竹中春樹 過去編 3
「と言うことでだな。お前はその力を自力で封じる力が必要だ」
富村がホワイトボードに文字を書きながら言う。早すぎて手が見えないんだけど。
「どうやるの?」
普通に疑問だったので聞いてみた。
「今俺の心を読んでるか?」
「普通に」
「じゃあ、できるだけ分からないように努めろ」
「難しいよ。大体この力を封じられたことはないんだよ」
封じられたら僕は飛んで喜ぶぞ。
「封じるんじゃなくて抑えるんだ。お前封じたら俺が面白くないじゃん」
自分勝手な人だ。
「・・・で、どうやんの?」
「まずは心にこの言葉を思い浮かべて下さい」
富村はホワイトボードに『うんこ』と書いた。なめてんのか。
「帰るよ?」
「わかったわかった!!ふざけないから帰らんといて!!」
裾にしがみついてくる。しょうがないから戻ることにした。
「今度はふざけないでね」
僕がそう言うと富村は無言でこちらを見た後何事もなかったようにまたホワイトボードに向き始めた。返事しろよ!と言うか心丸見えだぞ!!
「ええーっと、いいや。何かめんどくさくなったから思い浮かべるのは無しでいいや」
「え?他に方法あるの?」
「まあ俺の目を見ろ」
そういって富村は自分の目を指さす。
「分かった」
僕は富村の目を見る。
「俺もお前と似たような能力をいくつか持っててな・・これがその一つだ」
瞬間、意識が飛んだ。
目が覚めるとそこは相談部室じゃなかった。そう、よく分からない物体のようなものが浮遊している真っ暗な空間だった。
「どこ!?」
僕は周りを見渡すが誰も居ない。と思ったら声が聞こえてきた。
「おい春樹!こっちだぞ!!」
声の主は富村のようだ。僕はその方向へと歩いて行った。
しばらく歩くと富村が居た。作業服につるはしを持って。
「・・・ここはどこ?」
格好にはあえて突っ込まないことにした。
「お前の精神世界。いわば体内のようなものだ」
そんなところにつるはしなんか持ち込んでもらいたくない。
と言うか精神世界って常識的におかしいと思うんだけど気のせいかな?
「まあいい。よし、お前のその力の原因を探りに行くぞ」
富村は僕の疑問も無視してさっさと歩いて行ってしまった。
「あ!待って!!」
どうやら僕の力はこの中だと使えないらしい。あの力は切り離されてるのかな?
歩き続けて15分、富村が呟いた。
「お前の全然何もないな」
「いやぁ、それほどでも」
「ほめてねえよ。・・・ん?向こうから何かが来るぞ?」
あれ?何か槍を持った変な格好した奴らが飛んでくる。なんだあれは?
「え?僕の心あんな変な奴らが居るの?」
凄いむかつくんだけど。
「はっはっは!!お前もユニークな奴なんだな!!人の心で動く奴を見たことがあるのは初めてだぞ!!俺以外の時で」
あんたの心にも居たのかよ。
「どうするの?結局?」
「ああ、多分俺に襲いかかりに来たんじゃないかな?」
「え?じゃあ大変じゃん。あいつら飛んだりできるんじゃ・・・ええ!?」
「なんだ?」
飛びやがった、この人。あと疑問的な顔で、ん?ていわれてもこっちが、ん?なんだよ。
「い、いやなんだ?で言われてもどうやって飛んでるの?」
富村は渋い顔で顔に手を当てる。
「IMAGE、だ」
いやそう言われても。
「僕はどうやって飛ぶの?」
「だからな?飛ぶイメージだ・・・・危ない!!」
え?と思った時にはもう遅かった。やりの切っ先が僕の頬をかすめる。同時に富村が僕の体を抱えあげて飛んだ。
というか僕なんで襲われてるの?
「なんでお前襲われてんだよ、切れるぞ?」
「僕の心で切れられても困るんだけど」
「まあいいか、まあこいつらに対処しないとな」
富村は普通に言ってるがさっきからすごい勢いで動いてんだけど。うわ、全部紙一重だよ!!
「どうすんの?」
「うわっと!!・・・ええーっとそうだな。お前ここに居ろ」
そう言って富村は三メートルの高さから僕を投げ落とした。
この鬼畜!!!!!!!!
「あう!!」
足くじいたよ畜生!!