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竹中春樹 過去編 12

まさか・・・もうあの会話を聞いていたらしい。富村は当たり前のように平然と言った。

 じゃああの春賀に対する態度は何だ!弄んでいるのか?僕の妹を!


「気付いていたの?」


僕がそう言うと富村はえ?、と口を開けてぽかんとする。 え?


 「・・・気付いてなかった?」


 「うん。冗談でいったんだけどお前に言われるとそれがホントのことになっちまうからなあ」

 

 どうやら富村は本当に気付いてなかったらしい。さっきまでくすぶっていた心は落ち着いてくれた。だが気付いたことが一つある。くすぶっていたとき、最も僕の能力がさえていた。まあ普段の時よりも相対的に向上するだけだが。


「祐二君はどうするの?」


「どうするってお前、断るに決まってんだろ」


・・・断っちゃうの?あれほど可愛い自慢の妹だけど行ってしまうのは寂しい。でも逆に彼氏持って独り立ちしないのも寂しい。だがその彼氏が目の前にいるししかも断るって言ってるし。さあどうしようか。


「なんで断るの?」


「ふ~~~~」


僕が聞いた途端富村は嫌らしい顔になってあぐらを掻き。足の裏をかき始めた。へい、こっちは真面目なんだよ。


「・・・何?」


「話せば長くなるんだけどな、俺は昔初恋の女性が居たんじゃ」


突然爺さん声になって話し始めた。そして部屋ががらりと変貌する。感じな錯覚に襲われた。


「それで?」


「まあな、その時はワシは若かった・・・ワシはラブレターを下駄箱に入れ、女の子を屋上で待っていた」


「文面は?」


「拝啓、この手紙を読んでるあなたは今どこで何をしているのでしょうか。あ、下駄箱で驚いているんですよね分かります。

 で、本題ですがあなた様に伝えたいことがあるのです。放課後屋上でお待ちしております。無事たどり着けば4000ボーナス。さらに告白を承諾すれば追加4000ボーナス」


「それはラブレターとして全くふさわしい文面じゃないよ!前後の関係が全く理解できないし!しかもそのポイントどこで使うの!」


「富村雑貨」


「何だよそれ!」


「いやあ、携帯会社の友達に全経営権任せてる俺が立てたディスカウントストアのチェーン店」


「ホントにあるのかよ」


「でも俺は会長として君臨してるから給料だけは言って大もうけ♪」


「最悪だな!」


と言うかその歳から起業するなんてどういうクリエイティブな思想を持っているんだ。


「で、俺はその女の子が来るのを待っていた。そして来た」


「なんだ、祐二君のビジュアルなら成功したんじゃないの?」


「いやあ、何でかビンタをされちまってさあ。あれ~何がいけなかったんだろ」


「告白するときのセリフじゃないの?」


「それはない。まあ屋上のドアを開けたときの顔がそいつ美人なのに糞虫をかみつぶしたような顔をしてたが」


「文面のせいでもあるね。台詞はなんて言ったの?」


「よくぞ参った。ではこれから告白をしたいと思います。で始めた」


「ずいぶん高圧的だね。前半が」


「そして俺はその後こう続けた。あなたのことを・・・・大分昔からお慕いしていたと思います。だから僕と一緒にさあ、あの無限に広がる宇宙へ行こうかぁ!」


「そしたら?」


「ビンタされちゃったよ」


当たり前だろ。仮にも美男子にあんなイメージブレイクな文面のラブレターを送られ、それでも捨てきれない夢を胸に、屋上へ行ったら変な事を聞かされちゃったんだからねぇ。


「祐二が悪い」


「ひどぅい」


「悪い物は悪いんだよ。それが祐二が女嫌いの理由?」


「女嫌いではなく、付き合いたくなくなっただけだ」


「今好きな人は?」


「存在し得ない」


と、言うことらしい。多分富村の決意はめちゃくちゃ固いから僕にも妹にもどうすることも出来ないみたいだ。


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