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流し雛  作者: 一条 灯夜
祓戸大神
17/24

~2~

 診察室で最初と同じように椅子に座る。後ろには、さっきと同じようにベッドに腰掛けた高橋さんと、僕の肩に手を乗せもうひとつの椅子に座っている唯さんがいる。

 目の前の先生は、僕達をそのままに難しい顔でデータを睨んでいた。

「頭痛と急な意識障害というと、脳溢血っぽいんだが、そういう兆候はないし……腫瘍や動脈瘤、静脈瘤の兆候もない。熱失神……、というほどの気温でもないが……」

 僕たちに説明するというよりは、独り言が漏れているだけのような気がする。熱中すると周りが見えない性格なのか、先生はパソコンになにか打ち込みつつ、また、なにかを検索しながらひとりで唸っている。

 僕は問題ないんだけど、こうした無為な時間に慣れていない高橋さんと唯さんは、どこか居心地が悪そうにしていた。

「いや、しかし、脳への血液の循環量に異常があったような微かな兆候はあるな」

「先生、それは、拙いのか?」

 長ったらしい説明じみた独り言に嫌気が差したのか、高橋さんが荒っぽい声を上げている。

 す、と、眼鏡を二本指で治す先生。

「しかしキミは、いつも難しい患者ばかりを連れてくるね」

 鋭い眼光が高橋さんを捕らえた。

「能書きはいいから!」

 眼差しに怯まない高橋さんに怒鳴られ、ううむ、と腕組みして悩んだ後、すまなそうな顔で僕に向き直った先生。

「分からない。が、話を総合すると、来栖君がなにかそうしたモノを払うと、脳が瞬間的な虚血症状に陥っている可能性がある」

「で?」

「脳以外の臓器は、血流が止まってもしばらくは問題がないが、脳はごく短時間でも致命的な損傷を負う場合がある」

「危ないってことですか?」

 先生と高橋さんの会話に割って入った唯さんが、露骨に不安そうな声を上げた。

 先生は口をへの字にして悩みながらではあったが、答えてくれた。

「軽度なら、失神や軽い熱中症みたいなものだが、重度となると命の保障はしかねる。――が、どうやってその程度が決まっているのか私には皆目見当が付かん。心臓、それに静脈も動脈も正常だ。急変する余地が無い。念のため、もう御祓いはさせない方が無難だろう」

 今現時点において危険は無い、そう僕は判断したのだけれど、高橋さんと唯さん……あ、いや、それに先生の三人は、場合によっては大きな危険があるということで深刻そうな顔になってしまった。

「ああ、そのつもりだよ」

 一拍の間が開いて、高橋さんが呟くように返事をしたことで、今日はこれまでとなった。

 病院を出る際、先生は出入り口まで見送りにきてくれた。

「なにかあったらまた来てくれ。キミなら歓迎するよ」

 そんな言葉を向けられたけど、病院に歓迎されるというのもどうなのだろう? 病院に掛かる用事が多いというのは、あまりいいことに思えないんだけど。

 僕の微妙な顔で察したのか先生は苦笑いで付け加えた。

「怪奇現象の話でもしに来てくれ。その手の話が好きなんだ。こちらも、次までに夢診断の勉強をしておくし、その時はコーヒーでも奢るよ」

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