竹中春樹 過去編 2
次の日
僕は再び相談部にいる。対面にはいつも通りいたずらそうな微笑を浮かべた富村が座っている。
「つまりだね、春樹は心が見えてしまうがためにコミュニケーション力の低下を招いた。だからコミュニケーションをしなくなる。再び下がる。その負のスパイラルに取り込まれていると言うことだ」
デフレスパイラルのようなものか。ふむ、確かにそんな感じだ。
「ところで春樹」
富村が不意に聞いてきた。
「なんです?」
「敬語はいい。ところでだが、お前はなんで相談を持ちかけたんだ?その理由が聞きたい。お前の口から」
富村は富村なりにいろいろ試行錯誤していることがうかがえる。僕はとりあえずこれまでの経緯を話した。心が読めることで崩れた友好関係やそういったことを話してみた。
「ふむ」
富村は顎に手を当てて考える。ちなみに今日は愛山は居ない。富村が追い出したらしい。
「やっぱり相談ってそう言うものだよな」
聞かれても困るが多分そう言うことだよ。
「じゃあさ、お前まず俺に対して自己紹介してみろ」
「そんな簡単なことでコミュニケーション力が計れるの?」
「無理」
そんなことだろうと思ったよ。まあ富村だしね。
「じゃあ行くよ。まず生年月日、1994年8月24日。16歳の竹中春樹です」
ここまで言って富村の顔色をうかがう。腹抱えて笑っていた。殴っても良いかな?
「イヤまさかこんな真面目になるとここまで面白いとは」
失礼だろコラ。いくら僕でも怒るよ?。
「・・・やっぱ相談なんかしない」
僕は帰ろうとするが瞬時に富村に回り込まれた。早すぎじゃないのか?
「いやあすまなかった。はいこれ、お詫びの十勝バター。帰る頃には溶けてるだろうから安心して懐に入れといてくれ」
喧嘩売ってんのか、と言う突っ込みをしたくなる。
「・・・本気で帰るよ?」
「・・・いやあ、すみません」
謝っているような無いような・・。とりあえず了承をすることにした。
「分かったよ」
「心の友よ!!」
そう言って富村はまた長机の先の席に瞬間移動していた。本当にお詫びする気があるのか疑問だがお詫びする気持ちがあるのだろう多分。
「とりあえずさあ、自己紹介は無しでいいやめんどい」
あんたじぶんで言ったんでしょうが。
「じゃあどうすりゃいいの?」
僕は正直心が読めても富村の思いは全く理解できない。
「・・・うーむ。まあいいや。とりあえずお前に人の心を引き出す方法を伝授する」
「どうやるの?」
「まず一つ、自分を信頼させることが大切だ」
ふむ、確かに自分を信用させないと相手は心からの思いは打ち明けてくれないだろう。
「二つめ、絶対に他言しない証拠を見せる」
たしかに他の人に自分の好きな人とか知られても困るだろう。
「三つ目、空気を纏う」
「それはあんただけでしょ」
「ええ~~そうなの?」
「そうなのって言われてもね、富村ぐらいでしょ。変な空気纏ってるのは」
「変って言うな」
「じゃあ、妙な空気」
「良いよ」
え、良いんだ。
「僕には空気なんて纏えないよ。一と二をやってみる」
「いや、お前には三もできる素質がある」
どういう確信があるかは知らないが富村は自信満々にそう言った。
「三ができて何の特があるの?」
「一と二の手間が省ける」
それは相談部にぴったりではないか。そういえばここに入ったときの空気は富村の空気らしい。妙に安心できる感じの。
「それは凄いね。でもどうやって纏うの?」
「・・・・・・・・・え?」
え?じゃなくてね?いや疑問視で返されても困るわけなの。
「・・・え?」
「ああ、いやいや大丈夫だ。まあ俺に任せろ」
・・大丈夫かな?