祐一 in the 異世界 (祐二を救え) 6
「祐二、大丈夫かな・・・」
彩菜が祐二の手を握りながら呟く。その目には、目から汗が出ていた。
「彩菜」
ジャミングが彩菜に声を掛ける。
「何?」
「助かるよ。必ず旦那は・・・助かるよ」
ジャミングは低い声で、そして確信に満ちた声で彩菜に説いた。
「・・・うん。そうだよね!ありがとうジャミング!」
「さて、旅もそろそろ大詰めか。ブラックドラゴンさえ来なければ何とかなりそうだ」
祐一はこの世界に来た目的を忘れるほどバカではない。彼はなによりも弟を愛しているのだ。
「ゲートの開いたところがあの砂漠だからな~。来た道を戻るのはごめんだが・・・そうするしかないか」
そうとだけ言って祐一はロウザンの森へと歩みを進めていった。
「彼は行ってしまったのですか?」
レイティが王に尋ねる。
「おそらくは二度と会うことはあるまい・・・そんな気がする」
「・・・私もそんな気がいたします」
祐一は今、立ち止まっている。
「ラグロック、か。山地の鉱物ばかりを食べ、いつの間にか激太りをしてしまう竜。しかしその装甲はタングステンをも遥かに凌駕するという」
祐一は今目の前で咆吼を上げているこの森で最も出会ってはいけない相手に対してこう呟いていた。
岩堅竜ラグロック。手はティラノサウルスのように退化し、翼はなく、自然体だとしっぽから頭まで直線上になるのが特徴。
「だがな、ブラックドラゴンよりマシよ!」
祐一は剣を顕現させ、一気に走り込んでゆく。ラグロックはその重厚な体を一回転させ、地面を大きくえぐる。そして、無数の岩を落としてくる。
「甘いわ!」
祐一はそれを避けつつ、一気にラグロックとの距離を縮めていく。ラグロックは懐に入られると何もできなくなってしまう性質がある。巨体だから仕方ない。
「まずは足からクッキング」
祐一はそう言うと、突如加速し、見えないスピードで足を切り抜く。間を置いた所で突然、ラグロックの足首から下と上が分離し、ラグロックはたちまち転んでしまった。その巨体の倒れる震動は地震の如きであった。
「無駄な殺生はしたくない」
祐一はそう言ってさらに森を抜けながら山の上を目指していく。
~~省略~~
と言うことで山頂に着いた祐一。
「コレが神月草か・・・青く輝いているのは本当だったのか。省略って手抜きじゃないのか?」
祐一は青く輝いているその神月草を一つ摘む。それを鼻に近づける。
「う・・・・コレはかなり強いな。常人なら香りだけでもトリップできるぞ・・さて」
祐一はとりあえずいくつかの神月草を摘んだ。
「さあて・・・」
振り返るとそこには黒龍さんがいました。帰ろうと思っていたのに。
「ギャアアアアアアアス!!!」
どうやら最初に出会ったときからずっと根に持ってるらしく、マジギレしている。
「勝てるわきゃねえだろ!!」
祐一はそう言って光魔法と風魔法を同時発動。光魔法で目を潰し、身動きを捕れなくなったドラゴンを風魔法で吹き飛ばした。さらに、火炎魔法で後方に爆発を起こし、急加速度で空へ発進した。
「雲の上なら大丈夫か?」
大丈夫じゃなかった。
「ギャアアアアアェア!」
ブラックドラゴンはものすごいスピードで祐一に迫る。
「ぬお!よおし・・・・」
祐一は火炎魔法で白煙フレアをまき散らす。ブラックドラゴンはそれを避ける必要性は・・無かったようで直進してくる。
「こうなったらガン逃げだ!」
祐一は一気に風魔法でブーストを掛ける。音が圧縮されソニックブームとして発散される。
「やったか!?」
祐一が後ろを向くとすでにブラックドラゴンの姿はなかった。そして、今までの道中分はいつの間にか引き返していたらしく、地上に降り立った所は丁度良く砂漠だった。
「さて・・奴の気配がないうちにさっさと行くか」
祐一は自分で開けたポータルにジャンプで突っ込み、これにて異世界の旅は終了した。
やっと現世界に帰ります。