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引きこもりを何とかしろ final

私は姉の部屋の前にみんなを案内した。



予想通り鍵はかかってるし気配もない。引きこもってからずいぶん経つが、一応生きてることは分かる。ドアの前に飯を置いておくとしっかりと空の状態で再び置かれている。だから多分生きているだろう。多分。

 ところでだ、なんで富村さんがここにいないのか気になる。


「さっきから気になってたんですけど。富村さんどこですか?」


すると竹中さんも首を振って分からないという。でも口を開いた。


「君の部屋の可能性が高いね」


私は脱兎の如く駆け出す。確信は持てる。あの人が言うんだし富村さんの行動パターンからすると・・・まずい!!


バタン!!


あ!やっぱり居たよ!え?待ってあれ読んでるの私が勝手に書いた小説じゃない。しかも笑ってるし!笑うな!


「返せ私の小説~~!」


敬語も無しに猛突進!!富村さんは今気付いたのかこちらを見て笑顔が固まっている。


「い、いやこれには深いわけがあってだな・・・ひぃ!」


そのまま私は富村さんを押し倒した。マウントポジションを取ったからにはこちらの優位は確実。


「さて、小説を返していただきましょうか?」


「とてもブフ・・・面白かったよ・・クスッ」


その面白いはね、小説を書いた人にとってどこまで失礼極まりない事か分かってらっしゃるのでしょうかね~~。


「早く差し出しなさい」


すると富村さんは大人しく小説を差し出してくれた。あれ、以外だ。もっと粘ると思ったのに。ん、後ろを指さして・・・げ、綾瀬さん。何で私睨まれ・・・・。ああ、押し倒してるからね。


「あああーーーーーーーーーーーー!!?」


 私はこの戦いで多くを学んだ。そして、恋とは恐ろしいものであると再び痛感したのだった。


ボコボコの富村さんと綾瀬さんと苦笑いの竹中さんと私は再び姉の部屋の前に来ていた。私はドアをノックする。勿論返事はない。私と富村さんはアイコンタクトをする。そして富村さんが私の体を持ち上げ水平にし、頭からドアにってええええええ!?


「待った!待った!」


鼻先数センチのところで止まった・・・死ぬかと思った。


「何のつもりです「祐二!!!!あなた不潔よ!!!女の子の体に沿うペとペと触るもんじゃないの!!」


綾瀬さんが富村先輩の胸ぐらを掴み壁に押しつけながら怒鳴りまくる。


「ひぃぃぃ~ごめんよ~~かぁちゃん~~。店番はしっかりや・・・すいませんでした」


途中までガキ大将らしくふざけていたが綾瀬先輩の剣幕を見たら無理になったらしい。そして富村さんは綾瀬さんの頭をなでる。するとなんと言うことでしょう、綾瀬先輩の顔がまるで猫のように優しく・・・!


「にゃ~ん。祐二~」


突然祐二にすり付く綾瀬先輩。何が起きたのか分からない、と思っていると隣の竹中さんが説明してくれた。


「祐二になでられるとみゆきは恐ろしく甘えん坊になるんだ。ただ祐二はあの形態をあまり好きじゃないらしいけどね」


はぁーん。いやホントに綾瀬先輩のイメージがどんどん崩れていく。


「おい、離せすり寄るなズボンに手をかけるな耳に息を吹きかけるな」


富村さんが綾瀬先輩にとらえられている。しかも顔だとかいろんなところが・・・ああ!18禁だ!!


「うちでいちゃつかないでください!!」


「あなたは私の味方だと思ったのに・・・私はこうして見限られていくんだわ」


え、寒気が・・・まさかこの感覚は姉!?


「お姉ちゃん?」


私が振り向くとそこには肌が透き通るように白い、部屋で何をやっていたのか全く太っていない姉が居た。その目には涙。


「あなたもやっぱり私とは違うのね!!!」


そう言って泣きながら走ってドアまで行ってしまう。


「あ、おねえちゃ」


閉められた。しかしまあよく太らなかったな。折角出てこられたのに逃がすとは・・・私とは違うという単語にも驚きだ。


「さて、ここからだね」


竹中さんが楽しそうにドアを見つめている。え?何があったの?そして後ろで正気に戻った綾瀬先輩が突然焦り出す。


「あれ?祐二どこどこどこ?」


富村先輩が居ない?まさかだけど・・あの間に入ったというのか?姉の部屋に?


「キャアアアアアア!誰よあんた!!!!」


中から姉の声が聞こえてくる。あーあ、あの人に捕まったらおしまいだな。ご冥福をお祈りします。


「ん?ゲーム機がいっぱいあるじゃねえか!!おお、これもらってくぜ!!」


そういえば姉ちゃん引きこもってる間は真夜中にゲームショップ行ってたりしてるんだっけ。典型的な駄目人間じゃん。


「まって~~~それは私の命なの~~返して~~」


姉の悲痛な叫び。しかしよくもまあ初対面の人にやるな。


「お、これはFirst Person shooter(FPS)ではないか!俺にもやらせろ!」


お姉ちゃん困ってるよ。あとそこはFPSで良いんじゃないか。


「・・・ほお?」


あれ?お姉ちゃんなんか静かになったよ?


「FPSのエジソン(?)(自称)(アホ)のこの私に勝負を挑もうなんて・・・って何勝手に始めてって・・・すごいわね」


あれ。何かうまくいってるのか?


「これで食ってますから」


それはあまりにも無理なボケだよ。


「納得」


納得しちゃ駄目でしょ!!


「・・・まあいいや、そこに座りなさい。あ、もう隣に座ってるよ」


お姉ちゃんが隣に座るのは心を開いた人物だけだ。とすると富村さんに心を許したと言うことか、それはゆゆしき事態だ。


「何か話でもあるのかしら?」


少し雰囲気が落ち着いた声が聞こえてくる。その前にこの部屋のドア音が駄々漏れだが大丈夫か?


「俺はかつて、天空の覇者と呼ばれていた」


・・・・・・・・・?


「ふむふむ」


いやいきなりでよく分からないんだけど。あとお姉ちゃんも何で肯定するの。


「だがな俺は気付いたんだ。覇者として生きるより、人のために生きるただの人であることの方がふさわしいと」


富村さんが言うと本当のような気がする。不思議だ。


「いい人・・・なんだね」


おお、しんみりしたムードになっている。このままいけばうまくいくかも知れない。


「そうだ。俺からの質問なんだが、お前は何でここから羽ばたこうとしないんだ?」


羽ばたく、というのは多分部屋から出ると言うことだろうか。


「下らない、何もかも下らないの。人生が簡単過ぎるのよ。私は何でもできた、勉強なんてしなくてもテストでは良い成績をとれる。容姿を使えばアイドルにだってなれる。何もしなくてもできてしまう。そんな人生、まともに生きる価値はない」


ええーそれは天才の余裕というやつですか?まあかなりシリアスなムードなんだけどお姉ちゃんあんな事私に話したことあったっけ?


「あ、死んだ」


そこでゲームの話題に移るのですか。ホント分からないなあの人は。


「違う、そこはここに敵が居るし何も考えないで進むと十字砲火を食らうわ。貸してみなさい」

「ああん」


姉ちゃんも何でさっきのことがなかったように普通にゲームやってんの。ムードって考えたことあるの?あとああんっていうな。


「ビューティフォー」

「ふん。こんな所私に任せればチョロいわ」


おお、姉がゲームを進めたらしい。あの二人は妙に打ち解けてるみたいだ、だがそのせいで綾瀬先輩の握り拳が真っ赤に燃えている。


「誰だか知らないけどあの女ぶっ殺すわ」


まって!お姉ちゃん長年の引きこもり生活でなまってるのよ!!あ、ドアに手をかけて・・おお、竹中さんが止めてくれた。


「祐二の邪魔をしないであげよう。君は祐二に嫌われたくないだろ?」


扱いを心得ているというか何というか。


「・・・分かったわよ」


そう言ってドアに向けて蹴りを放とうとする綾瀬先輩を止めた。凄いよ竹中さん。


「もう飽きた」

「君は飽きるのが早すぎないかい?」


ああ、こっちは少し進展したのか?


「いいじゃん。そう言う性格なんだし。あ、君名前ある?」


聞き方が凄い独特だな富村さん。


「あるに決まっている。私の名前は金子瑠璃(るり)よ」

「・・・・・・ロリ?」


バキィ、と中で音がする。続いてどんがらがっしゃーんと言う音も出てきた。そりゃ怒るわな。


「sorrysorry軽いジョークだ」


一応平気そうな富村さんの声が聞こえる。お姉ちゃん人を殴ったことなんてあったっけ?


「全然こたえてないみたいね」


「いえいえ老体には染みますよ」


「ははは、あんた面白いわ」


まああの人を見たら奇妙か面白いかのどちらかだと思うけど。


「人生がつまらないか・・・・じゃあ自分から探そうとはしないのか?」


「私は行動力がないんだよ。向こうから来るのを待つだけさ」


ちょっとシリアス。


「え、いきなり顔を近づけないでよ」


え!?今どんな状況なの!!?


「ファンタスティックは追い求めるものなんだよ!!待ってたらいつまで経っても来やしない!!俺は常にファンタスティックを追い求めている。求めているんだったらな、自分の足で、自分の手でつかみ取るもんだ!!」


ジャーンと言う効果音がお似合いなセリフを富村さんは言ってのけた。トレジャーハンターだったらしい。


「・・・・そうね、いつまで経っても来やしないわよね」


おや?お姉ちゃんの様子が・・。


「ああ、そうだ。こんな部屋に閉じこもって何が来る?」


「何も来ないわ。私は逃げていただけかも知れない。決めた、私あなたとファンタスティックを追い求めるわ!!」


え?話がいきなりぶっ飛んでます。


「そうか!じゃあお前相談部に来い!!俺と一緒にファンタスティック!!」

「year!fantastic!」


なんだかよく分からないけど、良い方向に進んでいるらしい。だが心配だ。

 そして数分後富村さんが出てきた。お姉ちゃんはどうしたのだろうか。


「お姉ちゃんはどうなったんですか?」


富村さんは私に顔を近づけて、三人に聞こえる声でいった。


「サクセス。学校は明日から来るらしい」


 ヒストリーオブ富村祐二


今日は俺と同じ思想を持つ金子瑠璃という人物と出会った。これは運命の出会いと言えるだろう、とりあえず引き合わせてくれた金子渚という人物にも感謝だ。瑠璃はかなりのゲーム数を籠もっていた時にこなしたようで、知識量や技術では俺を越える。なかなかの人材だ。

 あともう一つ、さっき言った金子渚。是非我が部に突っ込み要員としてほしい。おっぱい要員も居るしクール剣道要員も居る。だったら突っ込み要員も居なくちゃバランスが悪いからね。

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