祐一 in the 異世界 (祐二を救え) 3
二つのストーリーを絡めてなんか最強な人が助けに来てくれた感じを出したかった。そのためだけに新キャラを出しました。
「レイティ!今日こそ決着を付けるぞ!」
丁度中庭でお昼ご飯を食べようとした所で何かきましたね。こいつはいつも僕に喧嘩売ってくるレクトという男だ。アルトに恋をしてて、どうしてなのか僕に喧嘩を売ってくる。全く、動機として不十分だ。
「待ってて。ご飯食ってからにしてくれるかな?」
「うむ、良いだろう」
少なくとも融通は利く奴だから悪い奴ではない。
食事終了。
僕はナプキンで口を拭きながら問う。
「で、どうするの?」
「勿論決闘だ!」
僕とレクトの決闘の通算成績は僕が80戦中80勝という結果になっている。いやあむごいむごい。
「また?そもそも魔力が違うから・・・」
「それでもだ!」
こんなにひたむきな努力家も珍しい。レクトは才能を努力でカバーできるほどに努力する。そう言う男だ。真っ直ぐすぎて将来が心配だが。
「じゃあ、どの程度成長したか見てあげようか」
「相変わらずの上から目線だが、その余裕、いつまで持つかな?」
いつの間にか周囲にはギャラリーが集まっていた。一応僕は魔法だけの実技ならこの学校内ではトップだ。才能に恵まれた所が大きいだろう。
「俺から先に行かせてもらうぜ!ライトニングスピア!」
レクトはそう叫び、何もない空間から青白い槍を顕現させる。一応中級魔法で、レクトはその魔法を努力で会得した。レクトが会得したときは一緒に喜んだものだ。
僕は帯刀している剣を取り出し、構える。
「うおおおおお!」
レクトが真っ直ぐ走り込んでくる。僕は少し身をかがめる。
レクトの間合いに入ると、レクトは槍を上から振りかざしてきた。全部エネルギー体だからってそれじゃ剣になっちまうよ。
「甘い!」
僕はその槍を剣で弾き、よろけたレクトに対して横薙ぎに剣を振るう。
「ふっ!」
レクトはそれを後方倒立回転で躱した。やるねえ。
ギャラリーからはおおっと言う声が出ている。
「さすがだね。レクト」
「お前にだけは負けたくないからな」
レクトは再び槍を顕現させる。そこにアルトがやってきた!
「レクト!私のレイティに何やってるの!!」
アルトは出てきた途端にそう怒鳴る。レクトは現状把握ができてないようだ。
「え、いや、ええと・・・・すいません」
謝っちゃったよ。
「いや・・アルト・・別にコレは」
「あなたの意見は聞いてないわ。大体あなたもあなたでこんな危ないこと何で毎日のようにやるの!?」
何故か少し必死になっている。別に死ぬわけでもないのに。一歩間違えれば大けがだけど。
「いや・・・ええと・・社交辞令だから・・?」
「どこに出会い頭に決闘を始める民族がいるのよ!」
「レクトの方からも言ってやって・・もういないし」
せめてここで身代わりになってほしかったものを。
「さあて、説教かしらね」
アルトがため息をつきながら袖を掴んできたその時、先生が息を切らせながら走ってきた。
「ブラックドラゴンがここから西に68キロの地点で出現したらしい!王女様の馬車が襲われて現在逃亡中とのこと!」
やっぱりあらわれるか。しかしここの西68キロはかなり近いぞ。あのドラゴンのブレスは千里をかける、という話も聞いたことがある。
「その影響で魔物が暴れ始めているとの報告!特に奴隷として働かされていたオーク達が現在大暴れしていて、この学校付近のオークがここを目指しているからみんな屋内に避難しなさい!」
オークはまずい。ちょっとやそっとの魔法じゃ止まらないし人の力で剣で切っても切り込み傷一つ付かない強靱な肉体を持った生物だぞ?ブラックドラゴンに乗じて解放を目指してるのだろうか。よくあることだ。
「・・・・・」
アルトが真っ青な顔で震えている。まったく・・・。僕はその頭をポンっと叩いて言った。
「とにかく、僕がいるよ」
僕がそう言うとアルトは顔を赤くしてうつむく。うつむきつつも、手は離さない。
「ははっ」
少し笑いがこみ上げた。
「じゃあ、避難し・・・・え?」
遅かった。後ろから爆音が聞こえる。すぐに振り向き、アルトを逆方向に突き飛ばす。
「・・・・え?」
アルトの惚けた声がする。少し早いけど僕は死ぬみたいだ。オーク達はすでにそこまで来ていて、その大きな斧で僕は苦しみもなくやられるんだろう。
「ああ、一回ぐらい・・・・一回ぐらい彼女ほしかったな」
最後にそう言って僕は跪いた。そして、オークが振りかぶった斧を下ろしてくる。
瞬間、目の前の地面にオーク一人分の大きさで円形に亀裂が入り、下から爆発するようにはじけた。オークはその衝撃で無残に学校の壁にとばされた。ありゃりゃ?何が起きてるんだ?
「いっててて。あのドラゴン爪に変な物纏いやがって」
下から何者かの少し弱った声が聞こえてきた。これはあれだ、ヒーローって奴の登場か?
穴が開いた地面の縁に片手がバン!と掛けられる。その手は赤黒い色に染まっていた。ええ!?ゾンビ?
「出血が酷いな」
なんて声も聞こえてきた。僕が何匹もいるオークに囲まれた状況でこんな風にのんびり見ていられるのは、この穴にここにいる全員が集中してて、全く争いなど起きていないからだ。
そして、中から男が現れた。黒い衣を纏っており、脇腹には傷跡があり、血がにじみ出ている。一体この穴の先で何があったのだろうか。
その顔は血まみれで、修羅のようだった。だが、纏う雰囲気はどこか丸い物だった。
「どうかしたのですか?」
僕が話しかけると男はすこしつらそうな顔で答えてくれた。
「ブラックドラゴンと交戦してた」
・・・・は?ブラックドラゴンと交戦して生きているってどういうことですか?軍隊が出動しても壊滅させられ、どんな高名な魔法使いでも帰ってこなかったという話なのに?
「いったい、どうやって逃げてきたんですか?」
「・・・まて」
男がいきなり話を切った。時すでに遅し、すでに男の後ろからオークが斧を振り下ろす所だった。男はこっちを向いたまま無言で手に剣を持つような形にして、オークの斧をその持ったときの剣で止めるように動かす。
ガキンッ!と言う音がしてオークの斧は止められた。男がその斧を顕現した剣で片手で防いでいたのだ。
「それは攻撃か?」
男はオークの斧を弾き、振り返る。そして、高速でオークの懐に入り、オークの心臓部分を剣で貫いた。早業プロだな。
「すごいな」
「まるですごいな」
「実に凄い」
「しゅごいぃ」
周囲からも声が上がる。しかし、男はオーク達に囲まれてしまった。こんな時学年トップの僕も少し良い所見せないとな。
「エレメンタルファイア!」
構えた右手から火の塊が出て、そのままオークに向かっていった。そして、直撃した。肉が焦げる臭いがする。臭い。
「ウゴオオオオオオ!!」
オークが背中を押さえてのたうつ。男はそのオークに一瞬で近づき、剣で上半身を切り裂いた。男は流れるように振り返り、ひるんでいるオークに向かって剣を投げる。耳鳴りのような音がして、気がつくと剣は貫通していた。すげえ、軌跡が見えなかったよ・・。
「その弱さは失礼だと思うのだが?」
男はそう言って最後の一匹に向かってゆっくりと歩いて行く。最初から脇腹が流血してるのによくあそこまで動けるもんだ。
「う・・うが」
オークがかなりびびっている。オークの背は男の1.5倍はあるというのにオークの方が小さく見えてしまう。
「・・・・」
男はプレッシャーで動けないオークを剣で刺し、殺した。
「手が滑った」
そう言いながら男はこちらに近づいてきた。手を滑らせて腕全体を動かす男がどこにいる。そしてそれはここにいたよ。
「あなた!レイティに近づかないで!」
アルトが僕の前に立って男に叫ぶ。
「待て!危ない!」
こんな奴に立ち向かった所で勝てるわけがないじゃないか!
「い、いやもう俺どっか行くよ?」
アルトの気迫に男はすこし引き気味に言う。さっきまでの威勢はどこへ行った。
「え・・・?」
逆にアルトが惚ける。さっきの男の行動を見た後ではこうなってしまうよな。
「じゃあ俺は先を急ぐよ」
そう言って男は去ろうとする。まだ名前を聞いてなかったな。僕は聞くことにした。
「あの・・お名前を」
「教えないもんね!」
言葉を遮って言って来やがった。さっきからキャラが定まらない。
「・・・ごほん。俺は先を急いでいるんだ。じゃあな」
「まってよ、少し休んでいった方が良いんじゃないかな?」
そう言うと男は少し自分の脇腹を眺め、
「やっぱり少し休む」
と言って勝手に校内に足を運んでいった。本当にキャラが定まらない。
傷口を負い、血を流したまま平然と歩く男の姿は廊下ですれ違う生徒を恐怖させるのに十分だったのだろう。あるものは逃げだし、あるものはひれ伏し、あるものは腹を押さえてトイレに駆け込んだり。
「俺のどこが怖いんだよ」
男、祐一はそう呟いてこの学校の医務室までゆっくりと歩いて行った。
祐一が医務室に入る。続いてレイティがくっついて入っていった。その後ろからさっきの戦いぶりを見た学生(主に女子)がくっついてくる。
「先生!この人急患です!」
レイティは祐一の後に入り、そう言った。
「分かっているよ・・・見れば分かる」
医務室の医師はかなり歳の行った男だった。落ち着いた雰囲気を纏っている。
「どれ、傷を見せてみなさい」
医師が祐一に指示する。祐一は無言で従った。
「これは・・・・魔毒だね。それも相当強力な。君は何で生きているのか疑問だよ」
「あんた抗生物質体内で練ることができるのかよ!」
「使命を果たすまでは死ねないからな。それに一応抗生物質を出し続けているから何とか持ちこたえているよ」
「抗生物質を体内で錬成か。君は一体何者?」
「教えられない」
祐一はそう言って服を下げようとするが、
「待ってくれ。コレはもしや・・・ブラックドラゴンのかぎ爪の毒じゃないのかい?」
「そうだな」
「そうだな、じゃないよ。普通こんなの食らったら即死に決まっている。幸い生きていて良かった。いまから薬を処方するよ」
「わかった・・・・よ!」
祐一はよく分からないかけ声と共にベッドに寝転がりまくった。
「あの・・・彼は大丈夫なんでしょうか」
レイティが心配そうに聞く。
「いや、表向きにはアレだがきっと死ぬほどつらいんだろう。彼は強いよ。だからこそ救ってあげなくては」
医者であるゾンは祐一の正体に一抹の疑問を抱えながらも医者であることには変わりはなかった。