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相談部田中康宏

時系列としては二年目の入学式の二日後です。

現代編は1話完結です。

相談部


 康宏こと俺は相談部室の相談者をしている。今は俺以外この部室には誰もいない。二年目が始まって二日目、春樹は家の用事で早帰り、祐二は正体不明の休み、その他女性陣も部活で休み。つまり俺一人ってことだ。そして対面にはものすごい美人が!うきうきが止まらないぜ!俺の熱いビートが(ry。コホン、まあそれはおいとこう。


「ではみちかさん。どういったご用件ですか?恋愛相談なら喜んで承りますよ」


相談者は辻沼(つじぬま)みちか。2年だ。背は普通だが容姿がとても良い。くりっほどではないがはっきりした大きな目。そして腰までのロングヘアー(黒)。この学校でも上位に入る美人だ。まあ椿さんほどではないが。


「はい。元彼がしつこいんです。私はもういいってはっきり断ったのになかなかうなずいてくれなくて。ですからどう対処したらいいのか分からないんです。」


元彼氏持ちかぁ。まてよ?これ助けたら俺この娘にとってのヒーローだよな?そうすれば、康宏さんありがとう!私と付き合ってください!、ってなるんじゃね?だよな!よっしゃあ俄然やる気出てきたぜ!だがその前に大切なことを確認しなければ。


「元彼氏さんとは性交渉の経験は?」


そう、これでノーならゲットするしかない。


「いや、そこまではしてない・・です。何でこんなこと聞くんですか?」


良かった、してないんだ。しかしまずい、怒っちゃったか?いや康宏ポギャブラリーから何か良いのを探すんだ!テケテケテケテケ・・・ありましたよ。


「これは重要なことなんです。性交渉にこだわってよりを戻そうとする輩もいます。これは捜査ですから。」


決まった!これなら文句あるまい。


「はぁ、分かりました」


さて次だ、元彼の名前を知らないと何も始まらない。


「では、元彼さんの名前を教えてください」


「ボクシング部の安藤(あんどう)(たける)です」


まずい!あいつは女性関係で何かとスキャンダルがある色男じゃないか!だからといって実力を伴っていないわけではなく部内ではもっとも強いというあいつか!!俺に解決できるのか?いや、男康宏。困っている女性を放っておいてたまるか!


「どのような方法で迫られているのですか?」


「電話だとか・・・あとはメールとか」


「毎日のようにかかってくる?」


「・・・はい」


なんて野郎だ!ゆるさん!だがこれはなんとしても言葉で解決せねばなるまい。殴り合い?勝てるかボクシング部相手に!


「メールアドレスなどは変更しなかったんですか?」


「したんですけど・・・私の友達から聞き出してくるんです。もう・・・怖くて」


ふぅ。許せんな。男として、女を苦しめる野郎は俺がぶっ飛ばす!!そしてラブラブ!!


「分かりました。では話を付けてみましょう。では行きましょう。危なくなったら警察呼んでください」


こんなところで死んでたまるか。まあ警察は最終手段だ。話し合いで平和的に解決してやろうではないか。




ボクシング部、部室


汗のにおいが立ちこめるその異空間に、俺は辻沼さんを伴って中に入ろうとするのだが、いまいち入るのが怖い。いわばアメリカで言うハーレムだ。女関係じゃなくて地名の方ね。そんな感じで入った途端フクロにされそうで怖い。ほらあれ、うんこ座りしてタバコ吸ってるよ!スタミナ命じゃないのかよおい!だがここで縮こまってる場合ではない!祐二ならどうするだろうか?突っ込むだろう。ならば俺だってそのくらいの勇気はあるはずだ!


「ご用改めである!!みちかさん、さあ」


部員の目が一斉に俺の体に集まる。

俺は辻沼さんの手を取りボクシング部の部室を進む。なぜ呼び捨てにしたかというと今だけは彼氏を名乗った方が良いと思ったからだ。


「なんの用だてめぇ?」


一人が近づいてきた。一応祐二対策にある程度の武術はやっているがここで使えるかどうかは分からない。少なくともこういうときは平和的解決が一番。


「安藤剛という者を探している。みちかの彼氏の田中康宏という者だ」


「部長!!みちかの彼氏とか言う奴が来ましたぜ」


「なんだと?」


そう言って出てきたのは見た目はとてもイケメンだが、何か違う。負のオーラが出ている奴だった。


「(あなたこんな奴と付き合ってたんですか)」


俺は小声で辻沼さんに耳打ちする。


「(最初は惹かれたんです。でも怖くなってきて)」


なるほどな。若き故の過ちか。


「おやおや、みちかじゃねえか。また俺とやり直しに来たんだな?」


みちかさんは強く言い放つ。


「あなたとは今後一切の交流を断ち切ります」


待ってくれ、そんなこと言ったら俺の命が・・・あ、こっち向いてきた。

予想通り俺は胸ぐらをつかまれた。苦しいぜ。


「おい、お前が今の彼氏って奴かよ。みちかはよぉ、俺のもんだ。分かるか?」


なんという自己中。


「ナルシスト乙www」


やべ、つい口が滑って・・・


バキィ!と腹を殴られる。実際効果音はないけどね。なんて早く重いパンチだ、だが祐二のと比べればたいしたことはなかったな。あいつのパンチ痛かったなー。


「ぐふ・・・」


やっぱりパンチはパンチだ。痛くて立てん。


「康宏さん大丈夫ですか!!」


駆け寄ってきてくれるのか、健気な子だなぁ。


「大丈夫だ、問題ない」


俺はまだここで死ぬ定めではない。


「うら!」


俺はゆっくりと立ち上がる。


「みちかは・・俺の大切な人だ。ものなんていわせねえ!人をなんだと思ってやがる!」


コイツにはつくづく腹が立つ。なんだ偉そうに。しかも許せねえ、こんな健気な人をここまで追い詰めやがって。でも殴り合いはいやだからどうしようか。つい売り文句を言ってしまった。まだフォローできるだろうか?


「ああ?コイツは最初から俺のモンなんだよ。分かるか?お前はさっさとみちかおいてこっからでていきやがれ。さもないと・・・分かるな?」


止まらないよコイツ。さてどうしよう


→戦う

 殴り合う

 逃げちゃ駄目だ

 俺、参上!


どの選択肢も行き着く先は同じじゃねえか。


「みちかはお前のせいで悲しんでんだ!お前のせいで追い詰められてんだ!そんな奴がみちかを彼女呼ばわりする資格はねえ!!」


「康宏さん・・・!」


結局殴り合いになるんじゃないかと思ってたよ。それが避けられそうにもないね。


「だったらよう、ボクシングで決めようぜ?どっちがみちかの彼氏にふさわしいかをな」


向こうの土俵で戦うのか。


「それじゃ不公平だ、もう一ラウンド俺の方でセットさせてもらうぞ?」


「いいだろう、なんだ?」


「クレーンゲームだ」


ボクシング部一同が大笑いする。ふ、なんとでもいえ。俺はこれでも「田中クレーン重工」と呼ばれてるんだぜ。


「へ、その前にボクシングで気絶させてやるよ、おらグローブだ。あがれ」


さて、祐二は言っていたな。「相手のパンチはよけるのは簡単だ。いや、簡単になる。どんな人間にも予備動作はある。ゲームと同じさ、予備動作で相手の動きを読み、よけるんだ。

それを見切ればどうってこと無い。後はそれを戦闘中に冷静に判断できるか、だ。」と


やってやろうじゃねえか。


俺と安藤は三歩ぐらいの距離で対峙する。やはり慣れている奴は威圧感が違う。まるで象と蟻だ、月とすっぽんだ、ロシアとバチカン市国だ。だが負けてられん。祐二の助言を頼りにするしか勝機はない。


「康宏さん大丈夫ですか。ここまでさせてしまって」


「いいんだよ、グリーンだよ。気にするな、必ずお前の悩みは解決してやるよ」


「・・・はい!」


辻沼さんはとても頼もしそうにこちらを見ている。




カーンッとゴングが鳴った。


「お前の何もかもをぶっ壊してやるよ。覚悟しなぁ!」


先に動くは安藤。素早い動きで康宏の懐に潜り込み、シャブアッパーを放つ。俺はそれを間一髪でよける。

「なかなか鍛えられてるみたいじゃねえか」


まあな、祐二達の動きを見てるとお前の動きもゆっくりに見えてくるよ。とは言う暇もない。よけるのに精一杯で、肝心のスタミナが持つかも心配だった。


「おら!おら!オラオラオラオラオラオラオラァ!」


お前はジョジョか、と言いたいところだ。なんというラッシュだ、ガードする腕も赤く腫れてきている。だが相手の動きは大体読めてきた。シャブシャブストレートのパターンが多い。しゃぶしゃぶってうまいよね。今はそんなことを考えている時ではない。つまりだ、ストレート時に腹ががら空きってことなんだよ!!


「無駄ァ!!!」


「ぐぅおあ!!」


「康宏さん凄い!!」


ここぞとばかりに腹にカウンターを一発お見舞いしてやった。どうだまいったか!辻沼さんからの黄色い声援が心地良いぜ。


「まだやるか!!」


安藤はなおも立ち上がる。


「まだだ、まだ終わらんよ!!」


「まだなのか畜生!」


まあ相手もボクシング部だからそうはうまくいきませんよね。

またもやラッシュ。多分さっきのネタは通用しない。


「ソイソイソイソイソイヤッサ!!!」


祭りのようなかけ声で頑張ってよける。ふ、慣れりゃこんなの・・・


「ぐがぁ!」


こめかみをとらえられた。ヤバイ、足下がおぼつかない。そう考えているうちにつぎのパンチが襲ってくる。駄目だ!よけられーーー!


「何をやってるのかしら?」


ボクシング部の暗い部室に凜とした声が響く。それは紛れもなく生徒会長の声だった。

同時に安藤の拳も止まる。誰が呼んでくれたのか?


「もしかして辻沼さんが呼んでくれたのか?」


もうろうとした意識の中で辻沼さんに聞く。


「はい、康宏さんのライフがもうゼロだったので」


そう言うことですか。

椿さんがリングに近づいてくる。


「あなたは確か・・・富村祐二の取り巻きだったわね。セバスチャン」


俺の扱いはそんなもんかよ!

そして椿さんの呼ぶ声と共にガタイのいい男と爺さんが現れる。


「この男を保健室へ」


「御意」


爺さんはそう言うと片手で俺の体を掴み肩に担ぐ。持ち方を考えてください。そう突っ込みながら俺は意識を手放した。





ここはどこだ?私は誰だ。


「・・・すひろさん?」


呼んでいるのは誰だ?


「康宏さん!」


俺は康宏?そうだった、なんの取り柄もないあの男か。いや違う俺だった。

柔らかい・・・誰かに手を握られてるのかな?


「・・・・ああ」


これは誰の声だ?俺の声だ。じゃあこの声は?目を開けて確認しろ。

俺はゆっくりまぶたを開ける。


目の前には涙を浮かべた女の子がいた。とっても美人だ。ハハ、夢か。じゃあまた目を閉じても良いんだよな。お休み。


「開けたと思ったら閉じるってなんのチラリズムですか!!起きてください」


またさっきの声だ!!ああ!


「うるさい!!!」


俺はがばっと起き上がる。


「康宏さん!!!」


涙ぐんだ子だ。さっきのは夢ではない?あら、抱きついて来ちゃったよ。まいったな~ははは。ところでここはどこだろう?


「どこだ?」


俺は周囲を見渡す。この香り、この風景、ここはまさか・・・


「保健室だな」


「そうだ、全く無茶しやがって」


そう言って椅子に座りながらため息をつくのは保険医の伊吹(いぶき)翔子(しょうこ)先生だ。


「その女の子がお前のことずっと介抱してたぞ。礼を言うんだな」


よく考えれば俺抱きつかれたままじゃん。確かそうだ、辻沼さんだ。


「辻沼さん、ありがとう。あと恥ずかしいから離れてくれ」


優しい声で、そう告げる。


「みちかって呼んでください。じゃないと離れません」


オイオイ参ったな~~~~~~。


「康宏、鼻の下伸びてるぞ」


翔子先生うるさいですね。良いじゃないですか。


「じゃあ少し離れてくれるか?み・・・ちか」


恥ずかしいってマジで。ゆっくり離れる辻沼さんは顔を真っ赤にしている。


「あの、ありがとう」


と言ってぺこっと頭を下げてくる。最後に解決したのは生徒会長さんだけどね。


「これ、私のメールアドレスです。暇があったらいつでも送ってください」


といって一枚の紙を渡したきり走り去ってしまった。


「なんだ、お前ら付き合ってないのか?」


「ウルサイネ。どうせ俺は彼女いない歴=歳ですよ」


「ははは、ならそれももうすぐ終わるかもな」


「そうなると良いですね」



俺は一度相談部室により、ゆっくりと帰路につく。メール、打ってみようかな。


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