私は機械なの
途中直接的な表現は抜いておりますが、少し性的な描写があります。ご注意下さい。
物語の特性上での描写です。ご了承下さい。
私の名前は加賀谷美琴。
得意な事は炊事洗濯家事手伝い。
苦手な事は…………強いて言えば、運動。
血液型はA型。
身長は167cm。
体重までは知らなくても良いでしょう?
命令されれば教えるのだけれど。
黒髪で、それを結びもせずのばしている。
学生らしく勉学に励み、学生らしく部活に励む。
そんな学生になれたらどれだけ良かった事か。
そう、私はそんな女じゃない。
昔から、どんなニックネームで呼ばれていたか。
そう、そのニックネームが『高性能機械』。
機械の様に、言われた事は何でもやった。
どんな命令でも、無機質に聞いていた。
そんな私を、父親と母親は『高性能機械化ガール』と罵った。
そんな中、私は17歳になった。
高校生だ。本当は、人の言うことなんて聞きたく無い。
私は、それでも親の言いつけだから、と言う事を聞き続けた。
中学時代、そういえばこんなことを言われた事がある。
『お前は機械だからな。今日からこのクラス全員のロボットだ!』
私はそれでも言う事を聞き続けた。
先生の言う事もよく聞いていた。
でも、先生には何も言っていなかったので先生は何の対処もしなかった。
『キヅイテイタクセニー』
この思いが拭えない。
高校に上がって、男の子はそれなりのモノを持って来る。
女の子も女の子で、それなりに発情する。
私はー。被害にあった。
初めてだった。
思い出したくも無い。でも、私は高性能機械化ガールのままだった。
それどころか、私はもっと機械の様になっていった。
私が今やっているのは、『業務遂行』。
ただ、それだけ。
「加賀谷。お前、歯が当たったらどうなるか分かってんだろうな。」
「…」
そんな事、分かってる。
ただひたすら業務をこなすのが私の存在意義。
私に仕事を与えたのは新堂達哉。
彼が放つと、私はいつも通りハンカチに吐き出して、その部屋を出ようとした。
でも、その前に彼から声がかかった。
「加賀谷。お前、もう俺からの仕事受けなくていい。」
「何故?」
「別に。お前を辛い目に遭わすが嫌になっただけだ。…後、これ。」
彼から差し出されたのは、茶色い封筒。
「…これ、何?」
すると彼は私から目をそらして一言、「金だ」と呟いた。
「これを受け取るのは命令?」
「ああ。命令。後、紹介したい奴がいる。こいつに会うのが俺からの最後の命令。」
「そう。なら命令に従うしか無いわね。」
私はこれの命令をいつも通り聞く。
じゃあ、呼んで来る、と彼は言って部屋を出て行った。
暫くして彼は戻って来た。
一人の男を連れて。
「それは新しい命令を下す人?」
「違う。…おい、自己紹介。」
その男の人は少し申し訳無さそうな、そんな顔をしている。
でも、やがて口を開いた。
「僕は…笹山優。達哉の……友達だ。君、加賀谷さんだよね?」
「ええ。加賀谷美琴。」
私が名前を言うと、彼は意外そうに目を丸くした。
「どうしたの?」
私はどうしても気になったので問いかけた。
でも彼は一瞬後には何事も無かったかの様な顔をして、
「何でも無いさ。」
と言った。
「私に命令しないの?」
私は問いかける。
彼は、ああ、そうだったね、と笑って、私にひとつの命令を下した。
「これから、僕の命令以外は聞かない事。」
そうか、そう来たか。
第一話をお読みいただき有難う御座います。着想自体、2年前程にあった作品で、思い入れが深くもあります。完結までかなりの時間を要すると思いますが、お付き合いいただけたらなと思っております。
2012年4月5日 風音翼