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見学する事は大事ですね

今日は久々に勉強はお休みです。

母様が月に一度行う治療奉仕に付き合うことになりました。


私が生まれる前は領地や近隣の村の住人を対象に『癒し』の力をつかい無償で治療を行っていたそうだ。

しかし生まれた娘が高熱で寝込むようになり、娘の看病に集中するため奉仕は暫く休んでいたそうなのだ。けれどアラート先生がやってきてからは寝込む事も無くなった為、1年前から月に一度伯爵家の近くに建てられた診療所で奉仕を再開しているのだ。

伯爵家領地(ウチ)には診療所がある。

これは母様が伯爵家に嫁ぐにあたって建てたものだそうだ。

今は医者が2人いて診療にあたっており重病人の場合は母様に連絡が行くようになっている。

伯爵家管理なので領民は基本的に無料、近隣の住人にも基本薬剤代くらいしか貰わないのでいつも診療所は患者でいっぱいなのだ。

アラート先生に言わせれば医療行為が無料なのは珍しい事なのだそうだ。

確かに先生の授業の中でも医者の数は少なくほとんどは王都近隣に集中していて、しかも高額の治療費がかかるとか。



「令嬢には夫人と同じ魔力がある筈ですので夫人の『癒し』の魔術を見るのはいい勉強になると思いますよ。己が対象なのと客観的に視るのとはまた違いますからね」

「はい、先生。しっかり勉強します。・・・ところで先生、この薬草の成分教えてください」

真面目ぶった生徒顔で答えた後、キラキラお目々でおねだりです。

もう5歳の令嬢ぶりっこはしませんが教えを請う時は別ですネ。

先生のツッコミもかるくスルーしております。

アラート先生は「またか」とため息交じりに面倒臭そうな顔をしながらも机の上の置かれた薬草を手に取り一つづつ成分を教えてくれます。こちらはスケッチした絵の横に成分を書き込んでいくのです。

先生の特殊魔力を聞いたときこれはもう利用しない手はないっ・・・と思いましたよ。

この力があれば薬草をもっと有効利用できるし、新しい薬効の草花も見つけられる。


いま領地にいる医者、タジル先生もちゃんと王都で医学の勉強した、良い先生なのだけれこちらの医療技術は少々心許ない。

ただでさえ薬だけが頼りのような医療行為なのに薬剤の種類も、知識もやっぱり足りないから患者さんの治療が長引いたり、悪化してしまったりする。

だから薬草辞典のようなものを作ろうと思った。

色々な効能の薬草がわかれば、組み合わせによって患者にあった薬を処方したりできる。

その為には医者が薬草について知らなければならない。

アラート先生の力はまさに渡りに船なのです・・・あれ?使い方が違うか?

せっかく数年はこちらに家庭教師として滞在されるのだからしっかりと利用・・・いや協力願わねば。


タジル先生も齢60歳の貫録なのか5歳の令嬢の戯言と笑うことなく協力してくださっています。

おかげでかなりの薬草を採取出来て処方の幅も広がっているようです。




   *****



母様の治療行為は基本的に重病人のみなのです。

医者の治療行為でも治らない病や怪我の患者を『癒し』ていきます。

その為人数もそれほど多くはありません。

母様達のような特殊魔力は普通の魔術と違って己の魔力のみを使用し術を行使するのだそうです。

ゆえに魔力の消費が激しい、魔術師にとって魔力は魂の源であり魔力の枯渇は魂の死を意味する。

その為に母様は月に1度病状によるがせいぜい4、5人の患者しか診る事が出来ない。

『癒し』の魔術師の殆どがそうらしい。


今日の患者は下半身不随の8歳の男の子、高熱が続き薬剤が聞かなかった女性、毒虫に両目をやられ視力を失った男性などさまざまだ。

母様は一人一人の症状を視て魔術を使う。

特殊魔力を持つ者はそれぞれ魔術の行使の仕方が違うのだそうだ。

母様の場合は歌を歌うことによって『癒し』が行われる。

魔力をつかって視れば母様の歌は光の粒になって患部を優しく包み込んでいます。


「母様の歌に魔力が宿って、患者さんの細胞を修復してゆくのですね」

「令嬢には視えますか?」

「え?金色の光の粒が視えますけど、先生には視えないんですか?」

「ええ、視る事は出来ません。多分同じ属性の魔力の持ち主だけが視る事が出来るのでしょうね」


そんな会話を先生としているうちに患者さんはみるみる回復していきます。

下半身不随や失明なんて現代医学でも治療困難なものを母様の魔術は治す事が出来るようです。


「『癒し』の魔力ってこんな病まで治せてしまうんですね」

自分達が今まで努力しても治せない病が『癒し』によって治ってゆく、その力の凄さに敬意と恐れが混じり体の震えが止まらない。思わず呟いてしまった私に苦笑しながらも先生は優しく頭を撫でてくれた。

「そうですね、必要以上に恐れる必要はありませんが魔術も万能ではありません、すべての病が治せるわけではないと思いますよ。しかし傍目には奇跡が起きたように見えます。だから貴族どもは『癒し』の魔術師を己の手の中に入れようと躍起になるのですよ。『癒し』の魔術師がこうして一般人の治療を行うなんて此処ぐらいでしょうね」


貴族嫌いな先生はいつも皮肉めいた笑みを浮かべる事が多いけど、今日はとても優しいお顔で微笑んでいました

母様のように魔力を使えるようになりたいとは思いますがやはり心の奥底は魔力を恐れているのかもしれませんね・・・・







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