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外国へ行くという事は大変なのです

ひと通りアラート先生の探究心が満たされたところで夕食の時間になったようです。

夕食時には母様がガーディに質問攻めのようですね。

普段は何をしているかとか、趣味はあるのか興味のある事は等々。

そういえば再会してからは私の話と過去の話ばかりで最近のガーディがどうしていたかなんて聞く余裕も無かった。

母様の質問に一つ一つ丁寧に答えていく姿を見、話を聞きながらガーディも大人になったんだなぁ(50過ぎの男に言う事じゃないけど)と感慨深いものがありますネ。


夕食が終わってもまだまだ話足りない母様に連れられ、リビングで食後の紅茶を飲みながら再び質問攻めにあうガーディとは打って変わって、私はのんびりデザートを満喫中です。


「御婚約おめでとうございます・・・と、申し上げても?」

「------まだ受けてませんケド」


やって来ました・・・ガーディを母様に取られてますから私で我慢しましょうという事ですね。

ああ、でもここで”陣”を見せる事は勘弁してくださいな。


「・・・・せんせい、”陣”でしたら後で書き写してお渡ししますので」


「おや、御令嬢自ら書き写してくださるのですか?それは助かります。ガーディアル様が後で御令嬢の”陣”も持ってきてくださるとお約束頂きましたが・・・どうやって移すつもりなのか少し気になりましたしね」


~~~~ガーディ!!それどういう事?!勿論私に頼むつもりだったよね?!まさか自分で映すとか言い出すつもりだった・・・いやいやいや子供といっても一応場所も場所だし、私にだって書くことぐらい問題ないはずだから!

”陣”をただ書くだけなら発動はしない、魔導師達が書く”陣”は魔力を込めながら完成させていくのだという、魔力を線にのせる事で初めて形となるのだ。

だから、文献としてのこるモノは発動しないモノが殆どだ。



「しかし、ガーディアル様も結婚とはなかなか面白い手を使ってきましたね」


楽しそうな声でアラート先生は仰いますが、どういうことですか何が面白いの?



「おや?ユーテリアス国に行く為に御婚約なさったのでは?」


「なんで隣国に行くのに婚約しないといけないんでしょうか・・・」


怪訝な顔で見上げる私にふうっと溜息をつきながら先生は説明を始めてくれます。



「前に、授業でやったはずなのですがね。『魔術師及び魔力保有者による出国の規制』」



ああっ、思い出しました。

確かこの国には魔術師や魔力保有者の他国への移住を禁じる法律がある。

魔術師は貴重であるから他国へ奪われる事を恐れての措置らしい。

といっても交通に関してはさほど発達していない世界だから世界中を回る者は旅芸人くらいのものだ、普通に暮らす人間は自国からでない者の方が多い。

魔術師もその数の少なさから重用されるから、わざわざ他国に行く者も少ない。

問題となるのは魔術師が他国の者と恋に落ちた時だ。基本は魔術師の在籍する国で結婚し、永住する。

結婚相手の国にのみ必要があれば行く事が出来る。しかし出国期間は3ヶ月と制限がある。


まったく、魔術師の人権を無視したような法律だ。

でも、それにあまりある保護と権利を魔術師が持つのも事実なのだ。



「あ~、それで婚約?でも私はまだ魔力判定の検査を受ける年齢でないのでその法にはかからないのでは?」


「あまいですね。伯爵夫人は貴重な『癒し』の特殊魔力保有者です。魔力は血に受け継がれる事が多いのですからその娘である令嬢も法の対象となります」


「メンドクサイもんなんですね」


「しかし今のところ、御令嬢の『癒し』について王都の者は知りませんし、魔力保有者である事も報告はしていません。伯爵家の場合、御長男が魔力判定で学院に御入学されていますので御令嬢まで魔力を保持しているとは誰も思わないでしょう」


魔力はどういうわけか一人の親に対し一人の子供だけが受け継がれる状態なのだそうだ。

だから、ウチのように兄様と私が魔力を持つ事は滅多にない事なのだそうだ。

兄様が学院に入学してるものだからアラート先生も初めて会った時は私に魔力がある事など信じもしなかったって言っていたっけ。


「まあ、お相手がユーテリアス国の建国の一人ですからね。令嬢に魔力があろうとなかろうと年齢がどうであろうと国は特例として喜んで令嬢を生贄に・・・いえいえ、御結婚を祝福すると思いますよ。国交の立役者となれますねぇ。まあ、年の差はありますが合算してしまえばさほど変わらないのですから宜しいんじゃないんですか」


・・・ってしみじみ言わないでください!


「別にこんな方法をとらなくても他に隣国へ行く方法なんて有りそうなものですけど」


「短期的なものですと方法は無くもありませんが長期的となれば魔導師の件も表に出さなければなりません。50年前の出来事はまだ当時を知る者も国の重鎮に居りますし、アルシャン国も国境近くの領地は被害を受けておりますから多くの人間に知られるのはあまり良案とは言えませんね」


「ああ!それで、伯爵令嬢である立場の私とガーディが婚約となれば両国の友好になるし私もユーテリアス国に行く事が出来るってことかぁ・・・なんだぁ・・それならそうと初めから説明してくれればいいのに。」


たしかにアルシャン国とユーテリアス国は隣国でありながら50年前の出来事でまだ国交に問題があると父様達も行っていた。今回の事を機会に国交を良い方向に結べれば両国にとってもいい事になるだろうし、うん、きっとライナスの入れ知恵ですね。

急に結婚とか言い出すんだから焦っちゃいましたよ。


「まあ、昔のように家族に戻るだけなんだから考えようによっては変な人に嫁ぐよりいいですよね」


やっと、自分に納得できる答えが見つかりました。

父様はそんなことしないと思うけど、貴族や王族は政略で婚姻を決めたりする事があるといいますから。

が、先生、なんですかその残念な人を見るような瞳は。

深い溜息をつかれ人の頭を撫でまわした揚句、何やら呟いて出ていかれてしまわれました。


「・・・・・鈍い」


ってどういう意味ですか?!




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