閑話2
カイゼル視点です
とある伯爵令嬢の家庭教師をやることとなった。
王都から馬車で片道18時間というかなり辺鄙なところに住む伯爵家のご令嬢だそうだ。
幼いころから魔力がありその為に高熱で寝込んでいるので魔力の扱いを教えて欲しいとの事だ。
はんっ・・・ばかばかしい。
貴族の奴らは自分の子供に魔力があるといっては魔術師を引っ掻きまわしてくる。
自分たちの家から魔術師が出るのは貴族にとって栄誉な事だろう。
ありもしない魔力をあると言ってはこちらを呼びつけ魔力は無いと告げれば何とかしろと言ってくる。
だいたい魔力が現れだすのは5歳を過ぎてからだ。
3歳やそこらの子供に魔力なんてあり得ん。
まったく面倒なかぎりだな。
ただ伯爵夫人は確か『癒し』の特殊魔力を持っていたはずだ。
もしかすると魔力持ちという事もあり得るのか?
しかしフィールゼン家は長男が7歳の時に行った魔力判定で魔力持ちと認定され王都の学院に入学させらせたはず。
同じ血筋から魔力持ちが2人?そんなことがあるのか?
まあ、行ってみれば分かる事か。
『癒し』の特殊魔力を持つ夫人に会ってみるのは少し楽しみだ。
******
会ってみた令嬢はやはり魔力を感じる事はなかった。
瞳の奥に輝きは無くいたって普通の子供だ。
その事を本人に告げてみれば令嬢は眉を寄せ何か考えているようだった。
「---せんせいのひとみにしろいきれいなチカチカがみえます」
令嬢の言葉に愕然とした。
魔力の波動が視えるのか?
そんなバカな。
確かに令嬢には魔力の波動を感じない。
私の持つ特殊魔力『探索』はなんの反応も示していない。
『探索』はあらゆるものの性質を見る、どんな少量の魔力であろうと見つけ出しその性質が視える特殊魔力
それをも誤魔化す何かが令嬢の体にある?
いや、そんなはずは・・・
令嬢の瞳をもう一度よく見なおしてみると青碧眼の奥に金色に輝く光が渦巻いていた。
魔力の輝き、伯爵夫人と同じ『癒し』だろう。
しかし魔力は体を廻り体外に出る事が出来ないようだ。
令嬢にその事を伝えてみれば本人は体の異変についての私の説明に納得したようだった。
あまりに落ち着いた態度が腑に落ちない。
確かまだ3歳のはずだ、体の仕組みに対し知識がある?
その事の尋ねてみれば母親から聞いたのだという。
しかし先程の理知的な瞳は3歳やそこらの子供の顔ではなかった。
私の『探索』を持ってしても見つけ出す事の困難な魔力。
年齢に不似合いな態度と言動。
本人は一生懸命誤魔化しているようだが・・・
まあ7歳に行う魔力判定までまだ3年もある。
じっくりと調べていけばいい・・・・令嬢の体の謎も、本人が必死になって隠している事も・・・な。
王宮でバカな貴族どもを相手にするより有意義な日々を過ごせそうだ。