北条麗花過去編 6
どこを探しても見当たらない!!どこに行ったんだあいつは!!とりあえず田村とメールでやりとりをしているが向こうも見つからないらしい。全く、タイミングの悪い奴だ。とりあえず相談部室で待ち構えるか、・・・ん?あの段ボール今さっきはあそこにあったよな。
「まさか・・・な」
段ボールが動くはずがない、つまり中に人が入っていると言うことだ!!
「おりゃああああ!!」
私は突然取り出した木刀を持って一目散に段ボールに突撃をする。
「油断したな祐二!!バレバレだぞ!!」
振り下ろされた木刀はまたしても祐二には届かなかった。突然段ボールから出てきた祐二の木刀よって阻止された。しかも片腕の力で。
「しっかり隠れられたんだと思ったんだが」
片腕で私の木刀を止めつつ、祐二は立ち上がる。私の木刀を防げたのは母だけだったのだがこう二度も止められると自信がなくなってくる。
「いきなり消えて何のつもりだ。あと少し、話したいことがあってね」
私はできるだけすごみをきかせて言う。やかましい男子はいつもこの方法で追い払っている。勿論脱兎の如く駆け出すが。
「それよりも良かったじゃん」
祐二はいきなり満面の笑みで言う。・・・全く効かないのが悔しい。
「田村とメアド交換してさらに一緒に俺を捜すとはもうそれは友達だろ」
・・・・無意識にメアド交換をした。よく考えたらものすごい進歩じゃないか?まさか祐二はこれを計算していたのか?
「・・・・祐二には負けたよ」
ははは、ここまですがすがしい気持ちになったのは初めてだよ。つい笑みがこぼれる。おなじく祐二も笑っている。
「あーーー!居た!」
廊下の曲がり角から田村が現れた。祐二はそれを笑顔のまま見る。
「ってあなた達何仲良くしてるの!」
近くまで来て急停止した田村が私たちに対して怒鳴る。
「田村、コイツをよろしく。お前が新たな友達だ」
そう言って突然祐二が私の背中を押す。え?これで終わり?これで私の相談は終わりなの?そんなのいやだ。
「・・・祐二は何も分かっていない」
振り返り、そう呟く私を祐二がなんだ?と言う顔で見る。意外にもそこに田村が割って入った。
「ここは私に任せて、友達でしょ?」
そう言いながら祐二と対面する田村。すごく、大きい背中だ。
「なんだ?お前らいきなり何をしでかす気だ?」
祐二は未だに状況がつかめていない。だが私と田村の間ではなにが始まろうとしているのかが明白に分かっていた。
「あなたは鈍感すぎるの」
田村がいきなり祐二に告げる。単刀直入すぎて笑えてくる。
「・・・・・は?」
祐二が五秒後、頭にはてなマークを50個浮かべてから答える。目の錯覚のはずだ。
「あなた恋愛経験ある?」
これも単刀直入だ。
「あるわけ無いでしょ」
メモメモ、祐二はまだ恋愛経験がない。つまり、私がなれば初と言うことだ。
「・・・わけない、は無いと思うけど。ホントに鈍感ね。ラブレターとかもらったことある?」
確かに、祐二なら二つや三つもらってもおかしくないはずだ。
「あるよ。数は覚えていない」
やっぱり、祐二だからそれはあり得るが・・・全部断ったと言うことか?
「全部断ったわけ?」
「正面からな」
まさか祐二には好きな人が居るのだろうか・・・その可能性もないとは言い切れない。
「なんで?なぜ断ったの?」
「彼女が居たら俺の時間が圧迫される」
もっともな理由だがそれで断られる方は悲惨だな。でも好きな人は居ないと言うことかな?
「あなた相手の気持ち考えたことある?」
「恋愛としては全く」
ああ、祐二は女の子の気持ちを理解しようともしない訳ね。じゃあ鈍感って訳じゃないんだ。
「じゃあさ、麗花の好きな人を言い当ててみて?」
・・・おいおい、ちょっと待って。後祐二も顔を近づけないで直視しないで!!あああ~~顔が熱い!!
「・・・・」
無言でこっちをずっと見てくる祐二。恥ずかしいけどちょっとうれしいのはなぜだろうか。
「・・・・誰だ?」
祐二には結局分からなかったらしい。しかしなんだ、凄くむかついてきた。
「はあ・・・やっぱり根が鈍感なのね」
はあ、やっぱりそうだよね。私の好きな人って誰だろうか?そう考えると祐二のことが浮かんでくるが・・・まさかな。
「余計なお世話だ」
間髪入れずに祐二が突っ込む。あまりにも真面目な顔で突っ込むものだから笑ってしまった。あ、こっち向いてきた。
「笑いやがって、お前好きな人とか居るのか?」
笑い声を聞かれてしまったよ。まずいな・・居ないと答えるのも・・嘘をついているようでついていないようで・・・
「まちなさい」
考えあぐねていると田村が助け船を出してくれた。ありがとう心の友よ。
「ええーっと・・・そう言うのはあなた自身が気付いてあげることが大切。相談部として読心能力を鍛えたいんならそうするべきね」
うんうん、尤もな意見だ。祐二!!お前は鈍感すぎる!!
「・・修行が足りなかったようだ。で、なんでこんな話題になったんだっけ?」
・・・忘れてしまった。
「いいわ、あなたが麗花から手を引こうとしたからよ。麗花はね、あなたのことが「アッー!」何でもないわ」
危なかった!!田村も油断ならない奴だ!!大体祐二のことが好きなど・・こんな奴なんか・・・
「突然怒鳴るなアホ」
ぽかっと軽く叩かれた。やったなこいつ~。なんてことにはならない。あれ?田村がわなわなしている。
「なんであなたたちそんな仲良いのよ!!」
さっきまで味方じゃなかったか?昨日の友は今日の敵か?
「そう見えるか?」
私が問い返す。すると田村はこんなことを言ってきた。
「祐二が気軽に叩く所なんて見たことがないわ!!もしかするとあなたたちホントに・・・」
田村がいきなり自己完結を始めようとしている。これは止めなければまずそうだ。と、思っていると田村の頭を突然祐二がなでた。・・・ええええええ!?
「ほわぁぁぁ~ん」
ものすごい甘えた声を出しながら崩れる田村。そりゃねえ、好きな人になでてもらったんだからねえ。しかし何だ、私もしてもらいたいのか?この感覚は。それは・・プライドが・・!
「ありゃ、倒れちったよ」
崩れる田村を見下ろす祐二。そしてそのまま祐二はこちらを向く。
「どうすりゃいいんだ?ってお前なんて顔を・・・」
え?顔になんか付いてるのか?私は顔をぺたぺた触る、が別に変な感触はない。なんだ?
「私の顔がどうかしたか?」
「なんか・・なでてほしそうな顔してたから」
げ!顔に出てた!?この北条麗花の顔に!?これは末代までの恥だ・・・。死のう。
「まて!飛び降りようとするな!!」
飛び降りようとする私を止める祐二。え?抱きついてきてる!!祐二が私に・・・
「ふぅ・・」
私は、倒れた。
「おぉぉぉい!お前までぇぇぇぇ!!」