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相談部の肝試し 2

「あまり俺に近づかない方が良い。特に背後から近づくと無意識に手が出るからな」


祐二はそう言って陽子を解放してやった。霊相手にここまで優勢を保てるのは祐二だけだろう。


「私のことが見えるのね」


「はっきりと」


「私が幽霊だって事も分かるの?」


「はっきりと」


「じゃあ、私をこんな風にした存在の正体は分かるの?」


「目星は付いた」


「何なのか教えてちょうだい」



春樹と綾瀬と康宏は祐二をぽかんと見ていた。何もない所に向かって突然手を出したかと思うと次にはしゃべり始めたのだ。それに答えるかのように幽霊らしき声が聞こえてくる。


「あれなにやってるのかしら?」


綾瀬が指さしながら聞く。


「きっと幽霊と話しているんだよ」


春樹が答える。


「まさかぁ。さすがの祐二でも幽霊が見えるなんてなぁ」


康宏が冷や汗一杯で言う。


「祐二君は実際に話してるみたいだけどね。さっきも普通に話してたじゃん。きっと見えるんだよ」


「・・・・・あいつなら納得できちゃうのが怖い所だな」


康宏が戦慄した様子で答える。


「祐二・・・あなたはどこまで上り詰めるの」


綾瀬が何か達観した様子で呟いた。



「・・・そう言うことなのかしら・・・私が・・幽霊が存在していることよりも信じられないわ」


「異世界というものは話がややこしくなるからあまり言いたくはなかったんだがな」


「じゃあどうやってそいつを倒すって言うの?」


「殴る、蹴る。様々なラインナップがございます」


「・・・それで倒せるのかしら」



祐二はそのまま屋敷の床まで飛び降りて着地する。


「よし、ここはもう奴のフィールドじゃない。いざ最終決戦に赴かん」


「旦那、勝算は」


「100%だ」





しばらく一行が歩くと祐二は不意に立ち止まる。康宏はずっこけた。


「で、こいつだよ」


祐二は振り返りながらそう言う。目の前には大きな球体があり、中に吸い込まれるような力が働いている。


「・・・これはいったい何?」


綾瀬が聞く。


「異世界へ続くゲート。らしきものだ。おっと康宏、それに触れるなよ」


もう少しで球体に触れそうな所まで手を出した康宏を祐二が止める。


「なんでだよ」


康宏は不満そうである。


「それに触れると異世界に連れて行かれるから気を付けろ?ついでに実体で触れると体がバラバラになった状態で召喚されるからな?」


祐二がそう言うと康宏はさっと血の気が引き、すぐに離れていった。


「ねえ、これが何で私の幽霊化の原因になるの?」


陽子が祐二に聞く。


「それはだな、お前はどうやら異世界に連れて行かれようとしていたらしい。だから最も連れて行きやすい形、つまり幽霊体にさせられたんだよ」


「とんだ迷惑な話ね」


「お前はこれ以上近づかない方が良い、吸い込まれるぞ」


祐二はそう言うと一歩球体に近づく。


「分かったわ」


後ろで陽子が呟いた。


「ちょっと祐二!近づくと「うるさい」


綾瀬の言葉を遮って祐二が怒鳴った。綾瀬は少しすねたように座り込んでしまった。祐二が何かを呟くと祐二の右手の肌に(半袖)幾何学的な紋章がうねうね現れ始める。


「祐二君・・・君は何者?」


春樹は小さく呟く。


「さあな」


そして、祐二は一気に球体まで走り、右手を突っ込んだ。

瞬間、閃光があたりを照らし、一行は目をとっさに覆う。


「うぉぉぉぉおお!」


祐二はその中で一人、足を踏ん張りながらずっと耐え続ける。そこの後ろにのんびりと座るのはジャミング。


「旦那、一体どうなっているんで?」


「この門を破壊している。この破壊技術は異世界のものだ。この門を作る技術もな」


「・・・分かりやした」


ジャミングはそう言って大きなあくびをする。

その直後、突風が吹き、絶え間ないフラッシュがやんだ。そこには球体はなく、祐二が踏ん張りの体勢で立っていた。

 途端、祐二は倒れ込んでしまった。


「旦那!」


ジャミングが祐二の顔をばしばし叩くが祐二は返事をしない。


「え!?祐二?」


綾瀬も急いで駆け寄る。そして祐二の心音を計る。


「・・・え?」


綾瀬の顔がどんどん青ざめていく。


「みゆき!どうだった?」


春樹もすぐに駆け寄って聞く。


「無い・・・無い!」


綾瀬はそう言った途端泣き出してしまった。春樹はすぐに祐二の心を探る。


「・・・待ってみゆき。祐二・・・何かおかしい」


「・・どういうことよ!」


綾瀬は顔を伏せたまま怒鳴る。


「魂が・・・呪縛されている」


「どんなファンタジー展開だよ!!」


そしてやっと康宏が突っ込みながら祐二の所へ来た。康宏だけ突風で瓦礫の中に埋もれてしまったのだ。


「康宏!今は突っ込む場合じゃない!」


「分かってるよ畜生!祐二ぃぃぃ!」






「陽子とやら」


ジャミングが陽子に問いかける。


「何かしら」


「旦那はあんたのためにここまでやったんだ」


「・・・・」


「あんた、余に協力してくれるか?」


「どういった面で?」


「旦那の回復には旦那の兄が鍵を握っている。つまり」


「つまり?」


「旦那の兄を、見つけ出してくれ」


「・・・分かったわ」


次話:救え祐二を

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