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竹中春樹 過去編 6

翌日


朝起きる。今日はそう言えば突然温泉行くことになったんだっけな。今の時間は九時か。富村は午後から行くとか言ってたっけ。

 僕はベッドから起き上がり背伸びをする。体が活性化されて気持ちが良い。

 そして自分の部屋を出て、妹の部屋を横切り、一階へ下りる。そして朝ご飯を食べている母と父と富村におはようの挨拶をする。妹はまだ起きていないらしい。


「おはよう」


「「「おはよう」」」


そして、洗面台に行き、顔を洗い、うがいをする。


「あれ?」


僕はそこで気付いた。何かが違うのだ、いつもの食卓と・・・。


「あ!!」


僕は急いで戻る。そういえばそうだった!!


「なんで富村がいるんだよ!?」


勝手に人の家に上がり込んで朝ご飯まで食べてるし!!


「ん?よう春樹」


自然過ぎて分からなかったよ!!


「春樹、友人を大切にしなさい」


お父さんは諭すんじゃなくて一昨日論破された自分を反省しなさいよ!!


「そうだぞ春樹。お父さんの言うとおりだ」


富村は富村でお父さんと意気投合してるし!!


「まあそれはそれとして私富村君に料理教えてもらっちゃった!」


お母さんが頬に手を当てながら言う。三十代にしては若めの容姿をしているから、そこまで違和感がない所が怖い。

 そういえば富村って料理もできたのか?


「料理もできたの?」


僕は富村に聞く。富村は今食べているフランスパンにくぼみを開け、半熟卵を流し込んである料理を指さす。


「コレとかは俺が作った。結構うまいんだぜ?」


見た感じめちゃくちゃ美味しそうだ。

 僕も一口食べたい、そんなふうに思っていると母がテーブルの僕の座っている前の場所にみんなと同じ料理をおいた。甘い香りが西洋らしくて良い。いつもは和食だから今日は新鮮な感じでまた良いな。


「いただきまうす」


僕はそう言ってフォークを使ってパンを切り、食べる。生クリームを使っているようで深い甘みがあってとても美味しい。富村がこっちを見ている。感想を述べてほしいらしい。


「美味しいよ」


僕がそう言うと富村は何も言わず再び自分のご飯を食べ出した。相当照れているのがよく分かる。心読めるしね。

 でもこういうふうに少し和やかな雰囲気で食事をしたのも初めてだ。親は僕を守ってくれてはいるし、話してはくれるけど、何か雰囲気が違うのだ。どこかが優しくなった気がする。

 黙々と朝食を食べていると妹が起きたのか二階でドアの開く音がした。そして、階段を下りてくる音がする。そしてドアが開いた。そして妹が、


「おはよ・・」


と言って入ってきた。妹はかなり可愛い方なのだが僕の影響か少し内気だ。年齢は十五歳の中学三年生。名前は春賀(はるか)。家ではかなり威張っているが外に出るとどうも大きく出ることができないのだ。無論、人見知りも激しい。だから富村を見たらどういう反応をするか楽しみでもあり不安でもある。


「・・・・そこ私の席」


富村が座っている席はいつも春賀が座っている席なのだ。どうやら妹は寝ぼけているようだ。


「え?マジで?そいつは悪かった」


と言って富村は残りの料理を全部口に含み、皿を律儀に片付けてソファに座る。どうやら春賀は寝ぼけてて気付かないらしい。僕は少し含み笑いをする。

 


「あれ・・今日は珍しく洋食なんだ」


春賀がそう呟く。お母さんがそれに反応する。


「あそこにいる春樹の友達の富村君に教えてもらったのよ!」


そう言って富村を指さす。その延長線上にはソファで読書をしている富村がいた。


「・・・・あれ?」


春賀はさっきの行動を反芻してるらしい。


「あ・・・」


そしてさっきやったことを理解した途端、そわそわし出した。


「どうしようお兄ちゃん。私他人にタメ口聞いちゃったよ。しかも年上」


まあ富村だし大丈夫だろう。


「大丈夫。何があってもあの人を怒らせることはできないから」


そう言うと、春賀はほっとしたのか富村をちらちら見ながら再び食べ出した。



「ねえお兄ちゃん」


不意に妹が聞いてきた。


「何?」


「あの人お兄ちゃんの友達?」


「そう・・だと思うよ?」


少し確信がない。がしかし、そうだと言われればうなずくしかないだろう。


「結構かっこいいね」


「まあね、思考はぶっ飛んでるけどね」


「ぶっ飛んでる?」


「春賀も今日温泉旅行に行くことは知ってるだろ?」


「うん」


「それ昨日富村がお母さん達と取り決めたことなんだ。一瞬で」


「・・・うわあ」


「しかも一方的に諭したと本人が言っていた。お母さん達も賛成してるみたいだしどうやって決めたのか聞きたいくらいだよ」


ホント、凄い漢だよ。


「でも逆に他人にそこまで介入できるのもうらやましい」


春賀が遠い目で呟く。確かに人見知りな春賀にとってはうらやましいのかも知れないな。逆に富村は絶対そう言う悩み無いだろう。確信できる。


「まあ、あの人には恐怖心ってものがないんだろうね。世間の目なんてあの人にとっては多分、屁みたいなもんさ」


「お兄ちゃん、食事中そう言うこと言わない」


「はは、ごめん」


「全くだ、俺の料理を食ってる最中に汚い言葉言うんじゃないわよ」


突然真後ろに気配が現れ、富村の声がした。春賀はあんぐり口を開けている。


「あと30分で行くぞ。午後からだと思っただろお前ら。残念だったな」


そう言って富村は二階へ行ってしまった。あと30分ってのんびりできないじゃん!!

 春賀と僕は急いで食事を食べるのであった。


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