表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

月日とは酷なものです

お・・・お久しぶりです~

「なにもついて来なくても良かったのに」


「そんなこと言って、馬車は御義父上が乗っていってしまったし、ユリはまだ乗馬は出来ないんだろ」


う~ん、痛いところをつかれました。

確かに伯爵家には馬車は1台しかない、それを王都へ行く父様達が使用しているので無いのは仕方がない。男爵家に行くのに子供の徒歩では時間がかかってしまうし、危険もある。私はまだ馬に乗る事は出来ないんですよね。

父様にまだ小さいからと乗馬は禁止されていたし、前世ではそんなお上品な趣味は持ち合わせていなかった。

ので「レニー君の様子を見に行きたい」私に対しガーディは騎乗で共に行く事を提案してくれたわけなんだが・・・


私は別に馬車がないなら荷馬車でいいって言ったのだけど流石に領内ならともかく男爵家にお邪魔するのに荷馬車は失礼になると母様に止められてしまいました。


「お隣ってクディル男爵家だろ?老男爵が隠居しているって聞いたんだけど」

「そうよ、息子さんは王都にいるって言ってた。もう、かなりお年だって聞いたけどそんなふうにみえない位矍鑠としてて面白い人だよ」


父様も王都ではかなりの変り者で通っているらしいけど、クディル男爵も変わった人なのだそうだ。

現役の時は王都でかなり重要なポストにいたらしいが息子の地位を譲るとさっさと楽隠居でこの地にやって来たらしい。

偉ぶるところがなく、領民の話や要望を良く聞き、良い案は即実行という決断力もあるので領民からの人気は高い。

クディル男爵や父様のおかげでこの地域の治安や暮らしぶりはかなりいいとアラート先生も言っていた。



男爵家には訪問の旨を先に手紙で伝えてあるので到着と同時に男爵家の執事さんが出迎えてくれ、クディル男爵の待つ応接間へと案内された。


「ようこそ、ユリアナ嬢。先日は無理をさせたようで身体の方は大丈夫だったかい?」

「はい、御心配ありがとうございます。ぐっすりねむったらげんきになりました」


先日、男爵家でレニー君の治療を私が行った事はクディル男爵にも話してあると父様は言っていたっけ?

初めて使った魔術の為に疲労困憊して気を失ってしまったものだから男爵も心配してくださってたみたいです。


「ユリアナ嬢のお陰でレニーの体調は良いのだが・・・おや、そちらの御仁は・・・」


私の後ろに立つガーディに気付いた男爵ですが・・・ううむ、なんて紹介したらいいんでしょうか。


「お久しぶりです。クディル将軍。20年前の魔獣の件以来ですね」


男爵の前に歩み出て挨拶をするガーディですが、え?知り合いなのですか?

びっくりして男爵を見れば驚きの顔が・・・


「ガーディアル殿でしたか・・・いやはや、本当にお変わりなく・・・」


すぐに笑顔を戻した男爵と何やら話が弾みだしたようです。

ガーディとクディル男爵はお知り合い?というか20年前の魔獣と言えば父様達が話していた「開かずの森」の件の事?

男爵の領地はユーテリアス国と最も近い位置にある。

その為にガーディと面識があってもおかしくは無いのかもしれない。


とりあえず昔話に花が咲いているようなのでお邪魔にならないようにソファにでも座って待っていましょうか。

ガーディも男爵の事を知って会いたくて一緒に来たんですね。言ってくれればよかったのに。

暫くして男爵とガーディは話を終えこちらにやって来ました。


「ああ、ユリアナ嬢。一人で退屈にさせてすまないね。」

「いいえ、ガーディと男爵様はお知り合いなのですか?」


二人の様子を窺うように尋ねてみれば


「50年前、私は国境警備の隊長をしていましてね。まあ、色々と反乱軍の方々とは協力体制にあったのですよ。その繋がりから20年前の件でも係わったのでガーディアル殿とは面識があったわけなんだが」


あの頃と変わらない姿で現れたのが驚きだったそうだ。

20年前、開かずの森から現れた魔獣はユーテリアス国だけではなくアルシャン国にも数匹がやって来たのだそうだ。クディル男爵をはじめ、王都からやって来た魔術師、そしてユーテリアスからやって来たガーディ達によって被害なく、捕縛する事が出来た。

その時に縁だという事だ。


「初めてお会いしたのは50年前、ユーテリアスの建国の際に協力としてガーディアル殿にお会いしたが、まだあどけなさの残る少年だった。次にお会いしたのは20年前、その頃には息子とそう変わらない青年だった。そして今日、20年前と変わらない彼に再会し、話には聞いていたのですが、年甲斐もなく興奮していましてな」


「手紙でのやり取りはしていたんだけど、こうして会うのは本当に20年ぶりだったからね」


それはそれは、思わぬところでの繋がりですね。

国境の近くに信頼の出来る人がいるというのはガーディにとってはいい事ですね。


「しかし、ユリアナ嬢がガーディアル殿のあの方(・・・)でしたとは、世間は広いようで狭かったのですな」


私の顔を見ながらしみじみと男爵は呟いてらっしゃいますが・・・何ですか、その意味深なセリフは・・・もしかして知ってるんですか?


「ユリがどこの国に転生するか分からないからね。色々な国にそれなりに根回しをしたつもりだよ」


こちらの驚き顔に「がんばりました」笑顔でガーディは教えてくれますが、一体何をどう説明して回ったんでしょうか?

男爵の興味津々な瞳と含み笑いがものすっっっごく気になるのですが・・・


今日ほど50年という月日の恐ろしさを感じた事はありませんです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ