祐一 in the 異世界 (祐二を救え) 1
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「一体どうすんだよ祐二の兄。まず異世界って所から突っ込み入れて良いか?」
彩音が怪訝な顔で言う。
「事実は事実だ」
「でもさあ、どうやっていくんだよ」
「まあみてな。一応コレでも魔術の五百個は六百個は使えるんだぜ」
祐一はそう言いながら腕をまくった。
「いやせめてそこは一つや二つって言ってくれ」
「いやあ、オヤジの書庫から一つ二つと勝手に本を盗んで読んでいたら意外にもすらすら覚えちゃってね。それを祐二にも教えたりしていたんだ」
祐一がそう言ってすこし哀しみを浮かべた目を祐二に向ける。そして彩音に向き直る。
「俺は祐二を助ける」
祐一はそう言うと祐二の部屋の床にチョークで歪な円を描き始めた。
「何をしてるのかしら?」
「さあ、お母さん分からないわ」
「異世界に通じる門を作ってるんだ」
そう言いながら祐一は円を描き終えた。次に、その円を指でなぞり始める。祐一がなぞった後は少し水色の光を放っていた。
「一体どうすんだよ」
「まあ見てな」
祐一は円をなぞりおえる。そして言った。
「少し皆さん下がってて。ちょっと危ないから」
祐一はそう言って全員を下がらせる。
そして拳を振りかざす。
「どるぁ!」
そのかけ声と共に円の中心だとおぼしき所に向かって垂直に拳を振り下ろした。すると何と言うことでしょう。描いた円の形に床が抜けたのだ。
「弁償してもらわなきゃね~」
彩子がそう呟く。祐一は非常に寒いものを感じた。がしかし祐一のためにも頑張らなきゃならないので耐えた。
「さて、では俺は異世界へ行ってくる。たった一人同じ血が流れた男なんだ。お前達に守ってもらう」
「合点だ!」
「任せなさい」
「わかってるわ」
「後で弁償ね~」
一人だけ何で責めてくるんだよ。そう思いながら祐一は異世界に飛び立った。
「さすがに五十メートルも高さがあるとは思わなかったぞ・・足がじんじんするぜ」
祐一のオヤジの故郷の世界である。現在祐一は砂漠のど真ん中に立っている。
「えーっとここはメハリダ砂漠ってところか。とりあえず神月草の在処を捜すには情報が必要だから・・・どうやらこっから約320km北に行った所に村があるようだな」
祐一はたった一人で実に長い道のりを歩き始めた。砂漠のど真ん中だからさすがの祐一でも体力は刻々と減っていく。
「よく考えたら320kmは俺でもきつい気がする。走って二時間かかる距離だしここ砂漠だし」
祐一はそう考えながら歩く。少なくとも風を肌で切らなければ余計暑いだけなのだ。
「・・・考えても仕方がないか」
祐一は原始的に突き進むことに決めた。
320km北に行った所の村の門番の話。
「最近なんかなにもねーよな」
「だよな。あったと言えば王様が死んで王女が女王になったことぐらいだよな」
「でもこんな領地の端っこの村の警備をしている俺達には何も関係ないよな」
「「・・・はぁ~」」
「ところでさあ」
「なんだ」
「ちょっと見えないか?」
「なにがだよ」
「ほら、あの地平線の彼方」
「・・・うん?何だアレは・・・」
「こっちへ近づいてくるぞ!」
「は、速い!」
祐一がもう村に来たのだった。
「はぁ・・・はぁ・・」
祐一は門番の目の前で急停止する。すでに肩で息を切っている状態だった。
「えっと・・何者だ!!」
門番は槍を突きつけながら戸惑いつつ怒鳴る。
「旅人・・・ってなんだ?」
「俺達に質問するなよ!」
「とりあえずお前は危険だと思う 」
「いや!全く持って安全だ!」
「危険だ!」
「安全だ!」
門番の一人と祐一がいがみ合っているその姿をもう一人が見ている図になる。
「お前ら・・・もう少し落ち着け」
「・・・ふう」
祐一がすぐに落ち着く。続いて門番の一人が落ち着いた。
「まず旅人、と言ったな。名前は?」
「ユウイチ」
「ほう、では次だ。何の目的でこの村に来た?」
「一時休憩だ」
「どのくらい滞在するつもりだ?」
「今日一日はいろいろ考えるから滞在したい所だ」
「・・・いいだろう」
冷静な方の門番が祐一の入村を許可した。
「ありがとう」
祐一は開けられた門に快く入っていった。
「何でだよ!危ないぞあいつ!」
「まあ考えろ。危なかったら俺達は死んでいる。なにせあの距離をこのスピードできたのだから相当の奴だと言うことは分かるだろう?」
「・・・ああ」
「なのに殺さなかった。それにあいつは何か・・・まあいい。あいつは安全だと思う」
「・・・お前がそこまで言うなら良いだろう。まあ、門番って大変だよな」
「だな」