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ボクシング部、無謀な挑戦:2

「そういえば何でお前ら殴り込みに来たんだっけ?」


校庭のど真ん中で富村は自分を取り囲む安藤達に問う。


「田中だ、お前らんとこの田中が俺の彼女を強奪しやがってよ。気にいらねえんだよ!!」


安藤は当てもない怒りを富村に対し放つ。富村は冷めた目で安藤に問い返す。


「メンツ、とやらのためか」


安藤は不敵な笑いを浮かべながら答える。


「まあ、そう言うことだ。だからお前には少しボコられてもらうぜ」


富村を取り囲むボクシング部は八人。どいつもこいつもピアス茶髪金髪でただの不良にしか見えないが、腕は本物だろうか。そしてそれを取り囲むようにあらゆる運動部のギャラリーが集まっていて、校庭を譲って(富村に弱みを・・)くれた心優しい野球部もギャラリーの最前列で見守っている。まあ、そうじゃないとかわいそうだし。


「俺を倒したくば、この人数の三倍はもってこいというものだ」


「やれ」


安藤の一言でまず金髪と金髪が走り出す。金髪同士区別なんて付けなくても良い。


「you cannot escape lose(お前は絶対負けるw)」


富村が英語でそんなことを呟く。勿論金髪には聞こえてる、理解は別として。


 先に走り出した金髪がまず富村の顔面に向かってロイヤルストレートパンチ。しかしそんな愚直な攻撃が当たるはずが無く、その拳は空を切る。そこには軽く首を傾けた富村の顔があった。だが安藤直属部隊(笑)は集団戦法が得意なので富村の避けを予測し、金髪(先)のストレートパンチよりわずかに遅れたタイミングで金髪(後)がボディーフックを放っていた。

 人は片方の事象に集中するともう片方の事象には反応できない。その法則をうまく利用した攻撃だった。バカに見えてなかなかこざかしい手を使うものである。

 しかし現実は非情だった。ボディーフックは富村によって片手で止められる。富村はボクシング部のパンチを片手で、しかも手のひらではなく腕を掴む形で止めていた。


「・・・なに!?」


金髪が驚きの声を上げる。


「残念!!こっちは行き止まりでででででーす!!」


そこからの動きは速い、まず最初にストレートパンチを放った金髪に「で」のかけ声で五連ビンタ。見た目こそビンタだが音とかひるみ方とかがビンタじゃなかった。それだけで金髪は墜ちた。


「参ったなぁwもっと耐えてくれよ」


非難の声を上げる富村。ボクシング部じゃなくて富村がおかしいのは言うまでもない。


次に隣の金髪があれだけで墜ちたのを見て口を大きく開けてあんぐりしている(口の中真っ黒)(タバコ吸い過ぎ)もう一人の金髪の腕をひねり、体全体を使って回す。金髪の体は回転しながら宙を舞い、地面に落ちる。ギャラリーからおお~~~~と言う声が上がる。


「・・痛えよ~!!!!」


金髪が腕を押さえながら悶える。あんな投げ方をされたのだから腕の骨折は免れないだろう。悶える金髪を一瞥し、富村は安藤の方を向いた。


だが間髪入れずにもう三人の茶髪、金髪、白髪(銀髪って言ってやれよ)が襲いかかる。金髪が富村を細かいシャブで後退させる。そして白髪が後ろから富村を羽交い締めにした。ボクシング部、勝機!

だが富村は金髪のストレートを前にして冷静だった。


「マトリック○を思い出す。確かこうしたんだよな」


富村は白髪の髪の毛をわしづかみにし、背負い投げをするときのように腰を低くし、おもいっきり前方に投げ飛ばす。顔を殴ろうとしていた金髪の上から銀髪が・・いや白髪がのしかかる。


「ぐわあ!」


そのまま銀髪と・・いや白髪と金髪がもつれ合い、金髪を銀髪が・・いや白髪が押し倒す形にたまたまなってしまった。正直男同士が組み合う姿は見るに堪えない。ほら、ギャラリーもみんな目を背けている。だが一部が食い入るように見つめていた。


 またしても間髪入れずに残された茶髪+2人が襲いかかる。チームワークには自信があるらしい。さらにこいつらはなかなかの強者だった。まず茶髪が顔面にフックをお見舞いするが、これはうまく避けられる。だがさらに+2人のどっちかがフックをする。


「なに!」


これは富村でも手でガードせざるを得なかった。さらに+2人の残りが逆方向からわずかに遅れてフックを放つ。


「ぬ!」


これも手でガード。両手ががら空きな富村、そこに茶髪のストレートが入る。かに思えたその拳は空を切る。富村は両手をガードに使ったまま体を水平にし、その勢いで茶髪を蹴り飛ばす。


「ねの!」


茶髪「ぐふぉ!」


3mぐらい茶髪はぶっ飛ぶ、そして起き上がっては来ない。さらに富村は体の向きを戻し、両隣で再びパンチをしようとしている二人の腕を持ち、互いの顔にぶつける。これは痛い!さらに痛がっている二人の頭同士をぶつける。悪役の技である。二人は撃沈し、残ったのは安藤だけとなった。


「来いよ安藤、部下なんか使わずとっととかかってこい!!」


安藤に挑発の言葉をかける富村。安藤は額に青筋を立てる。やけくそになってるっぽい。


「やろうぶっ殺してやらぁ!!」


安藤が爺臭い声を上げながら富村に猛突進。失敗した。富村が足軽く横に避け、足をかけて安藤はそのまま一気にずっこける。あまりにも綺麗にずっこけるのでギャラリーからはドッと笑い声が出た。


「ぶほぁ!!てめえやりやがったなぁ!!」


そりゃ怒ると思う。プライドをズタズタにされた安藤に冷静さなど残っていなかった。安藤はどこからともなく金属バットを取り出す。


「・・・おや?」


富村は少し怪訝な顔をしたがすぐに冷静な顔に戻る。ギャラリーはどよめきすらわかなかった。金属バットを生成するくらい、安藤にとっては造作もないことである。


「へっへっへ、これでてめえもおしまいだ!!」


安藤はどこからともなく取り出した金属バットを富村に一気に振り下ろす。しかし富村の右ハイキックによりその攻撃は防がれた。一時的に止まった足をさらに動かして富村は金属バットをたたき落とす。そしてひるんだところを回転蹴りでぶっ飛ばされ、口の中に青汁を投入されて安藤は意識を失った。富村にとって青汁を生成するなど造作もないことである。


数分後、富村も去りギャラリーも霧散してきたところで生徒会長椿が数人の生徒会を伴って現れた。その姿は神々しく、ギャラリーのことごとくが道を空けていった。


「何の騒ぎですの?」


椿がギャラリーの一人に聞くとギャラリーは一瞬意識を失いかけ、再生してから答えた。


「どうやらボクシング部の相談部に対する殴り込みのようでした」


「でした?」


椿は疑問に思う。騒動が始まったのはさっきだ、出動準備をしてから出発してきたがそれでもあまり時間は経っていない。だから過去形であるのはおかしいのだ。


「え、ええ。もう終わってしまったようです」


すぐさまギャラリーをかき分け(かき分けてない)集団の中央まで急ぎ足でゆく椿。そこには口から緑色の汁を垂らした安藤とアホとバカと間抜けとそれ以外が気絶墜ちしていた。


「生きているか確認してきて」


椿が隣の生徒会の女子に指令を出すと、素早く安藤の元へ行き、脈をはかりはじめる。女子は、しばらくした後頭上にピーサインを出す。多分生きているサインなのだろう。椿もうなずいている。


「誰がやったんですの?」


さっきのギャラリーに再び問いかける椿。しどろもどろになりながらもしっかり答えてくれた。


「と、富村君が安藤達相手に一人で勝ちました」





椿はすぐに相談部室へ向かう。生徒会長としてこのようなことは注意しなければならない、相手が富村であってもだ。椿は相談部室のドアをノック無しで開けるが居ない。だがここには奥がある、ふすまを開けると富村達が居た。

 春樹が口を開く。


「ええ~っと、何のご用かな?」


「富村祐二にちょっと話がありますわ」


春樹は寝っ転がっている富村の背中を叩く。


「祐二君起きて」


「・・・なに?」


富村はうつぶせのまま答える。器用なものだ。


「生徒会長が話があるって」


「この前のアイツ?」


椿は今の言葉に少しいらっと来たが抑える。


「うん、でね?」


「なんだ」


「そこに来てるんだ、祐二君の真上」


富村は寝返りを打ちゆっくりと向きを変える。


「・・・・やあ」


椿は祐二と目を合わせる。祐二と数十秒間にらめっこが続き、椿が負けて顔を背けてしまった。


「とにかく・・・!来てもらいますわ!!」


椿は真っ赤な顔でごまかすように怒鳴って乱暴に富村の手を取り、相談部室から連れ出してしまった。残された春樹はなんだかよく分からず、瑠璃は一言呟いた。


「祐二は私の物なのになぁ」


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