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竹中春樹 過去編 9

 今僕は富村と春賀とで部屋で夕食を食べている。コレ大トロじゃないか?と見違えそうな、と言うか本物の刺身とかの海の幸、山の幸を豪勢に盛ったいかにも高級料亭が出しそうなメニューがテーブルに並んでいる。

だが富村の量だけ異様に多いのは気のせいだろうか。


「多くない?祐二君の料理」


今さっき富村に祐二と呼べと言われたが、何か照れるので君付けで呼ぶことにしていた。


「え?いや・・・・俺いっぱい食べるもんね」


異様にと言うのはわかりやすくたとえると、テーブルに対する富村の料理の面積が五割をを占めていると言うことだ。

食べるもんね、ってあんた。それだけの量・・・え?


「うおおおおおおお!」


まず最初に野菜が全て消失した。箸の動きが見えない。と言うかいただきます言えよ。春賀も口をあんぐり開けて眺めている。


「・・・・そんなに急いで食べると体に良くないよ?」


「いや、実は俺消化器官の働きを増幅させることが出来るんだ」


「人間じゃないだろあんた!!」


なんで自律神経系のものを自我で抑制できるんだこの人は。ますます人間から遠ざかっている気がする。


「ねえねえお兄ちゃん」


春賀が僕の浴衣の裾をちょいちょい引っ張る。


「なんだい?」


「やっぱりあの人普通の人とは違うね」


何だそんなことか。


「あれは人であるかさえ分からないからね。春賀も注意した方が良いよ」


僕がそう言うと春賀は少しむすっとした顔になって、


「あの人はいい人だもん」


と呟きながらご飯を食べ始めた。


五分後


「完食だぜ」


富村がもう食べ終わってしまった。僕たちはまだ自分の料理の全体の三分の一ぐらいしか食べきっていない。しかもコレでも急いでいる方だ。


「早すぎだよ・・本当に大丈夫?」


僕が聞くと富村は笑顔で答えた。


「一応今からでもフルマラソンとか全然大丈夫なくらいだぞ?」


大丈夫そうで何よりです。


「じゃあ俺は少し夜風を浴びてくる。あとバンジージャンプやってくる」


そして、富村はそう言ってベランダに出て行った。バンジージャンプって何だよ。あんだけ食ったらバンジージャンプなんてしたらどうなるか分かるでしょ。


「あ!」


春賀が突然急いで食べ出した。富村と二人きりになりたいらしいが、そんなに急ぐとむせるぞ。あとバンジージャンプはやめとけ。


「ゴホッゴホッゴホ!」


ほーらやっぱり。僕は春賀の背中をさする。


「あんまり急がないでゆっくり食べても大丈夫だよ。あの人は逃げないから」


最後にそう言っておくことで春賀も納得した様子で味わって食べ始めた。




食後


「ああ~食べた食べた」


僕はおなかをさすりながら少し横になる。あんなに美味しい食事を食べたのは初めてだ。さすが高級旅館といった所だ。

窓を見ると綺麗な星空が広がっている。空気が綺麗なようだ。

で、僕が何故ベランダに出て行かないかというと春賀が富村と二人っきりで話しているからだ。兄としては邪魔を出来ない。妹の幸せは僕の幸せでもあるから。

丁度その時、


「あ~気持ちよかった」


富村が凄く涼しげな顔でガラス戸を開けて中に入ってきた。続いて赤い顔をした妹も入ってくる。


「春樹、そろそろ風呂入ろうぜ」


富村はそう言いながら僕の着替えを勝手にあさり押しつけてきた。あ、これ小さい頃に履いてたブリーフじゃん。何でこんなもん出てくるんだよ!


「そういえばお前のアルバム見させてもらったけど、お前昔からまるで女だったな」


う!心に突き刺さる言葉を平然と!!


「もう気にしてないしぃ!」


僕はそう言ってしっかりと自分のトランクスを持って風呂に突入した。


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