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魔獣対策は怠りなく

父様達が出かけられてから母様は自警団の人達と対魔獣用の武器を製作中です。

自警団といっても元々は農民なので武器には縁のない人々ばかりです。

昔は国の周りの情勢も安定してなかったから国民も二男、三男が徴兵されていたが今は平和的な国交が開かれ国の兵士は徴兵制から志願制になったそうだ。

王都や国境付近に兵士が配備されるのみで各領地はそれぞれの方法で領地内の統治を行うことになっている。

伯爵領(ウチ)では各村から志願してきた若者に自警団を組織させ、各村の警邏や緊急時の招集、行動を自警団の判断で行える権限が与えられている。

といっても辺境にある田舎の領地なので極悪犯罪者が来る事は無く、殆どが警邏の途中、足の悪いおばあちゃんの代わりにお買いものや壊れた窓の修理をしている彼らをよく見かける。

森が近くあるので家畜を狙ったオオカミや時折お腹をすかせたクマが現れる事があるらしいが退治するのも彼らの仕事である。

のんびり気質の村々のせいか若者たちも気の良い者が多い・・・うん、いいことだよね。


武器を使う事もそういった獣相手が多いので自警団の常備武器は剣ではなく弓矢と身長と同じくらいの長さの棒を携帯している。

獣の動作は素早いから、なれない刃物を振り回すよりは安全な位置から狙える弓や長めの棒で威嚇した方が森へ追い返せる確率は高い。

棒術に関しては父様が自警団の若者たちを訓練しているからかなり腕の立つ者もいるくらいだ。


今回も鋼で鍛えた矢じりに母様が魔術で強化を行っていく。

母様は周りに集められた『源』をひとつづつ丁寧に組み合わせ強化の魔術を作り上げる。

母様の手元に造られた文字や数字のソレはまるでレース編みのように規則正しく編み込まれ矢じりの中へ溶け込んでゆくのが視える。

私も母様の協力をしたかったけど・・・・やはりさわる事も出来ませんでした・・・くすん。


子供の私では他に出来る事も無いので母様の横で大人しくしている事しか出来ません。

でも、ちょっと気になる事があるんですよね。


「母様、魔獣は魔術師を襲うって聞きました。それなら母様やアラート先生がいるこちらに現れるんじゃないんでしょうか?それともクディル男爵領にも魔術師がいらっしゃるんですか?」

「ええ、正確には魔術師ではなく魔術師候補の子なの。レニー君って言って今年6歳なのだけど魔力が放出してしまっているの」


母様の話ではレニー君は数ヶ月前から突然大量の魔力が現れだしたのだそうだ。

魔力の発現は6歳ころから少量ずつ現れるのが普通なのだそうだ。

7歳の時点でも魔術を行使できるほどの魔力はまだ現れず体内に魔力があると判定機によってわかる程度。

私の場合もかなり特殊だったらしいが母様の判断のおかげで体に対する負担は少なかったそうだ。

母様に感謝です。

でもレニー君の周りには魔術師の血統は無く、いきなり現れた魔力にレニー君自身もどうすればいいかわからなかったようだ、制御できない魔力は次々と『源』を集めだし滅茶苦茶な『構築』そして暴発してしまったらしい

家の屋根が吹っ飛んでしまったそうだからかなりの力があるのだろう。


そんな未知なる力に両親は息子を恐れた。

こんな片田舎の村に住んでいては魔術師に出会う事なんてまずない。

隣領地の母様も魔術師ではあるが『癒し』の魔術の為かあまり魔術師として見られていない部分がある。

それに潜在魔力を持つ子供は7歳に国民全員に行われる魔力判定により王都に集められるから例え暴発を起こす子がいてもそれは学院内での事となる。

嵐をおこし屋根を吹っ飛ばす子供を魔術師を知らない両親が恐れるのも仕方ない事なのかもしれない。


両親は息子が呪われていると老男爵に訴えてきたそうだ。

老男爵はレニー君に魔力があり暴発している事を説明したが両親は信じない。老男爵自身も魔力がある訳ではないので確信を持って説明できないのが要因だったという。

そこで老男爵は父様に相談に来たそうだ。

母様が魔術師である事とアラート先生が私の家庭教師として伯爵領に居る事を知ったからだそうだ。


父様方で相談した結果、アラート先生と父様がレニー君に会いに行く事になった。

アラート先生は両親の前でレニー君が暴発したものと同じ魔術を使って見せ、レニー君が魔力保持者であり7歳になったら王都の魔術学院に入学しなくてはならない旨をつたえたそうだ。


しかし入学までにはまだ間があり、このままではまた暴発しかねないというのでレニー君は男爵家で預かりアラート先生が魔力の暴発を抑えるための教育を行うことになったらしい。


そうか、それで最近先生が行方不明になる事が多かったのですね。

てっきり薬草辞典の面倒臭ささに逃げてるのかと思ったのですが仕事だったんですねぇ。

私にも教えてくれればよかったのにぃ。

レニー君に会ってみたいですよ。


不満タラタラに母様に訴えてみれば。


「ユリアナは魔術を恐れている節があるから彼の魔術を視て余計に恐れを増長させてしまってはいけないからってアラート先生のご配慮だったのよ」


恐れを増長させる程の魔術って・・・・どんだけ凄いんですか?

やっぱり1度会ってみたいですね。



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