竹中春樹 過去編 5
「と言うことでだ。今日の課題はお前が精神的な安を得ることだ」
僕は今、再び相談部室に来ている。ついでに言うと愛山優花もいるが、奥の和室で寝ているようだ。
「つまり?」
「お前は腹を割って話せる友人がいないと駄目だ」
「そんな奴持った経験がないよ」
「俺が一番目になってやる」
富村が得意げな顔で言う。僕は信頼という言葉をあまり信頼できない。なぜなら人の心の悪の部分ばっかり見えてしまい、絶望してしまったからだ。
「僕は友達なんか要らないよ」
「お前の都合はいい。そして腹を割ってはなせる友人とは共に旅行に行くレベルじゃないと話にならん」
いやな予感がする。
「だから?」
「今度お前含めお前のの家族と俺が温泉旅行に行く約束を勝手に取り付けた」
と、富村は平然と言った。ほらやっぱり!!
「待って!!それはいきなりすぎるでしょ!!」
「駄目だ。事は急ぎなんだ。おまえ、このまま魔王を飼っていると死ぬぞ?」
突然の死亡予告。
「それはもっと困るよ!!どこで仕入れたのそんな情報?」
「お前の心に勝手に入らせてもらった」
あれ?あれ目が合わなきゃ駄目なんじゃないの?
「どうやって?」
「今日の午前一時お前がねてる所に侵入を仕掛けた。別に変な意味はないぞ。勝手に部屋に入っただけだ」
そういえば朝窓が開いてたな・・・こいつのせいか!!
「人の部屋に勝手に入らないでもらえるかな。あと心にも」
「寝てるときってのは無心状態にあるわけだからとっても侵入しやすいんだ」
「謝れよ!!」
「やだ。ああ、あと部屋物色させてもらったよ。日記はもっとばれない所におけばいい。妹に見られたくないだろう?」
やだって言うな。あと妹がいることまで調べたのかこの男は。
「余計なお世話だよ。そういえば何で妹がいること知っているの?」
「そんなこと俺が知るわけないだろ」
なら仕方がないか・・・・あれ?
「本人が何で知らないんだよ」
「実はカマをかけただけですから」
ただカマをかけただけで僕がかかってしまっただけなのか。何かむかつくな。
「いや、僕がかかってしまっただけか」
「そう言うことだ。ああ、コレお前が行く温泉のパンフ」
そう言って富村は長机の引き出しからパンフレットを取り出した。ずいぶんしわが入ってるな。
「いや、ここは高いんじゃないかな?」
富村の持っているパンフレットはめちゃ高級そうな草津温泉宿のパンフレットだった。もっと大切に保管しろよ。
「予算は俺が全部出す」
奢りって事?かなり高くなるし富村じゃ払えないんじゃないかな?
「大丈夫なの?」
「現在のポケットマネーが53万です」
どんだけだこいつ!!
「はあ・・じゃあいつ行くの?」
「明日」
「早すぎるよ!」
僕はとことん富村に振り回されるのであった。