詳しい話は密室で?
とりあえず父様の事は母様に任せ、ガーディを2階の客間へと案内します。
客間にはベットとクローゼット、お茶を楽しめるようにテーブルとソファが置いてある。
お茶も先程中途半端になってしまったから別のものを用意しようと思ったのだけど、ガーディが必要ないというのでそのままソファへ腰を下ろした。
勿論、今度はちゃんと向かいの場所を確保しましたよ!
「素敵な御両親だね。ユリが幸せに暮らしてたのがよく分かる」
「うん、とっても素敵な人達なんだよ。私に由利の記憶がある事も受け止めてくれて、家族として受け入れてくれてる」
ガーディは静かに笑いながら私の話を聞いてくれる。
促されるまま、今迄の生活の事、魔術の授業を始めてる事、『癒し』の力を使った事などを話した。
私の話に頷き、時には質問してくるガーディの顔は大人の顔で、昔の面影はうすれ、時の流れを感じずにはいられなかった。
見た目は若くとも、永い年月が経っているのだと----
「ガーディはなんで私が転生する事を知ってたの?」
現れた時、漸く戻ってきたと言っていた。
私が転生するってことを知っていた事になる。
でも、何故生まれた時に現れなかった?
私は生まれた時から記憶があった。
-----違うのは、『癒し』を使った事・・・・そして“陣”が現れた事。
「ユリが転生するのは分かってたんだ。でも、それが何時で何処に生まれ変わるかまでは分からなかった。探し出すにも反応するモノが現れなければ分からないし」
「反応するモノ・・・っコレ?」
咄嗟に胸元を押さえてしまう。
「そう、あの時俺たちの足元に描かれていた“陣”。今は4つに分かれているが元々は1つの“陣”なんだ。ユリが魔導師に殺されてからの話になる。・・・・話してもいいか?」
こちらを気遣うように辛そうな瞳で尋ねてきます。
まったく、あの時泣き叫んでいた子供と同一人物とは思えないほどの成長ぶりです。
皆を巻き込んで守る事も出来ず、さっさと死んでしまった私の事なんてそんなに気遣う事は無いのに・・・ガーディ達の方があの後もきっと苦労してきたのだと思う。
いつまでも過去に脅えるのではなくて、あの時に起こった事に向き合わなければならない。
陣の発動、ガーディ達が得た力、すべてが由利の「死」が引き金だったのならなおさら・・・
「うん、ちゃんと聞かないとね。話して・・・ガーディ」
******
------あの日、魔導師の魔術の刃はユリの心臓を貫いた。
“陣”の上に彼女の血が飛び散り、反応するかのように“陣”は青白く光り始めた。
黒いフードを目深にかぶる魔導師の表情は見えなかったが、低くしわがれた笑い声が耳についた。
「漸く、私の願いが叶うのだ。永きにわたる時を待ち続け、ようやくこの力が手に入る・・・これで」
青白く輝く“陣”は空中に浮き上がり、引き寄せられるように魔導師の元へ動き始めた。
しかしそれを遮る光が上がった。
ユリの身体に取り巻くように光る淡い金の光、その光の粒が“陣”を包み込み砕いた。
いや、砕けたかのように見えた“陣”は小さな3つの青い光となって、ユリにすがる3人の子供達の元に舞い降りた。
青い光は子供達に吸い込まれるように消えていった。
「かえせ!それはオレのものだ!」
魔導師はガーディアルの胸ぐらを掴み彼の中に消えた“陣”を取り出そうと、枯れ木のような指をガーディアルの胸に突き立てた。
魔導師の指先から別の“陣”が現れ、それに応えるかのように彼の胸元が青く輝き始めた。
「やめろ~~!」
ガーディアルは魔導師の手に渡すまいと抗うが、どうする事も出来ずただ、叫ぶばかりだった。
だがその時、体内から浮き出された“陣”はガーディアルの声に反応するかのように輝きを増し魔導の“陣”を粉粉に砕くと、一層輝き始めた。
“陣”はガーディアルの魔力を吸収しながら輝きを増しているようであったが、彼にはそれを止めるすべがなかった。
ガーディアルの意思に反し、光は大爆発を引き起こした。
その威力は村を丸々のみ込み、爆風と共に辺り一面荒地と化し魔導師はおろか、塵一つ残されてはいなかった。
唯一、残されたのは“陣”の力に守られた3人の子供だけであった。
*****
ガーディにとって辛い話をさせてしまった。
私の胸の方が潰れてしまいそうなほど辛い話だった・・・だったのだけど・・・何故、また人形劇なのでしょうか?
しかも今度は、操り人形で細かな動きまでOK!、魔術まで使って光の効果演出って・・・ほんと、大道芸でやっていけそうな完成度でしたよ。
終わった後のやり遂げた感のある笑顔に拍手を送るべきか、一瞬迷ってしまいましたよ。
-------でも流石に拍手は送れませんね。はい。




