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case.7 美人占い師 天神レイラ

 午後十一時、その女はやってきた。嫌な目つきをしているね。サングラスしていてもアタシには分かるんだよ。どれ、声をかけてみるかい。


「ちょっと。そこのアンタ」


 おやまぁ、呼びかけただけで「待っていました」と言わんばかりの顔をして。……フフフ、そっちがその気ならお相手してやろうか。


「はい? 何か御用でしょうか?」


「……アンタ、『店に客が来ない』って顔をしているねぇ」


「あら……。私が客商売しているってどうしてわかるの?」


「こんな夜中にサングラスかける奴は陰気な商売人かタモリくらいさ」


「はぁ……。差別的で失礼な人ね」


「フン、あいにくこういう性分でね」


「でも、それなら話が早いわ。……実は近所に迷惑な店を開く同業者がいてね」


「へぇ、そうかい」


「人をますます混乱させて不幸に貶める与太話を押し付けるのよ。本業もロクにしないクセにね。おかげで最近じゃ地元の人たちも薄気味悪がってめっきり人通り少なくなったわ」


「フンフン、そりゃあ大変だねぇ」


「あなた、占い師なのよね? 丁度いいわ。こんな場合どうすれば良いと思う? その同業者に何て言えばいいかしら?」


「さぁね」


「さぁねって、あなた占い師なんでしょ。お金ならいくらでも払ってあげるから、ちょっと占ってみせてよ」


「アタシは相手を選ぶんでね。いくら積まれてもアンタを占う気は無いね」


「はぁ? 何よその言葉。酷い占い師……」


「フン、目くそ鼻くそを笑う」


「何よそれ! どういう意味よ! はぁ~あ、そんな態度じゃ客も来なくてさぞお金にも困っているんでしょうね~。お気の毒さま!


「こっちにとっちゃ目の毒って所だね」


「は?」


「アンタの腹の内が丸見えだからさ」


「……ハッキリ言いなさいよ」


「フン、同業者の様子を伺いに、変装までしてノコノコやって来た割にその程度かってことだよ! テレビでも有名な若手美人占い師、天神レイラ!」


「き……気付いていたのね。往年の大映テレビ制作ドラマよろしく、説明台詞っぽく言ってくれるじゃない! このスットコドッコイ!」


「ス……。せっかくの機会なんで言わせてもらうよ。大体ね、裏通りで店を構えるアタシなんて表通りに店を構えるアンタ達には関係ないだろうが! えぇ? このオタンコナス!」


「オ……。じゃあこっちも言わせてもらいますけどね! 関係大有りでホントに迷惑なのよ! 裏通りとか表通りとか以前にこの街から出て行って頂戴! 客足が遠のいて私たち表通りの占い師たちはいいとばっちりよ! とにかく、あなたは協会の除名処分だって受けているんだから早く店をたたみなさいよ!」


「協会? フン、あんたが自分の都合の良い人選でかき集めた自称占い師協会のことかい? 笑わせてくれるね。テレビや雑誌、メディアにうつつをぬかすバカタン占い師どもの戯れに付き合っていられるか!」


「バ……。汚い言葉ね……そんな言葉で人を罵れる資格があなたにあるの?」


「無いね!」


「や、やけにあっさり……。ま、そりゃそうよね」


「ただし、人を惑わして金儲けする奴よりはマシだと思うけどね!」


「……何よそれ!」


「別にアンタのことを言ってるワケじゃないさ。そういう自称占い師が蔓延っちまってそっちの方が問題だって言ってるのさ!」


「う、まぁ確かにその話は否定できないわ。でもね、私はあなたみたいな占い師の暗いイメージを払拭する為にテレビに出て行ってるのよ! お金儲けの為なんかじゃないわ」


「へぇ~暗い? ネットの掲示板で誹謗中傷しているアンタが言えたことかい!」


「なんでそんなことあなたに分かるのよ! 証拠出しなさいよ! 名誉棄損で訴えるわよ!」


「まったく……。心当たりある人間しか吐かない台詞を堂々と……。 アタシに言いたいことがあるならコソコソやってこないで堂々と口で言えばいいのさ! ほら! 言いなさい! 今晩の夜食のメニューから教えてやろうか!」


「聞きたくもないわ! もういやっ! 帰る!」


「あぁ帰りな! そうだ、一つ言っておいてやるよ! アンタごときが『レイラ』なんて名乗るのはエリック・クラプトンに失礼だってね!」


「何よそれ! 意味わかんない! このスットコドッコイ! ばかぁ!」


 おやおや、普通にしてれば綺麗で可愛いのに睨みをきかせた顔をして。フフフ、いつでも相手になってやるわよ。レイラ、またいらっしゃい……。


――私は女占い師シヴァ。毎日ここで待っているわ。さぁ、いらっしゃい。……ただし、同業者には容赦しないわよ――


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