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綺麗な祐二

相談部室では祐二と綾瀬が部屋の掃除をしてそろそろ帰ろうとしている頃だった。


「祐二、きょ、今日は一緒に帰ってやってもいいわ!!」


綾瀬がしどろもどろになりながら祐二に話しかける。いつも通り彼女はツンデレキャラだ。


「わ、私はうれしくないんだからね!!」


祐二も負けじと返す。根本的に駄目だった。綾瀬の精一杯のおねだりも祐二がこうでは彼女も余計強情になってしまうのは目に見えている。


「いいわ!ふざけるんだったら帰る!!」


「うぐぅっ!」


どん、と綾瀬は祐二を押し、部屋からさっさと出ようとする。綾瀬がドアを開けようとした瞬間後ろでざばぁぁんと水の音がした。

綾瀬はとっさに振り返る。


「は!?」


綾瀬がびっくり仰天声を上げる。泉があり、そこから体を出しているよく分からない精霊みたいな人が祐二を抱えている。


「あなたが落としたのは綺麗な祐二ですか?アホな祐二ですか?」


綾瀬は一瞬状況が把握できなかった。当然である。


「はっ!え、ええと・・・」


綾瀬は迷う。これで綺麗な祐二を選べばもしかすると優しくしてくれるかも知れない、と。いや、こういう場合、正直に落とした祐二を答えれば綺麗な祐二をくれるのではないか?と綾瀬は考えた。


「さっき落としたみずぼらしい祐二にございます」


綾瀬はにやりと口元をゆがめながら膝をつき、願いを請うような姿勢になった。


「あなたは正直者ですね。この綺麗な祐二をあげましょう」


計画通り。綾瀬は頭の中で大笑いをした。


「ではごきげんよう」


そう言って泉の精霊は去った。床に寝そべっている綺麗な祐二はゆっくりと目を開けた。


「・・・?いったい何だったんだろう?」


祐二は呟く。そして上体を起こす。その際、綾瀬はしっかりと祐二の手を握って起き上がらせてあげた。


「祐二、大丈夫?」


綾瀬は声をかける。すると祐二はこういった。


「うん、大丈夫。みゆき、ありがとう」


普通の祐二は適当なかわし方で去るところをこの祐二はしっかりと目を見てうれしそうに言った。


「え!は・・・う、うんだったら良いんだけど、さ」


綾瀬は顔を真っ赤にしながらそっぽを向きながら返事をした。


「じゃあ一緒に帰ろうよ。家も近いんだしさ」


家が近いことは後付け設定です。文句は認めません。


「ひゃ!?あーうん」


綾瀬が答えにくそうに言うと祐二は顔を悲しくして、


「いやなの?うん、そうだよね。僕は一人で帰るよ」


と言って綾瀬に悲しげな笑顔を見せて帰ってしまった。綾瀬は酷い罪悪感をかんじ、その後を追った。


「祐二!!一緒に帰ろう!!」


綾瀬は祐二の前に出てそう叫ぶ。祐二は悲しげな顔をひまわりのような笑顔に変えて、それに大きくうなずいた。


「うん!」


まるで純情ラブコメを見ているようでくすぐったい。


「じゃあ、帰りましょ?・・・ひゃ!?」


歩き出すと祐二が突然綾瀬の手を握ったのである。


「駄目?」


祐二に上目遣いで言われる。もとより綾瀬に断るつもりはないので首が痛くなるくらいうなずきまくった。綾瀬は首を痛めた。


二人共無言で歩く。不意に祐二が口を開いた。


「僕はね、元々捨て子だったんだ。実は生き別れの双子の兄が居るんだ」


そう語り出した祐二を見て綾瀬はものすごくびっくりしてしまった。こんな設定加えちゃって良いのか、と。


「その兄がね、今はヨーロッパの方で戦闘集団を作ってるんだけどね。会ったことがないんだ」


綾瀬はまず戦闘集団について突っ込みたかった。しかし祐二の顔があまりにもしおらしいので突っ込むことができなかった。

祐二は今まで見せなかった心の奥底を垂れ流しにするように話し続けた。

 結局二人はそのまま家に帰った。


「じゃあね、みゆき」


「じゃあね、祐二」


綾瀬がそう答えると祐二が少し顔を赤くして言った。


「なんか・・・・恋人みたいだね」


綾瀬は何も言えなかった。意識が少しの間飛んでいたのである。結局綾瀬が気付くと祐二は居なかった。


「あ!あのバカ!!何が恋人よ!!」


綾瀬は口ではそう言うが心の中は正反対であった。





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