第三話「私って誰!?」
「朝か……」
俺は目を覚ました
俺は昨日の一日でエレイ語を習得した
伊達に第15部隊の隊長をやっているわけではないからな、ハッハッハ
それで分かったことがある
昨日の医者の話によると俺、というかこの体の持ち主はどうやら多重人格らしい
まあ当然といっちゃ当然だ
俺はこの体の持ち主じゃないしな
「さてと……学校に行くか」
この体の持ち主は恐らく学校に通っている
ってことは学校に行っとかないとこいつはまずいことになる
いや、俺にそんな義理があるわけではないが
とりあえずこの体にあまり面倒をかけるべきではない
「おはよう、母さん」
俺は制服に着替え
2階から降りリビングにいるこいつの親であろう人物にエレイ語で挨拶した
「え、あ、おはよう」
ぎこちない挨拶が帰ってきた
まあ無理もないかエレイ語の発音の仕方なんて分からないし
「母さん、学校まで案内してもらいたいんだけど」
「ええ、構わないけど」
母さんは俺を車で学校に送ってくれた
「ここが、こいつの学校か」
見た感じ結構豪華そうな学校だった
俺の軍施設の半分ぐらいの面積はあるだろう
「母さん、俺のクラスは」
「え、ああ、2-Cクラスよ」
「分かった、ありがとう」
俺は変に取り繕うことはしなかった
どのみち発音でおかしいのはバレバレだしな
俺は早速学校に入り
2-Cの扉を開けた
「あっ、姫子おはよう」
早速挨拶が来た
赤い髪のおかっぱ頭の子だ
「おはよう」
俺は挨拶を返す
「どうしたの?姫子、発音が外国人みたいだよ」
やはり発音はどうしようもないか
「今日は外国人の気分なんだ」
俺は適当に返す
「アハハハ、何それ」
オカッパ頭の少女は笑い転げていた
別にうけを狙ったつもりはないのだが
「この問題わかる人」
「はい」
「おっ!姫子があげるとは珍しいな」
どうやらこの子は馬鹿らしい
それとも恥ずかしがり屋さんか?
「○○です、理由はこれがこうでああで」
皆、関心したように俺の言葉を聞いていた
「正解だ、姫子、しかし君はすごいなあ」
クラスから拍手が起こった
しかも”姫子ってこんな頭良かったか?”という声も聞こえた
やはりこの子は馬鹿なんだな
「それより姫子、お前、今日変だぞ」
「今日は外国人の気分なんで」
「ぎゃははははははは」
周りが笑いに包まれる
そんなに俺面白いこと言ったか?
授業のあとも俺の周りに人だかりが出来た
”どういう設定なの”だとか
”姫子ってほんとは頭いいのね”だとか
”姫子素敵”だとか
そんな言葉が俺の周りを行ったり来たりした
どうやら俺はクラスの人気者になったようだ
これはまずいかとも思ったが
頭がいいに越したことはないし
むしろこの子にとってはプラスなのでいいだろうと
自分の中で勝手に納得した
放課後
俺は図書館に寄っていた
前も言ったがバルサ国とリヴァート国の戦争のことが気になっていたのだ
探すこと約30分
ある書物のタイトルが目に入った
”バルサ国とリヴァート国”
そのまんまだ
俺は早速その書物を手に取りページを開いた
「そうか……負けたのか」
書物には俺の部隊のことや例の白い機体のことも乗っていた
バルサ国の主力である第15部隊はリヴァート国の最新鋭機に敗れた
戦争に勝利したリヴァート国はバルサ国に対し言語や生活習慣の変更を強制
またバルサ国の人間は軍人を含め皆奴隷にされたとも書かれていた
「酷いことしやがる」
俺がもっと強ければこんな結果にはならなかったかもしれない
俺がもっと強ければ……
しかし、今更悔いても仕方がなかった
「さてと、帰るか……」
俺は帰路についた
家に帰ると俺は早速筋トレを始めた
どうもこの体は俺に合わない
だから俺に合った体にするのだ
「おねえちゃん、今日変だよ」
この人物の弟であろう子が俺に話しかける
「今日は外国人の気分なんだHAHAHA」
「……」
あれ? 受けなかった
まあいいや、別にうけなんてねらってねえしい
さて、時間は11時になる
そろそろ寝ないとな
「あれ?」
俺は携帯の日付をもう一度見直す
「おかしい」
何がおかしいかと言うと
一日空いてるということだ
つまりだ
これは俺の推測だが
昨日元の人格かもしくは別の人格が
この体に乗り移った可能性がある
また前朝7時丁度に起きていたが
今回も朝7時丁度に起きていた
つまりこの体の人格は
毎日朝7時に変わると予測できる
ただ、俺がこの体に乗り移った日は浅いので
確証はないが……
「ひらめいた」
俺はカバンからノートを取り
文字を書き
そのページを開いたまま机の上に置いた
「よし!寝るか!!」
俺はベッドに入り眠りについた
朝
私は目が覚める
そして携帯の日付を確認した
「一日……空いてる」
私は背伸びをした
それにしてもやたら体中が痛くて重い
「ん?」
机の上にノートが置かれていた
ページが開いている
私はそのページを読む
「はじめまして、俺はバルサ国の軍人マルス・クレーだ」
「何よ……これ……」
私はページを読み進める
「これから君の体を借りることになる、よろしく頼むな」
「何よ!!」
私は半ば切れていた
「安心してくれ、俺もずっと君の体の中にいるつもりはない」
「……」
「それで提案がある」
「提案……?」
「俺の魂がこの体から無事抜けるよう二人で協力しないか?」
「……」
「君からの返事を待ってるよ」
「……」
「P・S君の髪長すぎて洗うのがめんどい切ってくれ」
「何よ!!!」
私はまた切れた
そしてしばらく唖然としていた