綺麗な祐二2
「おかえり、お兄さん」
そう言って祐二を彩花が出迎える。ここまではいつも通りの風景だったのであるが・・。
「ただいま、彩花。いつも済まないね」
祐二は純粋な笑顔で感謝の意を申し出たのだ。
「大丈夫だよ・・・・は?」
彩花は突然の感謝に戸惑いを隠せない。
「僕もしっかりこれからは家事を手伝うよ」
祐二はそう言って台所の彩子の所へ行ってしまった。
彩花はまあ良いか、と思った。普段の祐二と雰囲気は違えども害はないし、逆に一家に対しメリットとなる行動をしているからだ。
しかしそう納得したとしても疑問は晴れない。
「何があったの?」
彩花はただ悩むばかりだった。
「いつもの兄貴じゃね~~~!」
料理を並べている祐二を見た彩音が最初に言った言葉がこれ。失礼にもほどがある。しかしまあ、普段の祐二を見ている彩音にとって祐二のこの行動は不可解そのものなのであろう。
「彩音姉さん。あまりそんなこと言わないの」
「うるさいな。どう考えてもいつもの兄貴じゃないぞあれ」
「で、でももしかしたら今日は心機一転家族に奉仕しようとしてるかも知れないじゃない」
「は?兄貴がそんなことすると思うか?」
「・・・・思わない」
「だろ?絶対この出来事には裏があるんだって。本人に聞いてみようぜ」
「そうね」
そう言って彩花は祐二に聞く。
「学校で何かあったの?お兄さん」
祐二は食卓に並べながら純粋な笑顔のまま答えた。
「今までの僕は周りの人に迷惑ばかりかけていたんだ。今になってそれが分かった。だからそういう事を返上できるか分からないけど、心を入れ替えることにしたんだ」
「うん、だからといって料理じゃないものを食卓に並べるのはよしてくれないかしらお兄さん」
食卓にはよく分からないものが並んでいた。食い物ではないにおいがする。そう、化学的に危ない臭いだ。まさか祐二は料理の腕が正反対になってしまったのだろうか。
「ええ!?食べられないの・・・そうだよね」
「やだ~~こんな兄貴兄貴じゃな~~い!!」
「そうねえ、祐二らしくないわ」
母彩子までがそう言う。
「海のバカヤロ~~!」
祐二は自室に逃げてしまった。
「あれはお兄さんじゃない。お兄さんだけど何か違うわ」
彩菜、彩音、、彩花、彩子が揃った深夜のリビングにおいて、祐二会議は忍びやかに行われていた。
「そうだ。あんな兄貴は兄貴じゃない。だいたい乗りの良さと意地悪さが兄貴の良さだったんだ」
彩音のドM宣言。
「祐二のことは見てないんだけど・・・どんな感じなの?」
彩菜が聞く。すると彩花が口を開いた。
「ピュアよ。ピュアなんだけど何か隠してる感じ。いつものお兄さんは隠していることを公にするけどあのお兄さんはそれを隠すの」
読者にもっとわかりやすく言うと、内気な性格になっちまったってことだ。
「ふん、まるで正反対ね。私はそんな魅力のない祐二は弟として認めないわ」
「そうだ!彩菜姉いいぞ~~!」
結局不毛な議論しか行われないのであった。