祐一 in the 異世界 (祐二を救え) 4
「ぐおお・・・」
「我慢してくれ。コレも毒を抜くために必要な薬なんだから」
「あいよ」
ゾンは祐一の腹に緑色の薬を塗りたくる。薬と黒い血が混ざって何とも言えない濃緑となっていた。
「アレだな。つらいよマイサン」
「僕からも質問があるのだけれど」
レイティが近づいていく。
「・・・なんだ?」
「君の名前を教えてくれ」
「無理だっつってんだろ」
「それでもだ」
「事情があるんだよ。事情が」
「僕は一応国でも重要なポストにいてね」
「それで?」
「今さっき通信で王女が黒衣の男に助けられたと聞いたんだ。ブラックドラゴンから」
「ほほう」
「君でしょ」
祐一はすこしレイティの目を見つめる。
「お前・・いい目をしているな」
「いや、話題そらさないでよ」
「冗談を聞かない男め」
「いつもは聞くけど今回ばかりは重要だから聞けないんだ」
レイティがやれやれと言う感じで両手を振る。
「ロックアイスが食べたいな」
「何それ?」
一瞬祐一の目が光る。
「水を冷やして固形にさせた物だよ。ひんやりしてるんだ」
「それは良いね。いつでも冷たいのが飲めるのはありがたい・・・それで」
「水とかがもうコレがうまくてさ!」
「そう、それで君の名前はなんだい?ついでに連れて行きたいんだけど」
祐一は一瞬落胆した。
「俺の名前は・・・う・・傷が痛んで・・・」
祐一は脇腹を押さえる。そこにゾンが歩いてくる。
「鎮痛剤は打ってあるんだけどね」
「クソゾン」
「クソって言われる筋合いはないんだけどね」
「悪かったよ」
「で、名前」
しつこく聞くレイティ。
「分かったよ!ジャックだよ!」
祐一がそう諦めたように言う。ゾンが少し含み笑いをしながら言った。
「ジャックなんて事はない」
「どこにそんな根拠が?」
「読心術だ。魔法ってのはある程度読めるんだよ」
「まるで春樹だな・・・」
祐一が遠い目で呟く。
「春樹って誰?」
「お前には関係ないよレイティ」
「じゃあ君の名前は?」
「しつこいぞ」
「こっちだって上がしつこいんだよ」
祐一は閃いた。
「神月草の在処を知っているか?」
「どういうこと?」
「そのままだよ」
「・・・・あの草は魂を操る術に使われる強力な草なんだよ・・・そんな物ぼくなんかが在処を知るわけないじゃないか」
「その上の人間なら知ってそうか?」
「・・・人に寄るけど・・・・知ってそうだね」
「吉幾三」
「いきなり心変わり!?」
「いいな?ゾン」
「医者としては止めるようだけど、なにか君は大きな使命を背負っているようだから止めないでおくよ」
「そんな医者で大丈夫か?」
「大丈夫だよ。問題ないさ」
「お前の上司の所へ行くのにこんなに女は要らないだろ」
「なんでかいるんだよ。僕にも分からない」
「レイティをどうするつもり!」
「アルト・・・そういうわけじゃないんだ」
「レイティ様に何かあったらどうするのよ」
新キャラだがハミルトン。銀髪ショートカットの寡黙な女性。レイティの前だと寡黙じゃなくなる。
「だからハミルトンも心配症すぎだよ!」
「お前ら仲良いな」
「僕は知らないよ!」
「何が知らないですか!あなたのせいで私たちは・・・私たちはぁ!」
ルイが何か言ってる。
「ほーら泣かせちゃった」
「ええ~~~~!?一体どうなってるの!?」
顔を押さえて叫ぶレイティ。
「朴念仁の末路か・・・おい、さっさと馬車を進めろ。女は蹴り飛ばすから」
「蹴り飛ばすってどういうことですの!?」
アルトが生意気にも祐一に反抗する。
「言語中枢が壊れたかこいつ」
「どこまでも失礼ですわね!やっぱり我慢なりませんわ!決闘を申し込みますわ!」
アルトが突然祐一を指さしていった。
「アルト・・・そいつは無謀すぎやしないか?」
レイティも少し引いている。逆にアルトは後戻りができなくて冷や汗だらだらだ。
「聞かなかったことにした方が良いか?」
祐一がレイティに聞く。
「そうだと思う」
レイティも引き気味に首を縦に振った。
「で・・・どうするのレイティ・・・私たちを連れて行くの?行きなさい」
ハミルトンが何か言う。
「いやハミルトン・・・なんで連れて行くことになってるの」
「私はレイティの嫁。一緒に行動するのは当たり前」
「いや僕まだ結婚してないんだけど」
「おめでとう」
祐一が横から口を挟む。
「いやあんたはうるせえよ」
「いやはや、どうも」
「レイティ」
ハミルトンが強引にレイティの唇を奪った。周囲の女子達には稲妻が走る。
「どういうことよ!」
ミクリがそれを引きはがす。
「そうよ!そんなこと聞いてないわ!」
ルイもミクリと同じように怒鳴る。
「キャラかぶりも大概にしろ」
祐一が突っ込んではいけないことに突っ込む。
「「なんですってぇ!」」
ミクリとルイの矛先が祐一に向く。
「ん?俺?ゲボァ!!!」
祐一は空気を読んでしっかりと攻撃を受けてあげたのは言うまでもない。