子)
体に目を向けると昨日彼女が来ていたパジャマだった。だが体格差があるのかパジャマはぶかぶかで片方が肩からずり落ちて今にも見えてしまいそうだ。
だがしかし、男はそんな少女を見てもいやらしい気持ちなんて微塵も感じられなかった。
(……俺はロリコンではないようだな)
「…………」
(って、今そんな事はどうでもいい! それよりここにこの子がいること自体が犯罪になりかねん!)
「ええーっと、君名前は?」
「うん? わたしは小夜……だよ?」
まだ眠いのか、少女は両手で目をこすっている。
(小夜……? 本当か?)
「フルネームを聞いてもいいかな?」
優しい口調で男は言う。
「……ここどこ? お兄ちゃんはだぁれ?」
だが返ってきた言葉は質問だった。
「あれ? わたし昨日学校帰りにゆみちゃんちで遊んでて、それからちゃんと家に帰って自分の部屋で寝た……よね?」
少女の方も混乱してきているようだ。
(ゆみちゃんって誰よ!? それよりどうすんのこの状況は! しかも会社!! ああっ! もうっ!! どうすんのよ、この状況!!!)
と内心泣き叫びたい気持ちでいっぱいの男だが、ここはグッと堪え少女の質問に応対した。
「えーっとね、俺も混乱してるんだけど、ここは俺の家で、俺は西城東里って言うんだけど……なにかわかる?」
「……ここお兄ちゃんのおうちなの? ……もしかして誘拐!」
少女の目が見開いた。
男はその瞬間、ヤバイと本能が伝えたのだろう。少女に飛び掛かり、口を手で封じ声を出させなくした。
「うむっ! むぐむごむががッ!!」
くぐもった声が漏れているが外にまでは聞こえてない。
はたから見れば男が少女を襲っているようにも見れる恰好のまま、男は少女の耳元で声を出す。
「大丈夫、大丈夫だから。俺は何もしないし何もしてない。だから落ち着いて、ね?」
何が大丈夫かはわからないが、男はそう言い続けている。
「むぅー」
少女はそう言うと、それ以降言葉は発さなかった。
(……もう大丈夫か?)
そう思い、手を少女の口から話そうとした瞬間、少女は口で息を吸った。
「ほんとお願いだから俺の話を聞いて! ね? ね!?」
再び口をふさいだ男は、涙を目頭に溜めながらそう訴える。
涙を見せたのが良かったのか、少女は少ししてから頷き、それ以降叫ぼうとはしなかった。
「神奈小夜……ちゃんで良いんだよね」
落ち着きを取り戻した2人はベッドの上で、お互い向き合って質問をしていた。
「うん」
(同じ名前じゃないか……ということは小夜なのか? でも何でこんな姿に……)
「お兄ちゃんは西城東里さん、だよね。……何か聞いたことあるような、ないような…………う~ん、思い出せない」
少女からの質問には男はほとんど答えられなかった。どうしてここにわたしは居るの? と聞かれても男にもわからない。男に関しての情報を聞かれた時は素直に答えていたが、少女が知りたいのはそんな事じゃないだろう。
男は男で色々質問をしてわかったことは沢山あった。少女の名前は神奈小夜、彼女と同じだ。歳は12歳で中学1年生。誕生日も彼女と同じだったのだ。そして最後に聞いた住所と両親の名前を聞いて男は認めたくない事実を認めざるおえなくなってしまった。
(この子は小夜だ。もしかしてあのペットボトルを飲んでしまったのか?)
少女に昨日ペットボトルを水を飲んだかと聞いても飲んでいないと言う。
きっと少女の昨日は男からしたら相当昔の日の事なのだろう。なんせ中学生なのだから。
(でも俺がテーブルに置いておいたペットボトルは今は無い。そして自分でいじった記憶もない)
「……ちょっと待ってて」
男はそう言うとベッドから降り台所へ。
「……あった……」
ゴミ箱を漁ると空になっているラベルも何もついていないペットボトルが捨ててあったのだった。
(確かに俺は中学生の頃は楽しかったなぁ、と思ってはいたがピンポイントでその時代に戻れるって何だよ! 心読めるのかあの婆さんはッ! しかも今の時代で戻ったところで意味ねぇじゃんかよ!!)
本当に魔女のような人は中学生に戻そうとしたのかはわからないが、男は混乱した頭でそう思ってしまっていた。
「お兄ちゃーん、どうかしたの?」
優しく接していたからか、男に結構心を開いてくれている少女がそう聞いていた。
(……良く今まで変な男に騙されたりしなかったよな。良い友達がいたのかな?)
そう考えながら台所からベッドの上へと男は戻っていく。すでに仕事のことなど男の脳内にはない。
(これからどうすれば良いんだ? 小夜の両親にも言えないだろこんな事。変なババアから貰った飲み物を飲んだら若返りましたって。どうしたんだこいつって思われるだろ。……けど、小夜を見せたら信じてもらえるかもしれない。…………でも、それだと俺は何もしてやれなくなる。こうなったのは俺の責任だ。そして、俺は――)
男は少女の顔をまじまじと見た。
少女は疑問符を頭に浮かばせながらも笑顔を向けてくれる。
(――うん、好きだ。彼女が、小夜が大好きだ)
どんな恰好になっても男はそう言い切れたのだった。
「お兄ちゃん、何か鳴っているよ?」
少女が指を指しながらそう言う。
「うん?」
男がその方向を振り向くとテーブルの上に置いていた携帯が震えていたのだ。
男は携帯を手に取り着信者を確認する。案の定、会社からの電話だった。時間を見れば9時は過ぎていたのだ。どうして来ないのかという電話だろう。
(こういう電話が来るだけうちの会社は優しいのかもしれないな)
そう考えが浮かんだが、男は携帯の電源を落とし再びテーブルの上へと戻した。
「大切な話があるんだけど、良いかな?」
少女に振り返りながら男はそう問いかける。
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「ふぇっふぇっふぇっ、なかなか面白いものを見させてもらったわい。こういう展開も悪くないのぉ」
暗い部屋のど真ん中には小さい机があり、その上には透き通った球体が置いてあった。椅子に座りその球体を眺めていた者がそう喋っていた。
透き通った球体には男こと西城東里が、夜どこかの工事現場で動き回っている姿を映している。
少しして透き通った球体に映っていた映像は変わる。
どこかの一室で本を広げ何かを書き込んでいる少女こと神奈小夜の姿とそれを見守っている西城東里の姿が。
再び映像は移り変わる。
どこかの道を、笑顔で2人、買い物帰りなのか袋を持ちながら並んで歩いている姿が映った。
「今度は誰に何をあげようかのぉ……ふぇっふぇっふぇ」
閲覧ありがとうございます!
童話とは何なのでしょう……?(笑)
一応R15つけさせてもらいました。