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探究心とは厄介なものですね

「私が留守の間に随分と楽しい事になっていたようですね」


アラート先生、帰宅後第一声にソレですか・・・


あの後、母様の縄をどうやって抜けてきたのか父様の乱入によって再びの修羅場と化してしまいました。

アラート先生はレニー君の魔力の状態を見る為にタジル先生と共に男爵家へ行っていたそうなのですが、帰宅してみれば私が見知らぬ青年に抱きかかえられながら、帯刀した父様と相対している為に先程の言葉になったのですが・・・まあ、気持は分かります。


ええ!この当事者でなければ先生のように野次馬根性で高みの見物ですよ!

父様も思うところがあるのか先程ほどの殺気も無く何となく八つ当たり感を否めません。

部外者の登場によって弛んだガーディの腕から飛び降り、漸く自由になった体にほっと一息です。


「アラート先生、レニー君の様子はどうですか」


こうなったら二人は無視しましょう。

勝手に遣っていてください。


「レニー君でしたらタジル先生がよく診ていてくださるので大丈夫ですよ。そのうち床から出られるようになると思います。魔力の方も一時不安定でしたが落ち着きを取り戻したようです」


母様からも聞いていたので大丈夫だと思っていましたが、アラート先生からも大丈夫と聞くとひと安心です。



「ところで令嬢、後ろの方の御紹介は無いのでしょうか?」


えッ?後ろっ?!

嫌な予感がして振り向こうと・・・・出来ませんでした。

後ろからガーディに羽交い絞めです・・・・父様は再び騒ぎを聞き付けやって来た母様によって蓑虫になったようです。


「俺の名はガーディアル=トルクス。ユリアナ嬢の婚約者だ」


それは違います!


「ああ、ユーテリアス国建国の立役者のお一人ですか、お会いできて光栄です。」


せんせ~~~っ!!婚約者はスルーですか?!見た目の若さもスルーですか?!

ああ・・・駄目だ。あの目は「知的好奇心を優先します」と告げている。

ガーディ・・・・お前も被験者の仲間入りしたようですよ・・・守ってやれない母を許してくれ・・・


「・・・で、貴方はどちら様で?」


頭上から聞こえるガーディの声はちょっとイラッとしてますね。

まあ、あの先生との会話で和やかになる人は少ないようなんですけどね。


「私はカイゼル=アラート。魔術師です」


あ、家庭教師だという事をあえて言ってません。

ガーディは我が家に「帰ってくる」という立場のアラート先生の事を聞きたかったはずなのに意地悪です。

う~ん、先生は楽しそうですね。


「ユリ、この人とどういう関係?!」


アラート先生との会話が続かないと判断したのか矛先が私に向いてしまいましたよ。

え~と、アラート先生との関係ったって・・・教師と生徒?それだけなんだけど・・・

どうせなら意外性が必要ですか?

前々から思ってた事にしましょう。


「「研究者と被験者」」


いや!何故ハモル!!

くそうっ先生もやっぱりそう思ってたのか!


「おや令嬢もそう理解してくださってるとは嬉しい限りですね」


わざとですね!先生わざと楽しんでますね。

睨みつけてみましたがどこ吹く風のようです。


「まあ、世間的には家庭教師をしていますよ。婚約者殿が気にするようなものではないですがね。幼女趣味もありませんし」


シニカルな笑いでガーディの肩を叩くと先生は帰宅の挨拶の為、父様の元へ向かいます。

蓑虫父様もスルーのようです。



「何なんだよ。あいつ!」


本当、ナンナンデショウネ・・・とりあえずアラート先生がガーディの事を気に入った事は確かなようです。

“陣”なんぞを見せたら今以上に目を輝かせて付きまとう事は明確です。


「あー、アラート先生は去年から私の魔術の家庭教師をしてくれているの。『探索』の特殊魔力を持っているせいか珍しい魔力に目がないようで・・・まあ、がんばってね」


アラート先生と同じようにガーディーの肩を叩き、諦めのようなため息とつく私にガーディの顔は困惑気味です。

まあ、そのうち私の表情の意味も己の身で理解してくれることでしょう。

先生の『知りたがり度』は半端ないのですよキミ。

この1年勉強と共にどれだけ大変だったか・・・


結局、前世の事をぶっちゃけてからは、納得したのか詮索される事は無くなったけど。

今にして思えば母様達も私が転生者だった事を知ってたのだから無駄な努力をしてたんですよねぇ・・・


あ・・・・母様と談笑を始めた先生から嫌なオーラが立ち始めました。

母様、話してますね・・・留守中にあった事の顛末、確実に話してますね。

振り返った先生の目を見るのが怖いです。

もう体から滲み出るオーラだけで十分わかりますから・・・“陣”が見たくて仕方がないって文字が書かれています。


「詳しい話は伯爵夫人からお聞きしました。是非私にも“陣”をお見せいただけませんか?」


ああ、目を輝かせてガーディに迫っていきます。

とりあえず私に迫ってこなかったのは少女であるとかそういう事ではなく数の違いでしょうか・・・ガーディの方がより興味を注がれたのでしょうね。あんな登場してしまったのだから自業自得ですね。


「ちょっ・・・何しやがる!!はなせ~~」


うん、先程私がガーディに言った言葉と同じですね。身をもって知るのはいい事です。

とはいえ、先生。シャツを剥くのはやめましょうよ、大の男二人がシャツ一枚を廻り攻防する姿は見ていてあまりいいモノではないですよ。


「ユリ!見てないで助けて!!」

「無理!・・・諦めた方が早いよ」


傍観を決め込んできた私に助けを求めてきましたが、いつにない情熱をもった先生を止めるのは無理ですよ~


「分かったから放せ!服ぐらい自分で脱ぐ!」


はい、ガーディーの負けのようです。案外早かったですね。

上半身裸になったガーディの背中、両肩に記された“陣”を先生は嬉々としながら観察を始められたようです。


「ほう・・・『時』『空間』『精霊』に関する文字、それに・・・『使役』『異界』『逆行』。こんな組み合わせの“陣”は初めて見ました」

「---っ、わかるのか?」


先程の攻防に精神的に疲れたのかぐったりとしていたガーディですがアラート先生の言葉に驚いた声で顔を上げます。


「ええ、“陣”に関しては色々と調べましたよ。“陣”を消失させる事は魔術師なら誰でも1度は挑戦しているはずですしね」


魔導師の使用する“陣”は一度その形を作られると2度と消える事は無い。

少量の魔力と贄それがある限り“陣”は発動し続ける。

例え凍結したかのようにみえた“陣”でも再び贄を与えれば同じように発動してしまうのだ。

魔術師たちは“陣”を消そうとしたけど、どんな方法をもってしても消失する事が出来ないのだそうだ。

だから、今は“陣”を封印する事で対処しているとアラート先生からは教わっていた。

“陣”の消失は同じ魔力を持つ魔術師の責務であると・・・


「この“陣”を一目でそこまで読みとった人間は初めてだな。アンタならこの“陣”の消失が可能か」


「さあ・・・どうでしょうね。“陣”に関しては未知数な事が多い。“陣”の性質を分かって駆使している魔導師にあった事がありませんしね。」


50年、ガーディ達は“陣”について色々と調べたそうだがなかなか思うような成果を得る事は出来なかったのだそうだ。

魔導師が生きている可能性が出てきた今、”陣”を消失させてしまう事が必要ですよね。


でも、いいですか、ガーディ・・・・先生はもしかすると消失方法を発見してくれるかもしれませんが・・・それまで実験体は決定になってしまいますよ。

無茶な要求されても知りませんよ~~。

私も含めて・・・・・・ですね。




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