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最終話「私は……私なんだから」

 俺は学校でいつもどおりに過ごした

 弟子ヤンキーに稽古したり

 屋上で告白されたり

 ここを教えて欲しいと頼まれたり


 まあさまざまだ


 その後俺はそのまま帰宅した


「そういえば、病院に行く必要があったっけな」


 俺はこの子の母の車に乗り病院に向かった


「こんにちは、君はマルスさんかな?」

「そうです」


 俺は医者に質問攻めをされた

 恐らく多重人格の治療を兼ねているのだろう

 ”君の好きな食べ物は?”みたいに

 どれも当たり障りのない質問だった

 しかし、最後の質問で


「君は生前心残りがあるかい?」


 その質問で俺は無言になった

 俺は思い出していた


「俺がああああああああ!!!、俺がああああああああああ!!!!」


 俺は泣き叫んだ


「おい、マルス君、落ち着いて」

「す、すいません……取り乱してしまいました」

「それで何があったのかね?」

「前も話しましたが俺はバルサ国の軍人です」


 俺は話し始めた


「俺たち第15部隊は最初は順風満帆にことを進めていました」

「ふむ」

「だけど、あの機体が現れてからです、俺の部隊は追い込まれていきました」

「あの機体とは」

「白い機体です、リヴァート国の最新鋭機です」

「ふむ」


 医者が相槌をうつ


「マリク、ホルスン、ミレイナ皆大事な仲間です」

「……」

「しかし、あの機体に皆やられました」

「……」

「俺はあいつらの仇を取ろうとあの機体に勝負を挑みました」

「……」

「結果は俺の敗北でした」

「……」

「俺がもっと強ければ!!!俺がもっともっと強ければ!!!!」

「……」

「仲間が死ぬことはなかった……」

「……」

「俺は隊長どころか軍人失格です、国を守れず仲間すら守れなかった、そして皆に辛い思いをさせてしまった」

「……」

「今もです、彼女に辛い思いをさせています」

「彼女??」

「この体の持ち主です」


 医者はしばらく考え込んでこう言い放った


「君はとても辛い思いをしてきたんだね」

「俺が……ですか」

「ああ、彼女も辛いだろうが君も辛い」

「俺は……これからどうすればいいでしょうか?」

「それは私にも分からない」

「そんな……」

「とりあえずこの病院に通うこと、いいね」

「分かりました」


 俺は医者に一礼して病室を出た


 夜

 俺はノートに文字を綴った

 それをいつもどおり机の上に置く

 そして眠りについた























 朝私は目覚めた

 机の上を見る

 そこにはノートが開いたまま置かれていた

 もうこの光景が当たり前になりつつある


 私はノートの内容を確認した


「……」


 何も言葉が出なかった

 マルスが軍人だったことを忘れていた

 彼は自分の過去を綴り

 今も悔やんでることを私に打ち明けた

 そして俺はどうしたらいいかと私に訪ねてきた


「どうしたらって言われても……」


 私は悩んだ一晩中悩んだ

 彼とは一生を共にすることになるかもしれない

 けれど辛い思いをしているのは私だけじゃない彼もだ


 私はノートに文字を書き綴り

 それを開いたまま机の上に置いた

 そしてベッドに入って眠りについた















 朝

 俺は目を覚ました

 いつもどおり机の上に開いたままのノートが置いてある

 俺はノートの内容を確認した


「マルスさん、あれから私考えました」

「……」

「考えに考え悩み、苦悩しました」

「……」

「そしてある結論にたどり着きました」

「……」

「私、多重人格のままでいいじゃない」

「え?」

「そう思えるようになりました」

「……」

「これからも私たちは苦難を共にしていくことになります」

「……」

「この病気とも向き合わなければいけません」

「……」

「あなたにもこの現実を受け入れる覚悟をしてほしいです」

「……」

「私はもう受け入れる覚悟は出来ています」

「……」

「これからもよろしくお願いしますね、マルス」


 俺は自然と涙を流していた

























 あれから20年

 私は多重人格者の組合に入り

 各地で講演している


 もちろん病院にも通っている

 だがマルスの魂が私の体から抜けることはなかった


 でもいいじゃない






 私がマルスであろうと姫子であろうと

 私は……私なんだから

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