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力の使い方とは難しいモノです

そうか、村はそうして無くなったのですね。

私の記憶では魔導師が現れたのは私の印を封印してくれた魔術師レイドルが王宮の情報を得る為、村を後にした翌日だった。

魔導師はレイドルの留守を狙ってこの村を襲いに来たのだろう。

レイドルはレイティの祖父であり元々は王宮魔術師でかなりの魔力を持っていた。

王の横暴ぶりを何度も諌めたが聞き入れられず、職を辞しカンズ村へ隠居した。

王都に居ては唯一の肉親である孫娘の命も危ぶまれたから、王都から遠く離れた地に結界を張り隠れ住むこととなった。

その時に同じ思いを持ったサイラスはガーディをレイドルに預け己は王の暴挙をこれ以上させない為、王都に残ったのだそうだ。

カンズ村はレイドルが孤児となった子供達や反王制を唱え命を狙われた者を保護しつくった村だ、ライナスも両親はすでに亡くレイドルが引き取っていた。

だから私のようなものも村人は暖かく迎え入れてくれた。


食料も生活用品も十分とは言い難い貧く小さな村だったけど皆が家族のように暮らす良い村だった。


「辛い話をさせてごめんね」


いつの間にか舞台装置を人形を片付けたガーディに近づくと座る彼の頭をぎゅっと抱きしめました。

本当は昔のように体いっぱい抱きしめてやりたいのに、この小さな体ではこれが精いっぱい。

あんな風に人形劇で物語のように話を聞かせてくれたけどガーディにとってあの村はとても大切な村だったと思う。

父親と離れ離れになりながらも村で精一杯生きてきたのだから。


ユリとして初めてであった時のガーディは私の事を受け入れなかった。そりゃあ、ずっと心配しながら待っていた父親が突然見知らぬ女を連れて帰ってきたら反発したくなるもんだよね。

漸くたどり着いた村で私がまずはじめに受けたのはいたずらっ子の洗礼だった。

それはもうありとあらゆる悪戯の数々でライナスとコンビを組んでの仕掛けはかなりくるモノもだった。

当時の私は子供の悪戯だからと大目に見れるほど心に余裕がなかったから、かなり意地になってガーディ達に相対していた。今思えばかなり大人げなかったよなぁ・・・


ガーディとライナスの悪戯(朝起きたら頭の周り中に蛙が合唱していたりとか)に私がお仕置き(二人を縛り付けて木に吊るしたりもしたっけ)をするのをレイティが涙ながらに二人をかばったり、私に協力してくれた事もあったっけ・・・そんな毎日をサイラスも村の人達も「なんだか行事化してきたよな」といって笑ってた。


たわいもない日常、この世界に来て初めて心から笑っていた。

もう戻る事の無い----平凡な村の風景。


「ユリ?」


ガーディに声をかけられ我に帰れば心配そうな瞳にぶつかってしまった。

いかんいかん、慰めようとしてこちらが心配されてどうするんだか・・・


「俺は大丈夫だよ。もうあれから50年以上たってるんだから。それよりもユリの方が心配」


「あ~~、ごめんね。私も大丈夫だと思ってたんだけど・・・」


転生した時、由利の人生を後悔する事、なつかしむ事は止めようと思った。

新たにユリアナの身体を得て、違う人生を送る事になったのだから平凡な幸せを手に入れようと。

唯一の気懸りだった子供達は一国の王になっていたから、いつか遠くから眺める事が出来ればと思っていた。

それが・・・こうして再びガーディに会い、ユリアナの身体に刻まれた“陣”を目にし由利としての記憶、感情が様々と蘇ってくる。

心の奥底に仕舞い込んだはずの感情・・・魔導師に対する怒り・・・そして憎しみ。


この世界に召喚されてからずっと心に巣食っていた感情。

------いけないです、こういう感情は一度溢れ出すと歯止めが利かなくなってしまう。


「それから皆はどうしたの?それにレイドルは?」


心が闇に引きずられる前に・・・気持ちを切り替える為にも他の子たちの事やレイドルがどうなったのかも聞かなくては。


「ああ、じーさんは魔力を感知して慌てて戻ってきてくれた。俺は自分の中の“陣”と魔導師のつくった“陣”が暴発したらしくって1週間くらい生死をさまよったらしい。じーさんの魔術は俺達には効かない体になってて大変だったって言っていたよ。」


またも笑顔で酷い状態のことをサラっと・・・

おかーさんは君の痛覚に不安を覚えますよ、我慢はしないでください。

------でも


「大変だったね・・・」


ガーディの赤い髪を再び撫ぜながら、他にかける言葉がなかった自分に反省です。

「巻き込んでしまってごめんね」とか「私の所為で重荷を背負わせてごめんなさい」とかそんな謝罪の言葉は駄目だ。

そんな事を言葉にしてもガーディが歩んだ道が変わる訳でもない、私が謝罪したらただ私の心が軽くなるだけ、それよりもこれから私が何が出来るか考えなければね。


「ライナスとレイティが支えてくれたから、大丈夫だった。同じ“陣”を体に持つ者同士の魔術は効くみたいだ。レイティが精霊を使役できるようになったからその力を使ってくれた。-----それにユリもかえってきた」


再びガーディの腕の中に抱き込まれてしまいました。

これは、あれですね。一度失くしてしまったモノが戻ってきた時に再び失くさない為に必死になって抱え込む心理です。

なんだかクマのヌイグルミにでもなった気分です。


「“陣”のちから・・・俺には『時』を操る力、ライナスには『空間』、レイティには『精霊』。でも、1つの“陣”が分散された力だから思うようには使えなかったけどね。」


「その一部も私が持ったままだったから?」


「ああ、多分それも要因だったと思う。ユリが持っていった力『癒し』」


「それでも、一国の王を滅ぼす力があったから、いま、英雄王としてライナスたちは居るんでしょう?」


そう尋ねればガーディは苦笑しながら、


「あれはほとんど作り話だよ。レイドルが仲間を集め、指揮した。俺達に人並み以上の力があったのは本当だし、それなりの成果もあったけど。人を導いたのはレイドルの方だ。」


王を倒し、新たな建国をとなった時、レイドルはガーディ達に新たな王になるように進言した。

共に戦った人々はガーディ達の魔術に畏怖と羨望を見せた。

ガーディ達の力を崇拝するうちはまだいい。だがそれが恐れに変わるかもしれない・・・力は人の心を惑わすから、身を守るためにも王となり力を国の為に使うようにとガーディ達を説いたそうだ。


「そうして話し合いの結果、ライナスが王座に着いたってわけ」


それからは、国の立て直しに必死だったそうだ。

良識ある人間は前王にことごとく処刑されていたし、王は政治の在り方を知らない子供、それでもレイドルを始め少数残った識者の協力を得て人々の暮らしは良くなっていったそうだ。


いまはもうレイドルは居ない。国が落ち着きを見せ始めた頃、鬼籍に入ったそうだ。




「でも、“陣”はガーディの身体に3つあるよね。どうして?」


ずっと気になっていたのです。

3人に分かれたと言っていたのにすべてガーディが身に宿しているのは何故?


「俺達も“陣”の事は色々と調べたんだ。それで、こうして“陣”の力を移す事も出来るようになった。俺達がそれぞれで持つよりもひとつに戻そうとしたんだ。それで、3つの“陣”を宿した時に分かった。“陣”がまだ他にユリの元にある事、元の1つに戻る為に新たな身体でこの世に戻る事を・・・」


「それが・・・この“陣”?」


「そう・・・それに・・・多分、これでも“陣”は戻らない。もうひとつあるみたいだ」


ガーディは私の胸元の“陣”に触れながら顔を苦しげにゆがめながら呟いた。

もうひとつがどこにあるか-------私にもわかります。そうであって欲しくない・・・けど。




「------魔導師は生きている。俺と対峙した時に『時』の“陣”の一部がアイツに渡ったんだ」






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