祐二、猫を飼う その2
「ハオ」
祐二は陽気に手を上げながら中に入る。中にはなおも堂々と椅子に座っている生徒会長、両花院椿の姿があった。
「誰かと思ったら・・・あなたでしたのね」
両花院の瞳にはわずかな期待と驚きが入り交じっていた。さすが生徒会長といった所か、ドアの破壊には口出しをしないようだ。
祐二は机を隔てた向かい側の椅子にふてぶてしく座る。春樹は身を縮めてその後ろに付く。
「で、なんの用ですの?」
両花院は期待が大きめな方の声で問う。祐二に何を期待しようというのか。
「猫、飼って良い?」
「・・・・・は?」
さすがに生徒会長も一瞬惚けてしまった。だがすぐに首をぶんぶん振り、正気になる。
「い、いやどういうことですの?事情を話してほしいのですが」
「いやあ、猫拾っちゃってさぁ。部室で飼いたいなぁって思ってさ」
生徒会長は現状理解に務める。頭を抱えながら険しい顔になる。
「よく分かりませんが。駄目ですわよ」
少し怒ってるような声で答える。
「細かいことは良いじゃない。春樹も飼いたい飼いたいうるさくってさぁ」
「えぇ!?僕に振らないで!後生だから!」
春樹はそのまま土下座の体制に移行して動かなくなっちまった。
「・・・細かくないですわ。常識を考えて下さい」
「俺の?」
「世間の」
祐二は顎に手を当てて考えるモードに入る。
「いやあ、世間は良いって言ってたよ」
「それはどこの世間ですの!?」
「・・・・ねぇ?」
「ねぇ・・・じゃなくって!あのですね?いい加減にしなさい!!」
両花院がそう怒鳴ると祐二はすねた顔になってカーペットの毛をいじり始めた。
「なんでだよ~~俺には何の悪意もないのによ~。動物愛護の精神を否定するのかよ~」
「い、いや、そう言われましても」
「じゃあ良いんだな!?」
祐二は途端にがばっと起き上がって両花院に迫る。
「駄目です!!」
「ところで、なんだ、良いって事で良いか?」
「なんでそう言う結論になるんですの!?」
「俺が、初めて愛しいと感じた・・・存在だからだ」
祐二のその真剣なまなざしで射貫かれ、両花院は少し硬直する。
「・・・分かりました。ですが特別です!例外です!次はありませんよ!?」
「分かった」
帰り道
「祐二君、初めて愛しいと感じたって言うのは本当なの?」
「・・・いや?遊び道具」
「最悪だな!」
今話はこれで終わりです