綺麗な祐二4
次の日。
「ひえ!すいません!!」
「てめえ、肩が当たったんだよおるぁ!!」
祐二は、恫喝されていた。
そして祐二の謝りなどお構いなしに不良が殴ろうとしたところ、祐二の頭上を一陣の風が吹いた。いつの間にか不良は四十メートル飛んで顔が変形し、ぴくりとも動かなかった。
風の主は彩菜だった。
「なんであんたが恫喝されてんのよ、あんたは恫喝する方だろ」
そういって祐二をしかる彩菜。ごもっともです。
「え?そんな怖いことできないよ僕」
全く分からないというように首をかしげる祐二。
「ふう、あと五日これが続くのか・・・」
彩菜は頭を抱えるのだった。
そして最後の日。
「なんだかんだ言ってこの祐二にも愛着がわいたわね」
彩菜は呟く。今回は彩菜も相談部室に来ていた。その他メンバーも勢揃いしている。
「祐二、そこに立ってて」
「分かった」
春樹が祐二に指示し、祐二が大人しく従う。
「どうなるのですか~~?」
優花が相変わらず惚けた口調で綾瀬に聞く。
「意味分からん代物が出てくるのよ」
「・・・そうなんですか~~」
優花がそう答えた瞬間、突如祐二の後ろから何かが出てきて祐二を一気に床に引きずりおろし、祐二ごと消えた。
「祐二!!」
麗花が駆けつけるが、それには及ばなかった。突如、さっきまで床だったそこは小さな泉になっており、そこからゆっくりと何かが出てきた。
「泉の女神さんのおでましか」
瑠璃が憎しみを込めた声で呟く。
「泉の女神じゃないんですよ。残念でした」
そこからは泉の女神ではなくいつものあいつの声が聞こえてきた。
「ふ、久しぶりだね」
瑠璃がかなりうれしそうに呟く。
「ああ、何年ぶりか」
祐二がそう言った頃には体の全貌が見えるところまで来ていた。
「祐二」
瑠璃を抑え麗花がゆっくり近づく。祐二はそれを微笑を浮かべたまま見ている。
「なんだ、麗花」
「私はお前が戻ってきてうれしい」
「そうか」
「だから抱擁をしても良いか?」
麗花がそう言った途端、瑠璃以外の女性陣に稲妻が走った。
「「「させるか!!」」」
そう言って麗花を取り押さえようとするが遅かった。
「祐二。お帰り」
「ただいま、麗花」
二人はすでに抱擁をしていた。二人の抱擁は、誰もが見とれるほど美しかった。
「二人共くすぐったいからやめて?」
春樹が腹を抱えながらそう言うと、二人はゆっくり離れた。麗花は顔にかなり赤みがさしているが祐二は何も変化がない。
そして結局祐二は全員と抱擁させられる羽目になった。
「兄貴、春樹には教えたのか」
「何をだ?」
「俺の秘密」
「さあな」
「さあな、か。じゃあ教えたんだな」
「おいおい俺はさあな、しか言ってないぞ」
「あんたが否定しないときは全部肯定じゃないか」
「・・・そうだっけ?」
「そうなんだよ兄貴」
「ははは、さすが祐二だ。じゃあ俺は仕事があるからそろそろ切るぞ」
「ああ、またな。祐一」
「じゃあな、祐二」