表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/61

引きこもりを何とかしろ2

翌日、とりあえず相談部室に寄ることにした。友人に一緒に帰ろうという誘いを受けたがそれはしっかり断る。そして体育館と本棟をつなぐ廊下の一歩手前の位置の一回にある相談部部室。そこへ私は足を運ぶ。今日は比較的早く終わる日だったのでまだ夕日ではなく、弱めの太陽だ。熱いような熱くないような、じめじめした暑さをこれでもかと言うほど放ってきていやになっちゃうわ。

 今回はドアをノックせずに開ける。


「え!祐二!?」


いきなりそんな声が対面の人から放たれる。私は富村祐二じゃない。と言うかこの人、二年生で学校の中でも上位に入る(あいまい判定)綾瀬みゆき先輩ではないか。女子バスケットボール部の新星とよばれたあの方がなぜここに!?


「なんだ、祐二じゃないんだ・・・はあ」


あと富村祐二じゃないからって凄いがっかりした顔にならないでください。一応これでも私客なんです。


「あの、昨日きた金子渚と言うんですけど・・あ、竹中さんに聞けば分かると思います」


「あ、そうなの」


綾瀬先輩はため息をつきながらゆうううっっくりと席を立つ。半端無く怠そうに。もう三度ため息をつきながら、私泣きますよ?


「竹中~~~出てこい~~」


間延びした声で竹中さんを呼ぶ綾瀬先輩。いつものあのしゃきっとした先輩は何処へ?


「僕??」


「そうよ、御指命だってさ。モテモテね~」


竹中さんはふすまを開けておくから出てくる。モテモテって私そんなこと考えてません。わたし自分より可愛い人は好きになれないんです。逆に綾瀬先輩はふすまを閉めて奥に引っ込んでいった。


「あ、金子さんだ。ちょっと今彼買い出しに行ってるんだけど待っててくれる?」


彼って誰だろう。やっぱり富村祐二のことかな。姉と妹はスポーツ万能で超有名だけどあの祐二とか言う男は別の意味で有名だ。あとこの人が彼って言うとマジで彼氏のことを言ってるみたいだし、それが不自然じゃないところが怖い。私変な趣味に目覚めてしまうかも知れません。


「彼って・・・富村祐二のことですか?」


すると綾瀬先輩が怒濤の勢いで奥のふすまを開けて出てくる。


「え!?祐二来たの!?」


竹中さんがそれを押しとどめる。凄い絵柄だしまさか綾瀬先輩は富村祐二のことが好きなんじゃないだろうか?そこまでの男なのだろうか?

 そして奥の部屋に押し込まれてから綾瀬先輩の猛チャージは終わった。


「ごめんね、みゆきは祐二のことになると周りが見えなくなってね」


みゆきって・・・かなり仲がよく見えるんですけど。あとさっき疑問に思ったことがあった気が・・・そうだ、買い出しに行くって何を買い出しに行ったのだろうか?


「その通り富村祐二はコーヒー豆を買い出しに行っただけだよ。すぐに帰ってくるから安心して」


思考を呼んだように笑顔でそう言う竹中さん。その笑顔を見るとこっちまで笑顔になっちゃう。そんなことを考えていると突然後ろのドアが開く。


「ブルーマウンテン買ってきたぞ!!おら!これ領収書だ」


入ってきた美形男性はそう言って竹中さんに領収書を渡し、奥のふすまを開けて入っていく。あれが富村祐二なのか?想像通りのような想像外のような・・あと領収書ってまさか


「コーヒーは部費ですか?」


竹中さんは苦笑いしながらこう答えた。


「相手に出して緊張感をほぐし、真の悩みを引き出す。って名目で自分たちが飲んでるよ。ああ、祐二の淹れるコーヒーはそこらの喫茶店よりかはうまいよ。どうせなら飲む?」


うまいとかそう言う問題じゃないっす。それあの生徒会長にばれたらやばいっす。え、友人の間では『コーヒーの鬼』と呼ばれている私に飲ませても良いのかしら?・・まあいただくけど。


「はぁ。じゃあいただきます・・・」


「ほんと?じゃあちょっと祐二に頼んでくるね」


そう言って竹中さんは奥のふすまを開けて入っていった。なんだかあの人達家族みたいだなぁ。みていて和む。


「なんで祐二の入れたコーヒーなんか!!」


綾瀬先輩の声が聞こえる。あれ?さっきはあんなに祐二祐二連呼してたのに何が起きたんだろう。このことから導き出せる答えは一つか・・

 ガラっとふすまを開けて出てきて閉める竹中さん。少し疲れてるみたいだ。


「ごめん騒がしくて」


「いえ、全然。ところで綾瀬先輩って何ですか?ここの部員なんですか?」


関係ないことを聞かれてぽかんとしている竹中さん。


「うんそうだよ?」


なぜあの人がここにいるのかはそう言うことか。だがそれだけじゃ理由にならない。


「何でバレーボール部の綾瀬みゆきさんがこの部活にいるんですか?」


それには間髪入れずに答えてくれた。


「みゆきが祐二を好きだかさ」


予想はしていたが想像はできなかった。あの何回告白されても全く取り合わなかった人に思い人がいたなんて誰も想像するまい。でもやっと合点がいった。あの人の答え、ツンデレだ。


「あの人はツンデレですか?」


竹中さんは少し考えたあとうなずきながら答えてくれた。


「多分そうだね。最初はそんなキャラだとは知らなかったけど」


ああ、私の中であの人のイメージがどんどん崩れていく。恋とはこういうものなのか?気を付けなくちゃ。

 後ろのふすまがバン!!と開かれる。そして笑顔の富村祐二が現れる。奥でむすっとしながらもおいしそうにコーヒーを飲む綾瀬先輩も見える。


「コーヒーを飲みたいと言った!・・・・・」


笑顔のままこちらを見て口をぱくぱくさせる。何があったんだろうか?そのまま富村は竹中さんと同じ高さ高さに顔を持って行く。そして少し話したあとまたふすまの奥に戻ってしまった。ええ~~?

 そして再びふすまがバン!と開かれる。


「君がコーヒーを飲みたいと言った金子君かね?」


凄い笑顔(凄い笑顔)でコーヒーカップを持ちながら聞いてくる富村。よく分からないけど多分読者にも分かると思う。私の名前知らなくてテイク2って言うことね。はは~ん。


「はい」


さてさて、コーヒーの味を検証しますか。

 富村の手から手渡しでいただいたコーヒーって綾瀬先輩睨まないで怖いから。まずは一口・・・・・・これは・・!


「ホントにおいしい!!」


つい言ってしまったが本音である。富村はと言うと凄いうれしそうに胸を張っている。


「いやあ!俺のコーヒーを飲むとみんな黙って一気に飲み干しちゃってまずいのかな?なんて思ってたけど君がそう言ってくれたおかげで助かったよ!」


それは美味しすぎて声も出さずに飲みたくなってしまったからなんじゃないでしょうか。それにしても美味しい、もう飲み干してしまった。

 富村さんはこちらの顔をのぞき込んでくる。その瞳に目が吸い込まれる、心臓が高鳴る。30秒ぐらい耐えたが目をそらしてしまった。見たことのない目だった。心の奥底がまるで読まれてしまうような、透き通った目だった。


「うむ、春樹、この人だよな」


富村さんは私から目線を外して竹中さんに聞いている。多分昨日のうちにちょっとしたやりとりがあったのだろう。とりあえずこの人は状況を全て把握しているようだ。


「綾瀬~~~」


「何よ!!!!」


ズン!!と祐二に迫りながら叫ぶ綾瀬先輩。ツンが多すぎますよ。


「いや、お前も来るのかな~と思って」


へ?どっか行くの?


「来るってどこへ行くんですか?」


その質問には竹中さんが答えてくれた。


「君の家さ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ